第16話 リアン君は寝ています

自分の部屋にダッシュし、速攻でカードを取り出す。


まず、さっき貰ったデッキを専用のカード識別機に突っ込んで行く。


これでカードを一枚一枚データとして登録し、デジタルの世界に送ることができる。これでチェインのネット対戦も行える。


パネルを操作しTCGゲームのデッキビルド欄みたいな項目に行く。さっき登録したカードが全て入っているか確認。


ここからはデッキ作りだ金属生命種のカードを粗方ぶち込み、汎用カードをぶち込んで行く。


汎用カードというのはチェインでは"鎖編み"の様なカードだ。どのデッキでも活躍できるカードでこれを持っているかいないかで勝率が全然変わって来る。


分かりやすく言うとデド○ムを持ってない奴よりデド○ムを持ってる奴の方が強いし、灰○ウララを持ってない奴より灰○ウララを持ってる奴の方が強いって話だ。


俺はチェインで汎用カードだと思われるカードを入れて行く。

思われるというのは情報が出回らないから確証を持てないだけだ。


"鎖編み"、"疾風ゼイリード"、そして"龍の招集"を入れる。


なんだよこのカード強過ぎだろ2ターン目コネクト消費1で3ドローは頭おかしいだろ。


サリアとの戦いであいつが使っているのを見たがやはり強過ぎると思っていた。


前世だったら速攻で規制されてた。製作者、絶対頭悪い。


だが、残念ながらこの世界に運営というものは存在しない。なので規制も無いしチェイン自体のルール変更もない。情報も統制されてるから大会とか公の場で勝ったデッキが流行りそのデッキタイプだけになっていく。


うーん読みやすい世界!


そんな事を考えながらデッキを作る。これは要らない、これは要る、要らない、要らない、要らない…。


いやさっき使ってたデッキ要らないカード多過ぎだろ!つくづく俺に勝たせない為のデッキだな。念入り過ぎ。


それにサリアが使ってるカード初めて見たな…。


そんなにカルナが欲しかったのか。しかし残念だが今はサリアが持っている。そしてとりあえずサリアが生徒会に狙われるかもと事情を説明した上で彼女の実家に連絡しといた。


サリアの実家はこの国では知らない者が居ないほど有名な家だ。そんな家に圧力かけられたら生徒会もひとたまりないだろう。そしてもう一つ理由が有りこれは俺の私怨だ。変なルール押し付けやがって。俺のカード狙いやがって。


いつか絶対ボコボコにしてやる!俺は執念深いんだ!


そんな決心をしているとデッキがあと一枚足りない。


ここにさっきの試合で見つけた"機械仕掛けの歯車時計クロノマギア・エクスマキナ"を入れる。


すると出来上がったデッキが機械から出て来る。


試しに使おうと思いネット対戦に籠ろうと思い立とうとするがふらついてしまう。


「今日は流石に疲れたな…今日はもう寝るか」


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リアンが帰ってしまった後、サリアは正式に代表戦選抜者として認められた。


日が傾き始めた頃、突然、キュイィィィィン! バタバタバタと機械的なプロペラの音が聞こえて来た。巨大な羽にプロペラが直接取り付けられた戦闘機の様なフォルムの飛行機が降りて来た。


