第15話 機械仕掛けの出会い
チェインを始める前にお互いに配られたデッキの確認をする。
俺のデッキはまぁ予想通り巷で噂の弱小デッキだった。
生徒会長が観客達に俺達のデッキがどういうデッキか発表したところ大爆笑が起きた。
「アハハハ!あいつのデッキ金属生命種だってよ!」
「噂の雑魚デッキでしょ?相手になるのかしら?」
「あの墓地増やしたりデッキに戻したりグルグル回してるだけのデッキか!」
「これはサリアさんの勝ちかな」
酷い言われ様だな。だがこのデッキの評価は彼等の言った通りだ。
まぁ全部バニラなデッキとかごちゃ混ぜデッキよりはマシか。
種族も統一されているし。まぁ種族デッキで弱小と言われている事には変わらんが…。
ふと途中で気付く。あれ?カード一枚多くね?
チェインのデッキは45枚固定なのだがこのデッキには46枚カードが入っている。
「すいません。カードが一枚多いんですけど?」
生徒会長に確認を取る。
「?そんな事は無い筈だが…一枚多く入れてしまったのか?」
生徒会長はミスに驚きながらも「なら一枚抜いといてくれ」とてきとうに言う。
相変わらず一枚程度で勝負に関わらないと思っているのか対応がてきとうだ、と思いながら絶対使わないだろっていうカードを抜く。
そしてサリアも俺も準備万端と言ったところで声を上げる。
「「チェイン バトル‼︎」」
先攻後攻を機械が判定し俺が先攻。
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お互いに2ターン目まで動かず、戦況が動いたのはサリアの5ターン目。
俺の盤面はコネクト5、フィールドには"ガンホーク"と"ジム"。手札は二枚、ライフは190。
サリアの盤面は"龍の招集"を使った事によりコネクト3、フィールドにモンスターはおらず手札は7枚、ライフは80。
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サリア5ターン目
「私のターン、ドロー」
「コネクトフェイズ」
「メインフェイズ」
「"疾風ゼイリード"をコネクト4でチェイン」
「"疾風ゼイリード"のチェイン時スキル発動、疾風加速」
「疾風加速によりデッキの1番上のカードを1枚ドローよ」
「ストーリーカード(魔術)"鎖編み"を発動。"鎖編み"の効果でコネクトを消費する代わりに手札を一枚捨て、山札の一番上のカードをコネクトゾーンへ」
「そして、"IGベーレ"をコネクト4で、"IGゼフュート"をコネクト5でチェイン」
「"IGゼフュート"のチェイン時スキル発動、IGZ。自分から見て相手の一番右のモンスターの結合力(c)が50以下なら破壊するわ」
"ジム"は巨大な鉄球の体をしている。しかしところどころボロボロで凹んでいる。その体に"IGゼフュート"の雷撃を喰らい破裂する。
「バトルフェイズ、"IGゼフュート"で"ガンホーク"を攻撃よ」
「そして、コネクト4以上の龍種のモンスターが攻撃した時ソウルモンスター"繋がれた龍像"のスキル龍気を発動。そのモンスターの結合力(c)を10上げるわ」
"IGゼフュート"は宇宙的な白い体に電気を纏わせる。そして電気がバチバチと鳴り最大まで溜まったその電気を"ガンホーク"に向けて撃ち出した。
"ガンホーク"は錆びついた鉄の鷹だ。歯車がガタガとが回り動いているカラクリの様な生物はその電撃を受けると地に落ちていく。
"IGゼフュート"の結合力(c)は60になっていて"ガンホーク"の結合力(c)は50なので戦闘ダメージ10を受ける。
「次に"IGベーレ"と"疾風ゼイリード"でソウルアタック」
"IGベーレ"の白く長い尾が俺のソウルモンスターに叩きつけられ"疾風ゼイリード"は風を纏いソウルモンスターにダイブした。
"IGベーレ"と"疾風ゼイリード"の結合力は共に50になっている。よって戦闘ダメージ100
俺のライフは90になった。
「ターンエンドよ」
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リアン6ターン目
「ドロー」
あれ?
俺はカードを引き困惑した。
なんだこのカード?俺が確認した時入ってたか?
デッキを確認した時見てないカードを引いてしまった。
確認不足なんてことあるか?と疑問に思いながらとりあえず確認のためカードの詳細を見る。
コネクトは0、名前は"
!そういう事か!やっと分かった…このデッキのコンセプトが!
