第6話 龍鎖 チェインカルナ
「大丈夫ですかね?リアンさん…」
焦った様子でシズネがサリアに聞く。
「大丈夫よ」
「でも、ドローカードばかり使って攻撃しないから相手のライフは120で、リアンさんはライフが残り10しかないですよ」
「あれはデッキからキーカードを探してるだけよ」
「サリアさんは落ち着いているのですね…」
「当たり前じゃない。あいつに何回負けたと思ってるのよ。それに、あれだけ手札があれば流石に引いたわよ」
サリアは呆れた声で言った。
「キーカードをですか?」
サリアは視線をフィールドに戻し、無言で頷く。
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俺の手札は8枚。グレイの手札は3枚。
ストーリーカード(イベント)があるからこれ以上コネクトが出来ない。だからモンスターも出て来ないのも分かってた。
キーカードは揃ったしストーリーカード(イベント)の対処も出来る。
準備は整った。
「今、ここで潰してやる」
リアン9ターン目
「俺のターン、ドロー」
「コネクトフェイズ」
「メインフェイズ」
「"繋がれた龍像"をコネクト0で2体チェイン」
「さらに、"コーネドラゴン"を、コネクト2で"スフェイラ山の赤竜"2体と"疾風ゼイリード"をコネクト4でチェイン」
"疾風ゼイリード"のチェイン時効果でカードを1枚ドローする。
「コネクト6で"疾風ゼイリード"に
「鎖の称号持つ龍の王よ、カルナの名の元に神を喰らえ!!」
「―――"龍鎖 チェインカルナ"‼︎」
狼のようなスリムなフォルムに、鱗が朱色に輝く。背から生えた5対10本の鎖を垂らし、黄金の瞳が敵を射抜く。鎖をさながらマントの様に翻し咆哮する。
「"龍鎖 チェインカルナ"のWチェイン時スキル発動、龍鎖。相手モンスター1体の結合力を0にし、そのモンスターは攻撃できず、スキルを発動できない」
「"悪鬼シゴ"を選択」
"龍鎖 チェインカルナ"の背中から生えている鎖が"悪鬼シゴ"に絡みつき、縛り上げる。
すると"悪鬼シゴ"は力が抜けたように体がへたれる。
「ストーリーカード、"賢者と神官と勇者への供物"をコネクト消費6で発動」
「相手のモンスター1体とコネクトゾーンの左のカード1枚を破壊し、手札を1枚捨てさせる。」
「"悪牛鬼 餓鬼喰い"とストーリーカード(イベント)を破壊」
勇者、神官、賢者の影がフィールドに出てくると、勇者は"悪牛鬼 餓鬼喰い"を聖剣で殺し、神官は祈る事でストーリーカード(イベント)を浄化し、賢者は魔法を使いアジルに手札を1枚捨てさせた。
「アタックフェイズ、"スフェイラ山の赤竜"で"悪鬼シゴ"を攻撃」
「アタック時スキル赤熱化。結合力(c)を10上げる」
「さらに、"繋がれた龍像"のスキル龍気。攻撃時、コネクト4以上の龍種の結合力(c)を10上げる。×3!」
"スフェイラ山の赤竜"は体が赤く滾り、湯気を出しながら炎のブレスを"悪鬼シゴ"に向けて放った。
"悪鬼シゴ"の結合力(c)は"龍鎖 チェインカルナ"のスキルで0になっている為、戦闘ダメージを80与える。
グランのライフは残り40。
「"龍鎖 チェインカルナ"でソウルアタック!」
"龍鎖 チェインカルナ"の結合力(c)は60だか"繋がれた龍像"3体のスキルで結合力(c)90
「行け!カルナ!俺のカードを取り返して来い!」
"龍鎖 チェインカルナ"は"鬼鴉"に鎖を巻きつけ逃げようとする"鬼鴉"をブレスで殺した。
モニターにwinnerリアン・ミーサークと名前が出る。
危ない、負けそうだった。
「チッ、最後に捲られたか」
そう言うとグレイは俺から奪った"鎖編み"を渡してきた。
俺が受け取ると
「何でお前が龍鎖を持ってるんだ?」
と聞いてきた。
「…」
「お前面白れーな」
俺は話を聞かずに速攻でカードに傷がないか確認すると鞄の中に閉まった。
まぁカードは未来の科学技術で傷1つ付かない様になっているんだが。
「また会ったらリベンジさせろ」
そう言うとグレイは去って行った。
何だったんだ、あいつ…
サリアとシズネが観客席から降りて来た。
「何、負けそうになってるのよ」
と頭を叩かれた。
「カルナでボコしたかったんだもん」
このデッキのコンセプトはコネクトを6枚繋げてソウルモンスターの"繋がれた龍像"と手札からコネクト0で2体"繋がれた龍像"を出し、コネクトが4以上のカードで一気に殴るデッキだ。
だがこのデッキは遅いので、サリアの速攻龍のような速いデッキに弱い。
さらに、"龍鎖 チェインカルナ"がデッキに1枚しか入っていない為、本来は別のモンスターで殴り勝つデッキなのだが今回は実物が出てくるのでカルナを出したかった。
カルナを出す為にドローカードでめちゃくちゃデッキを掘ったので決着に時間が掛かった。
でも、カルナ出せたし詠唱できたしよかったよかった。前世のアニメでやってるのを観ていつかやってみたいと思っていたが前世では恥ずかしくて出来なかったんだよねー。
しかしこっちの世界の人はみんなやってる。
詠唱とは様式美らしい。
カードゲーマーたる者詠唱しなければならない。郷に入っては郷に従うべきなのだ。
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手に持っていたカードを理由に引き止めグレイはリアン・ミーサークと言う男とチェインをする事になった。
カードを奪った男をつくづくクズだなと思ったが丁度良かったので提案に乗った。
一目見た瞬間分かった。
コイツはヤバイ。
グレイは強者特有のゾワッとする感覚を本能的に感じた。
だからこそ期待した。
目の前で這いつくばっている男とは違い俺が探し求めている人間だと。
今度こそと思い持っているカードを言い訳に引き止めた。
しかし、リアンは試合の途中で諦めてしまった。
(こいつも結局口先だけかよ)
(ライフの差は110。1ターンで返せるライフ差じゃねーし1ターンあれば止めを刺せる)
(俺の勝ちだ)
グレイは勝利を確信し、冷めた声でターンを終了した。
しかし、そんな確信は一瞬で吹き飛んだ。
1ターンで全て返され負けた。
何より驚いたのは諦めていなかった事だ。
普通、ライフ差が110もあったらサレンダーしてもおかしくない。
だがあいつは笑っていた。
目を見開きながら歯を剥き出しにし怒りを露わにしながら笑っていたのだ。
笑い方怖えーなと思ったが同時に…
面白い。
自然とグレイも笑みを浮かべていた。
久しぶりに高揚した気持ちを落ち着かせ。
リアンに声を掛けるが話を明らかに聞いていない。
まぁ久しぶりに楽しめたし良いかとカードショップを後にした。
良い土産話もできたしな。まさかあいつが持ってるとは…鎖の称号を持つカード。
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