第6夜「センターライン」

 いつもの通勤路。

 国道に続くバイパスを急ぐ。まわりに他の車は一台も見当たらない。


 朝もやがかかって視界が不安定な前方に、行く手を阻む2つの物体が見え出した。


 あわててブレーキを踏む。



 センターラインをはさんで巨大なゴミ袋がひとつづつ放置してある。


 向かって右は黒いゴミ袋。

 左に半透明のゴミ袋。


 これでは車が通れないではないか。


 しかたなくひんやりとした冷気の中に足を踏み出す。


 2つのゴミに近寄ると、それらがもぞもぞとうごめいているのにようやく気付いて、ぎょっとする。



 半透明の方のゴミ袋の中身がうっすらと透けて見えた。



 クマだ。


 白いクマが閉じ込められてもがいているのだ。



 ということは、もうひとつのゴミは黒クマだ。間違いない。かわいそうに。



 どうしたらいい?



 わたし一人では道路の脇にどかすことは不可能だ。

 だったら袋を破って出してあげようか?


 いや。あのうなり声。


 彼らはあまりに空腹だから、外に飛び出たと同時にわたしを食べてしまうだろう。

 理性を完全に失っているからだ。


 空腹でなければ私に感謝するはずだが、わからない。危険な賭けだ。




 どうしたらいい?


 どうしたらいい?




 おわり



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