第17話 オルベル祭
「ふぁーよく寝た」
欠伸をしながらベッドから起き上がる。
今日は授業が休みだ。何故なら今日からオルベル祭だ!
オルベル祭は二日間行われる。
昨日サリアから一緒に周ろうと連絡が来た。
連絡は腕輪型通信機、名前はポロンでしている。前世でいうスマホみたいなもんだ。しかし、ポロンは電源を着けると電子パネルが浮かび上がりタッチで操作出来る優れ物だ。因みにポロンの名前の由来はポロンポロンって鳴るからだ。みんなマナーモードにしてるから鳴らないけど。
一緒に周るのはサリアの試合があるから遠慮しようと思っていたが午後からだから午前は自由らしいので一緒に周る事にした。
前世の文化祭みたいなもんだから出店が沢山出て食べたり遊べるらしい。
ただ前世とは違い文明が進んでいるので規模が段違いだ。
去年は実際にロケット飛ばせたりロボット作ったりしたらしい。
更にオルベル祭中は違う国のエリアに入って出店を楽しめる。他国の文化を楽しめて人気だ。そして外部の人間も参加する事が出来る。ただその分問題事も多いらしい。
しかし、俺が一番楽しみなのはやはりオルベル祭の目玉、代表戦だ。
俺はカードゲームをするのも好きだが見るのも好きだ。他の人のデッキを見ると使ってみたくなってくるからだ。
各国の代表者達が鎬を削り頂点を争う。裏の事情で出て来なかったりわざと負ける選手もいるが最初の方だけだ。二回戦くらいから全員本気で戦う。
朝の支度を終え、デッキケースをベルトにセットしようとすると…なぁーにこれー。
デッキケースの上に白い時計が置いてあった。明らかに昨日には無かった物だ。それに俺の物でも無い。
白い時計は未来的なデザインのデジタル時計だ。所々に電子的な水色の光のラインが入っている。裏側を見てみると歯車が回っていた。
綺麗な時計だなー。
しかし、この時計不思議な事に持ち手が無く時計部分だけしか無かった。
間違えて人の時計持って帰って来ちゃったか?と思いとりあえず学園の先生に渡そうとポケットに入れた。
まだ時間あるからシュガーコーヒーでも飲もう。
シュガーコーヒーとはこの世界のゲロ甘コーヒーの商品名である。砂糖の量は前世のコーラと同じである。
ズズズッ…
ふとポケットに入れた時計を見ると時間は8時56分を示していた。集合場所までおよそ10分。集合時間は9時丁度なので遅刻確定である。
「やっべ」
急いでシュガーコーヒーを一気飲みする。
「甘過ぎる‼︎」
悪態を吐きながら急いで部屋を出る。
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集合場所の学園の近くのコンビニの前まで走って行くとサリアが電子パネルを弄りながら待っていた。
「ごめ…………ぜーはぁはぁ…ん、お…くれ、はぁはぁ…た」
前屈みになりながら謝罪する。
我ながら体力が無さすぎる。前世でもこの世界でもカードゲームしかして来なかったし仕方無い。
「遅いわよ」
おおぅ、怖!とても怒っていらっしゃる。
息を整え顔を上げるとサリアの周りには男が数人居た。
「知り合い?」
「知らないわ」
どうやらナンパらしい。よくこの状態で俺に返答してたな。
サリアは男に話しかけられているのを無視して俺と会話していた。
どうしよう。…まぁいっかこのままで。
俺達は男数人を連れながら歩く事にした。道中も常に話し掛けている男達は顔が引き攣っている。
「昨日リアンが帰った後大変だったのよ」
『ガヤガヤ』
「なんで?」
『ゴチャゴチャ』
「カンザキが飛行機であんたを探しに来たのよ」
『ガヤガヤ』
「あ!知ってるその国」
『…』
「意外ね」
『ギャーギャー』
なんてったって前世の日本にそっくりな国だったからな。違うところと言えば日本は極東だったけどこの世界では極西な事だ。世界の中心が違えば色々変わるなー。
「で、なんで俺の事探してたの?」
「あんたから"龍鎖 チェインカルナ"を奪おうとしてたみたいよ」
「またカルナ?よく狙われるなー。でも今はサリアが持ってるじゃん」
「だからリアンが持ってるっていう程で話を進めたわ」
「おー騙すなんて頭良い」
「でも、今でも貴方が持ってるって思い込んでるからオルベル祭で襲われるかもしれないわ。あの後逃げられたし他の国もカルナはリアンが所持しているって思ってるみたいだし」
「まじ?」
「ええ。だから姉さんは私達に被害が及ばないようにカルナを早急に保護したかったみたいよ」
え?生徒会長ってもしかして良い人?
