第18話 白い時計
俺はウメタロウ・ウメハラと名乗る男に鎖を巻き付けられ、無理矢理チェインさせられていた。
チェインを始める宣言をすると左手に巻き付いていた鎖は外れた。
設備も無いのにどうやってチェインをするのか疑問に思っていたが宙にチェインのカードの形に線が光るパネルが現れる。
俺とサリアがいつもチェインをする時使っているパネルだ。
このパネルはポロンの中に入っているアプリである。しかし俺は何も触っていないのに勝手に起動した。
先攻後攻も勝手に電子パネルが判断し俺が先攻になる。
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このアプリは本来モンスターが実際に出てくる事は無いはずなのだが出て来てしまっている。
何でか分からないがま、いっか。
試合が動いたのはウメハラの4ターン目。
俺の盤面はコネクト3、フィールドに"灼熱纏うベスラ"。手札は六枚、墓地二枚、ライフは140。
ウメハラの盤面はコネクト3、フィールドに"アシラギの若葉"。手札は三枚、墓地1枚、ライフは190。
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「金属生命種のデッキだと?龍種のデッキはどうした?」
「もう、生徒会に渡した」
「何?貴様が自分のカードを渡したのか?聞いていた話と違うな…」
「だが龍種のデッキではなく金属生命種のデッキとは僥倖。この勝負貰った!」
ウメハラ4ターン目
「私のターン、ドロー」
「コネクトフェイズ」
「メインフェイズ」
「"コリアンのなる木"をコネクト4で"アシラギの若葉"にWチェイン!」
「大地に根付く木とは神の成り代わりである。あまねく大地に神の加護を!」
地面からビキビキと六つの根が生えて来ると根が螺旋を描きながら混ざり合い一つの木を成した。
「"コリアンのなる木"のスキル発動、不思議の果実」
「1ターンに一度手札の植生種のモンスターをこのカードの下に置く。このモンスターの結合力(c)は下のカードの枚数×10上がる」
"コリアンのなる木"の枝に赤い果実がなる。赤い果実には口がついており、その口を大きく開ける。すると枝が手札のカードをウメハラから奪い口に放り込む。
「更にソウルモンスター"幸運の果実コリアン"のスキル、ラッキータープを発動」
「コネクト4以上の植生種のモンスターをチェイン(召喚)した時、このターン、コネクト3以下のモンスターの結合力(c)を全て20上げる」
「バトルフェイズ、"コリアンのなる木"で灼熱纏うベスラ"を攻撃」
"コリアンのなる木"は枝を太く長く伸ばし先を尖らせる。触手のようになった枝を"灼熱纏うベスラ"の胸に突き刺す。
"コリアンのなる木"の結合力(c)はスキルで40から60まで上がっている。
"灼熱纏うベスラ"の結合力は40なので20の戦闘ダメージを受ける。
俺のライフは120
「ターンエンドだ」
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なるほど、植生種のデッキか初めて見た。
デッキタイプとして速攻に近い気がする。
しかし、時間が経過で結合力が上がっていくところが速攻とは違うところかな?
速攻の割に安定しそうだな思いながらターンを始める。
リアン5ターン目
「ドロー」
「コネクトフェイズ、イベントカードをセット」
「メインフェイズ」
「"灼熱纏うベスラ"をコネクト4でチェイン。そして"バイコード"をコネクト4でチェイン」
「"バイコード"のチェイン時スキル発動、リロード」
「山札の上から二枚を墓地に置き墓地の好きなカード一枚をデッキに戻してシャッフルする」
遂にこのカードのスキルを使う事が出来る。
「エンドフェイズ時、ソウルモンスター"
「お互いのエンドフェイズ時、墓地からカードをデッキに戻した枚数×10のスキルダメージを相手に与える」
選抜戦でサリアとチェインをした時気づいた。このスキルがこのデッキのコンセプトだ!今まで金属生命種のデッキが弱いと言われていた理由がこれだ。
キーカードが無かったからだ。
「このターンデッキに戻したカードは一枚。よって10のスキルダメージを与える」
白い時計が変形していき砲身を作ると青い弾丸を放った…白い時計⁉︎あれ?確か俺のポケットに入っていた筈だが…。
ゴソゴソとポケットを探るが入れた筈の時計が無くなっていた。
ウメハラのライフは180となった。
へ?と困惑しながら俺はターンを終了した。
「お、俺はこれでターンエンド」
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「ハハハハ!私の"コリアンのなる木"に手も足も出ないと見える!そんな困った顔をして。これは私の勝ちは確定したと言っていいだろう!」
ウメハラ5ターン目
「ドロー」
「コネクトフェイズ」
「メインフェイズ」
「"コリアンのなる木"のスキル発動、不思議の果実」
「1ターンに一度手札の植生種のモンスターをこのカードの下に置く。このモンスターの結合力(c)は下のカードの枚数×10上がる」
ウメハラのカードを奪い赤い果実がカードを頬張る。
"コリアンのなる木"は結合力(c)70になっていた。本来なら対処不可能な結合力(c)だ。
「バトルフェイズだ。"コリアンのなる木"で"バイコード"を攻撃」
ここ!
「ストーリーカード(イベント)発動、”
「相手のモンスターが攻撃した時、相手の最後にチェイン(召喚)されたモンスターを破壊する。」
「何!?」
突如として空から巨大な龍の顔が現れ、炎のブレスで"スフェイラ山の赤竜"を攻撃した。
"コリアンのなる木"は枝をジタバタとし暴れるが抵抗虚しく燃え尽きた。
これでウメハラの手札は0、フィールドにモンスターは無し。
「クッ、だがまだ私のライフは180ある!」
ウメハラはまだ余裕を崩さない。
「ターンエンド」
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リアン6ターン目
「ドロー」
「コネクトフェイズ」
「メインフェイズ」
「"タロント"をコネクト5でチェイン」
「"タロント"のチェイン時スキル発動、リロード。山札の上から二枚を墓地に置き好きなカード一枚をデッキに戻してシャッフルする」
「ストーリーカード(魔術)、"
「自分のソウルモンスターが金属生命種の時発動できる。自分の墓地のカードを好きな枚数デッキに戻す。その後デッキに戻した枚数ドロー出来る。」
墓地に落ちた"
つっよ!
「バトルフェイズ、"タロント"、"バイコード"、"灼熱纏うベスラ"でソウルアタック」
合計で130の戦闘ダメージ。ウメハラのライフは50となった。
「クククッ…アハハハハ!耐えた!耐えたぞ!これで次のターンが…」
ウメハラは高笑いをしながら自分のフィールドと手札を見て絶望する。
既にウメハラの手札は0でフィールドにモンスターが居ない。
「いや、終わりだ」
顔を俯かせる。
「エンドフェイズ時、ソウルモンスター"
「お互いエンドフェイズ時、カードをデッキに戻した枚数×10のスキルダメージを相手に与える」
このターンデッキに戻したカードの枚数は10枚。よって10×10でスキルダメージは100まで到達する。
白い時計が変形し砲身を作ると青い弾丸を放つ。
"幸運の果実コリアン"は体を弾丸に貫かれ粉々になった。
パネルにwinner リアン・ミーサークと文字が浮かび上がる。
俺は顔を俯かせたままだ。
笑いが込み上げて来る。口が吊り上がり、目が見開かれていく感覚。
思い描いた通りデッキが回る感覚。相手を読んでカウンターを当てた瞬間。勝ちを確信する安心感。勝利の高揚感と万能感。
「気持ち良いぃぃ!!」
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