皆んな何事かと飛行機を見ている。すると人が降りて来る。


私は勘違いをしていた。最初、この飛行機はグランミディアの高等部の物だと思っていた。生徒会の思惑が外れ龍鎖は私の手に在る。


しかし、生徒会長の方を見ると困惑した表情をしている。


危険を感じたサリアは直様身構える。


「初めましてグランミディアの生徒諸君。私はカンザキの生徒会書記、ウメタロウ・ウメハラだ。以後お見知り置きを」


カンザキの生徒会を名乗るウメハラは眼鏡をクイッと上げると一礼した。


礼をするくせに人を見下す様な目線に黒髪眼鏡というザ生徒会という出立ちにサリアは


あの目気に入らないわね、人を見下したあの目線。


といった評価を下していた。


カンザキとは正式名称を神咲と書く。西の群島の更に西、極西に存在する島国だ。自分達は神に選ばれた人間だと信じる選民意識の強い国だ。


神が咲く国なんて…ずいぶん傲慢な名前ね。


サリアは地理の授業を真面目に受けているから知っている。リアンであれば「何処そこ?」と言っているであろう。


「なんの用だウメハラ?」


警戒しながら前に出て問い詰める生徒会長。


「ふむ、そうだな。其方の所有している"龍鎖 チェインカルナ"。それをこれから奪わせて貰う」


「何故そのカードを知っている?」


「言うわけないだろう?」


ウメハラは飛行機から降りて来る生徒達に目配せする。


「リアン・ミーサークを探せ!そいつが"龍鎖 チェインカルナを所持している!」


一斉にカンザキの生徒達が動き出す。


顔も割れているようで一人一人の顔を覗き込んで行く。


観戦していた生徒は何が起こっているのか分かっておらず動けないでいた。顔を覗き込んで来るカンザキの高等部の生徒達に怯えている。


「どうやってリアン・ミーサークからカードを奪うつもりだと?相手の同意がなければチェインも出来ないし、賭けもおこなえないぞ?」


ヘレンはリアンがまだ"龍鎖 チェインカルナ"を持っているかのように振る舞う。


しかしウメハラは余裕綽々といった様子で左手を見せる。


左手には何か機械が装着されていた。


「これはチェイナーという装置だ。鎖を発射し相手に巻きつけ無理矢理チェインによる賭けを行わせる。鎖はチェインの勝敗が着くまで外れない。」


「な!それは軍で使われている…」


「そうだ。それ程我が国は本気という訳だ!」


「グランミディアの生徒諸君!逃げたまえ!此処が戦場になるかもしれない!」


ヘレンが避難するように言うと生徒達は一斉にその場から離れようと動く。


観戦していた生徒達は雪崩のように走って逃げ出し始めた。


それでもカンザキの生徒は時には捕まえ、足をかけ逃げている生徒達の顔を確認していく。


大勢の人が逃げ出している最中、今度は複数のプロペラ音が聞こえて来る。機体にグランミディアの国旗があしらわれた機体。


移動の多い生徒会に一機所有を許されている飛行機の音が複数聞こえて来るなど有り得ない事だった。


それと…オーザンの国旗⁉︎


なんとグランミディアとオーザンの応援が到着しようとしていた。


焦ったウメハラは声を張り上げる。


「リアン・ミーサークはまだ見つからないのか‼︎」


カンザキの生徒が報告をしに行く。


「リアン・ミーサーク確認できません!」


「なんだと!」


ウメハラは怒鳴り報告した生徒の胸倉を掴む。


「何としてでも探し出せ!」


私はウメハラに近づく。


「リアンはもう居ないですよ?」


サリアも"龍鎖 チェインカルナ"をまだリアンが持っているかのように振る舞う。


「何?」


「もう帰りました。貴方達は一歩遅かったのです」


更に一歩近づく。


「そして、何故貴方が"龍鎖 チェインカルナ"を知っているのか分かりました」


まるでチェインをしている時のように追い詰めていく。


「裏切り者がいるのでしょう?」


瞳孔が開く。


「裏切り者の名前は…




シズネ・フロード」


名前を言われたウメハラは狼狽える。


「し、証拠はあ、あるのか!?」


「リアンは普段"龍鎖 チェインカルナ"を使わないわ、一枚しか無いから使いずらいって、でも使っているのを知っている人もいるわ。オーザンの刈り上げ坊主と私、そして刈り上げ坊主との対戦を観ていたシズネ。刈り上げ坊主がいるオーザンはグランミディアと同盟国よ。裏切る可能性は低い」


サリアは真顔でウメハラとの距離を詰める。服を掴み格闘術で押し倒し、顔を近づける。


ウメハラは中学生とはいえ美少女に顔を近づけられ顔を赤くする。


「あいつはどうでも良いって言うかもしれないけど…リアンを裏切った事、私が絶対許さないわ」


静かに、しかし怒気を発しながらはっきりと。


「シズネ・フロードは私が殺すわ。伝えておきなさい伊達眼鏡」


そう言ってサリアは去って行った。

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