第5話 グレイ・カリアベル

リアンと出会う前


国に命令された仕事の為にグレイはグランミディア領の学園を歩いていた。


グレイは強かった。同年代の人と戦えば負けなんてほとんど無い程だ。その強さを買われ今回の仕事に抜擢された。


仕事とは使者である。この世界では戦争が続いており使者を直接別の国に送る事が大変危険である。その為、あらゆる国の人間がいて尚且つ争い事が禁止されている学園は他国との交渉には必要不可欠な存在となっていた。


そもそもこの学園は学園という形を借りた交渉の場である。


しかし、学生と教師以外は学園に入る事ができない。


学生は許可証を得る事で他国の区画に入ることができるが教師は許可証を持っていても他国の区画に入る事ができないので、学生が交渉を担当している。


だが、グレイは交渉なんて向いていない。だからもう1人の交渉担当の学生とやって来たのだが、もう1人は眼鏡に黒髪を束ねたthe真面目と言った女子だったのでグレイが苦手と感じる人間だった。


「グレイ、今回話す相手はグランミディアの生徒会長です。くれぐれも失礼の無いようにして下さい」


「はいはい、分かってるよ」


今回の仕事に選ばれてから何度も言われているのでグレイはうんざりしながら話を聞いていた。


何度も聞いた話を延々と繰り返して話すジェシカの話を聞き流していると目的の場所に着いた。


ノックをし「どうぞ」と中から声がかかってから中に入る。


「失礼します」


と言ってジェシカは入るがグレイは一礼して入る。


来る前からジェシカと話し合い交渉の間は喋らないない事になった。グレイは自分でも敬語が苦手で失礼な態度を取ってしまうので交渉に向いていないと分かっているので自分に声を掛けて来ない限り喋らない事に決めた。


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話し合いは順調に進み何事もなく無事に終わった。


帰り際にグランミディアで有名なお土産を貰い部屋を出た。


これから自分達の国の領に帰ろうと言ったところでグレイは


「じゃ!俺、観光してから帰るから!」


と言って走り去ろうとした。


仕事の為に来ているのであまり褒められたことでは無いが許可証を持っているので見て回る事自体はできる。


ジェシカは悪い事だと分かっていたが他国の領というものに興味があった。


学園の領というのは学生達が暮らしやすいように祖国の文化や特徴が出ている。


ジェシカ達がいるオーザンという国は良くも悪くも地味だ。


チェインの強さこそ正義と思っている人間が多く、イメージ的に言えば軍事国家というイメージだ。


なのでグランミディアの煌びやかな街並みや文化の違いに心を奪われ


「待ちなさい。あなた1人では問題を起こすかもしれないので私も同行します」


こういう時に行動を起こしてくれるグレイに心の中で感謝しながらジェシカは観光する事にした。


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グレイはジェシカが一緒に来るとは思わず驚いていた。


頭のお堅いいけすかねぇーやつと思っていたのでこういう事に乗ってくるとは思っていなかった。


そして1人で行こうと思っていたので予定が変わってしまったなと考えていた。


グレイは観光すると言っていたが実際はチェインをしに行こうと思っていた。


オーザンでは戦える人間とはあらかた戦ったし、殆どの人間に勝った。


強い人間とは戦えなかった。強い人間はお偉い方や軍の上層部が多く会うことすらできない。


そんな時に他国に行く仕事に選ばれた。


なのでジェシカが一緒に来るのはまずい。


とりあえず、ジェシカが行きたい所に行き、店内を見て回る。


そして、途中でバレないように店を出たが普通にバレた。


「何処へ行くのですか?」


「便所」


と言い何とか店を出た。


向かう先はどんな人間でもチェインができ、カードが沢山あるカードショップにした。


とりあえず端末に対戦の予約を入れ待合室で座って待つ。


すると男が大声で喚き始めた。


どうやら店員に文句を付けているらしい。


グレイは大声で文句を言っているのが迷惑でカチンと来た。


「うるせぇなー!」


グレイは客観的に見るとヤンキーである。いや、客観的に見なくてもヤンキーだ。


そんな人間に大声で叫ばれたら誰だって身が竦む。


現にさっきまで文句を言っていた男は一瞬たじろいだ。


しかし、制服を見てこの国の人間では無いと知り強気に出た。


「この国の人間じゃ無い奴が口を挟んでくるな!大体君は他の国の人間だろ?何故ここに居る?」


「話の論点をすり変えんな。今お前がうるせぇって話ししてんだよ」


グレイはそう言いながら睨み付けた。


すると店員が「まぁまぁ落ち着いて」と仲裁に入る。


「あなた達はオルベル学園の学生でしょう?ではチェインで勝負しては如何ですか?」


すると男はニヤニヤし始め「フッ俺が貴様のような他国の雑魚に負けるわけないだろう?」と勝ちを確信してるかの様に言った。


「良いぜ勝負してやるよ」


「ならば俺が勝てば慰謝料としてお前のカードを1枚貰うとしよう」


「ならもちろんお前も賭けるんだよな?」


「当然だとも。まぁ俺はオルベル祭にも出場した事があるから負ける事はない」


オルベル祭とは年に一度行われる国の代表の生徒達がチェインで競い1番を決めると言う大会である。


それに代表として選ばれるというのは名誉なことであり生半可な実力では代表に選ばれることすらできない。


「へぇー面白いじゃん」


グレイは自然と笑みを浮かべる。目的が強いやつを探しに来たので丁度その目的を達成できた。


そしてお互いのカードを賭けたチェインが始まった。


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「雑魚が、期待外れだ」


グレイは落胆した。


結果は後攻6ターン目でグレイの圧勝。


オルベル祭に出場した経験があると言っていたがそんな実力到底あるとは思えない。恐らく口からでまかせだろう。

 

俺の期待を返せと言わんばかりに相手を睨み付けた。


「約束だ。お前のカード貰っていくぞ」


そう言って未だに「何故だ、俺が負けるはずが…」等と呟いている男のデッキから使えるカードを探す。


見事にデッキ構築が下手だ。


カードが全て1種類ずつしか入っていない。


その中から汎用性の高いカードを見つけ呟く


「へぇ〜。こっちのエリアにはこういうカードがあるわけね」

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