「ていうか姉さん?」
「私の従姉妹なのよ」
まさか親族だったとは。
しかしそんな厄介事をサリアに押し付けてしまっていたのか。
「なら今、カルナは生徒会長が持ってるのか」
「ええ」
「「…」」
「そういえば、カンザキはなんで俺がカルナを持ってたって分かったの?」
「裏切り者が居たからよ」
「裏切り者⁉︎」
「シズネよ」
「フロードさん⁉︎」
まじかよ、全然分からなかった。あ、でもやけにカルナの事聞いて来るなと思ったけどそれが理由か!
最近少し仲良くなって来たところだったから色々ショックだったが
「まぁいっか」
裏切られたものは仕方ない。復讐は何も生まないからな。
「あれを食べに行くわよ」
サリアは出店を指差すと俺の服の裾を引っ張る。
「OK」
いつの間にかナンパ男達は消えていた。
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俺達はオルベル祭の出店や催し物を満喫した。
サリアは試合の時間がそろそろなので準備に行った。
俺もそろそろ観戦席を取りに行こうかなと思い歩き出す。
代表戦は島の中心にある巨大なスタジアムで行われる。外から来る人間は事前にチケットの購入が必要だがこの学園の生徒は生徒証を見せるだけで入れる。
少し早い時間に着くが席で待ってれば良いかと思い地下高速鉄道に乗り込む。鉄道と名乗っているが実際は前世のタクシーに近い。オルベル学園の地下にはレールが敷いてあり個人で行きたい駅を設定出来る。
駅に着くと急に人が増えた。皆んな代表戦を楽しみにしているのだろう。
スタジアムに向かって歩き出すと腕に鎖が絡み付いた。
なんだこれと鎖の繋がっている先を見るとフードで顔を隠した人が左手に装着した機械から鎖が飛び出していた。
「来てもらうぞ」
男の声だ。
左手鎖男が腕を引くと俺も一緒に引っ張られる。そのまま左手鎖男達に人気のない工事現場まで連れて行かれる。
「お前がリアン・ミーサークだな?」
「違います、私はアジル・ラオギーです!」
アジル君には悪いが別人だと名乗る。
「…」
左手鎖男が宙にパネルを出現させ画像を確認する。
「貴様舐めているのか?」
「…」
嘘がバレたので一切喋らない事にした。
喋らない俺に剛を煮やしたのか男は苛立たし気に言う。
「もういい、お前の"龍鎖 チェインカルナ"を賭けてチェインをしてもらうぞ」
サリアに襲われるかもしれないから気をつけろと言われたがまさか本当に襲われるとは。
どうしようか考えていると
「ちなみに拒否権は無いぞ。この鎖はチェインが始まるまで外れない」
ウェーイ詰んだ。
逃げる事すら出来ない状況になってしまった。
そして色々考えた結果…まぁいっか
どうせもうカルナ持ってないし、新しいデッキ試したかったし。
「ウメタロウ・ウメハラ」
「リアン・ミーサーク」
「「チェイン バトル‼︎」」
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