第13話 友達の作り方

「どうかした?」


サリアが少し呆けていたので質問する。


彼女は首を振ると


「昔の事を思い出してただけよ」


昔の事か、そういえば彼女と出会った時は色々大変だったな。


まぁでも全部どうでも良かったからスルーしたけど。彼女にも興味無かったし。


それにしても、思い出すな。初めてサリアに負けた時のこと。


彼女は今もあの時の目をしていた。


==================================


俺は何度も家に来ては勝負を挑んでくる少女に利用価値を見出していた。


カードゲームをする時、最も大変な事…それは対戦相手探しである。


前世の世界でも対面でカードをする時一番苦労したのが対戦相手探しだ。


そして俺はこちらの世界でも対面で対戦してくれる相手を探していた。


そんな時に現れたのがこいつだ。最初は手下を連れて俺に喧嘩を仕掛けてきたがフルボッコにした。そして嫌がらせをしていたらしいが大した事なかった。


俺はカードゲームの事以外、割とどうでもいい。靴が無くなろうが裸の写真を撮られようがチェインをするのに支障は無い。


最悪、腕の一本位許容範囲内だ。


しかし、彼女はそんな些細な事で俺に罪悪感を抱いたらしく家に謝罪に来た。


その後、俺に負けたのがそんなに悔しかったのか何日もチェインを挑んでくる様になった。


これを利用し、俺の都合のいい対戦相手に仕立て上げてしまおうと考えた。自分の道徳心と葛藤しようとしたが天使も悪魔も現れなかった。


俺のデッキを渡して都合の良い知識だけ教えて俺の為の都合の良い対戦相手を作り上げる事が出来た。


しかし、ある時想定外の出来事が起きた。


彼女も人間だ。人間は成長する生き物。


それを体現する様に彼女は俺に勝った。


最初は信じられなかった。しかし、現に俺は負けている。別に手を抜いていた訳では無い。気を抜いていたと言えばそうかもしれないが、それでも負けるとは思わなかった。


彼女はやり切った顔で自慢気に笑みを浮かべていた。


何が彼女を変えたのか分からないが、俺は彼女に対する認識を改めた。彼女は都合の良い対戦相手マシーンでは無く列記とした強者であり…カードゲーマーだ。


俺はこの世界に来て初めて人に興味を持った。


「君、名前は?」


「サリア・コンティノールよ。あんたは?」


「リアン・ミーサーク」


俺に友達が出来た瞬間である。


==================================


さて…始めようか、この世界で初めて認めた、唯一のよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る