いや待てよ、この試合でこいつを出すのは得策なのか?この試合を俺は負ける事前提で始めた。だからカルナをサリアに渡した。
考えた結果このカードをこの場でチェイン(召喚)する事はやめる事にした。しかるべき時。勝ちに行く時に出そう。
俺は"
について考えながらチェインを続けた。
「コネクトはしない」
「メインフェイズ」
「"ジェットスピア"をコネクト3でチェイン、"タロント"をコネクト5でチェイン」
「"タロント"のチェイン時スキル発動、リロード。山札の上から二枚を墓地に置き好きなカード一枚をデッキに戻してシャッフルする」
「そして、コネクト4以上の金属生命種がチェインした事によりソウルモンスター"レターズ"のスキル発動伝達、墓地の好きなカードを二枚デッキに戻しデッキから二枚ドロー」
「バトルフェイズ、"タロント"で"IGゼフュート"を攻撃」
"タロント"は錆びついたマシンガンタロットの体をギギギィと回し"IGゼフュート"に狙いを定め乱射する。しかし、リロードの隙をつき"IGゼフュート"は弾丸を躱わし銃身に噛み付く。そのまま噛み砕こうとするが再び装填された弾丸に射抜かれ、"タロント"は噛み砕かれそれぞれ絶命した。
「ターンエンド」
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サリア6ターン目
「ドロー」
「コネクトフェイズ」
「メインフェイズ」
「"IGアブソロード"をコネクト6で"IGベーレ"に
ゴツゴツとした四つの腕と翼を広げ宇宙的な一つ目を輝かせた不思議な龍が輝きを放ちながら突如出現した。
「"IGアブソロード"のチェイン時スキル発動、IGA。自分から見て相手の左の一番目と二番目のモンスターを破壊する。」
"IGアブソロード"はその特徴的な一つ目にエネルギーを蓄え、光線を2発放つ。
光線は二発とも"ジェットスピア"に着弾し粉々に砕ける。
「バトルフェイズ、"IGアブソロード"でソウルアタック!」
"繋がれた龍像"のスキル、龍気が発動し結合力(c)が70。
俺のライフは20となった。
「これで終わりよ。"疾風ゼイリード"でソウルアタック」
"疾風ゼイリード"は風を纏った爪で鳩の形を模したカラクリ…
"レターズ"の腹を貫通させた。
winnerサリア・コンティノール
クソッ負けた。この世界に来て負ける事なんか殆ど無かったから久しく忘れていたがやはり負ける事は悔しいな。
だがしかし、ここは素直に彼女を褒めるべきだろう。
パチパチと俺が拍手を鳴らすと続く様に観客達がサリアに拍手を贈る。
「おめでとう。これでサリアが代表者だ」
「ふんっお膳立てされた勝利なんて嬉しく無いわよ。ましてや最初は本気で倒しに来てたのに途中から別の方に集中が持って行かれたみたいだし?」
サリアはそう言いながら睨んできた。俺の事をよく見ているなと思った。なんで俺が途中で
「分かるわよ」
「心を読むな」
どうやら彼女はいつの間にかエスパーになったらしい。エスパーというかどちらかというと魔女だろ…と思いかけたところで思考を中断した。サリアが睨みつけてくる。美人の睨みというのは恐ろしいものだ、普通に怖いっす。
だが俺はさっさとこの場から離れたかった。試合中に見つけたあのカードでデッキを早く組みたい。そして使いたいという欲求が段々と募っていく。
なので持ってばっくれようとした。
「すまん、俺用事できたから帰るね!」
両手を合わせ頭を下げながらさっさと帰る事にした。
「待て。敗者はデッキを没収するというルールの筈だが?」
生徒会長の側近の女が俺に詰め寄って来る。
あ、忘れてたと顔に出しながら
「いや〜すいませんね、忘れてました。はいこれ」
デッキを彼女の手に渡す。すると「貴様にはその雑魚デッキがお似合いだ!」と言われた。
「くれるんですか?」
「ああ、唯の在庫処分だからな」
ラッキー!と思いながら続く彼女の話を無視して「じゃあ、帰ります」と笑顔で言う。
今は他の事なんてどうでも良かった。そして全力で走った。
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