第10話 選抜戦

オルベル祭の季節がやってきた。


オルベル祭とは学園全体で行われる祭りであり前世の文化祭の様なものである。


そしてオルベル祭といえばチェインの個人戦である。


個人戦は学年別に行われ、学園に加入している国から代表者を出して戦うものである。


その代表者を決める為の戦いが今日だ。


学園の専用の外に併設されているフィールドに生徒達が集まっている。


選抜戦と呼ばれる戦いを前にクラスのみんなや他クラスの人まで緊張している。中には余裕の表情を浮かべる生徒や無駄にテンションが上がっている奴もいる。


そして、遂に俺の番が回って来た。


対戦相手と握手をし


「俺の敵弱そー、楽勝ー!」と言われた


なので無言で笑顔を返し、お互いに叫んだ


「「チェイン」」


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結果は全勝だった。


弱い…思ったより全然弱い。


まずデッキがみんな同じ様な物ばっかの為メタを張るのが容易だ。


そしてデッキ構築が下手だ。コンセプトが無い。


まぁ、デッキを作る授業は高校からだから仕方ない。13歳のデッキなんてこんなもんだろ。


デッキを作るのに当たって大切なのはコンセプトを決める事だ。どんな風にスキルを使ってどんな風に勝ちたいのか。それが全く見えなかった。


しかし、それも仕方の無い事だ。


みんなデッキ構築が下手な理由はある。


それは情報が無いからだ。


オルベル祭とかなんとか言っているが実際はただの国力の示し合いだ。だから強さを示す国あればわざと負けて情報を出さない国もある。戦時中の国なんて特にそうだ。


なので実際はほぼ出来レースになっている。代表者なんて殆ど決まっている様なもんだ。


だから俺達のような唯の学生には情報が回って来ない。


相手のカードが分からないから対策のしようが無い。


情報を統制しているせいで環境を知ることもできない。


だから勝てないという糞みたいなシステムになっている。


しかし、俺は頻繁にカードショップに行き情報集めをしつつ前世の知識をフルで利用し環境を考察した。


俺はアジルのようなデッキが多いと予想を付け結果、的中した。


アジルのデッキはコネクトの大きいモンスターを多く入れたデッキだ。


そのメタとなるのが速攻である。


以前アジルと戦った時と同じ様に相手が動き出す前に倒し切る。それを繰り返した。


次は遂に選抜戦最後の試合である。


相手は…


「今日こそ倒すわ。覚悟しなさい」


振り向くと彼女はいた。


俺と同じく速攻を使っていたサリア•コンティノールだ。


彼女とはこの選抜戦の為にデッキを調整した。なので、お互いのデッキが分かっているし大体同じ構成なのでミラー対面になるだろう。


使用デッキを変えていなければ…。


そういえば彼女は授業の後、生徒会の人達に呼ばれ話し合いをしたらしい。その事を考えるとウチの国は十中八九彼女を代表者にしたいのだろう。


大人達の事情なんでどうでもいいけど。今は勝つ確率を上げる為に探っておくか。


「生徒会の人達に渡されたデッキってどうしたの?」


「売ったわ」


「へ?」


こいつマジか…。仮にも生徒会が用意した他のデッキより強いであろうデッキを売るなんて正気じゃ無いな。


「構築が歪むのよ。わざわざ変なカードを入れて歪むくらいなら最初から入れないわ。それに貴方と調整したデッキの方が明らかに勝率が良かったのよ」


俺がヤベー奴を見る目で見ていると


「ちゃんと使えそうなやつは抜いたわよ」とサリアに言われた。


それならいいか。


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コンコン


生徒会室の扉にノックの音が鳴る


「どうぞ」


「失礼します生徒会長。鎖のカードが見つかりました」


「ああ、私も見たよ」


「如何致しますか?」


生徒会長と呼ばれた少女は「そうだなー」と悩んだ表情を浮かべると何か思いついた様に呟く。


「今回は荒れるぞー!」


生徒会長は意地の悪い笑みを浮かべていた。

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