第3話 シブヤ・ゲットーの衣食住
外は山の頂上からは空が青かったが、このふもとのこの集落では、トレジャーマウンテンで燻ってる煙で空は薄汚れて見える。
実の所ところ、飢えて死にそうも何も、現代において飢餓というものはない。だからヨシムラは笑い飛ばしたのだが。
もちろん、屋台や食堂で食べるならマネーが当然必要だが、現代ではもう飢えて死ぬ事もなく、軽い病気や怪我なら無料で治療を受けられる。
カードリッジ型自動配給機があちこちにあり、AI制御のオートファクトリーから生み出されるカロリーブロックやシェイクドリンク、嗜好品のアルコール、タバコ、下着、上着、靴下まで、好きなだけタダで自由に得られる。
ただ、味や品物のバリエーションは多くは無いし、決して美味いとは言えず、むしろ不味い。栄養補給のためのみに作られたものや、とりあえず酔えればいいという、「最低限文化的な生活」として支給されるものだ。
だから屋台や食堂や酒場をやってるレッドやオレンジのやってるそういった店は、美味しい料理人のところは普通に繁盛しているのだが。
医療も看護ロボとモニタ上のドクターAIがある「診療所」で軽い病気や怪我なら無料で投薬と外科処置してくれる。ただ重い病気の場合は有料なため、レッドでも加入できる総合保障保険に入ってる人は多い。
----
そういえばランチボックスは食べたが、少し一杯やりながら何か軽く食べていこうかな、とひと思った。できれば、カロリーブロックや料理店の事ではなく、たまに行われる、廃棄食品の加工品でなく本物の、畑や牧場で作られたという野菜や肉を使った贅沢な炊き出しを、今日していないだろうか?と、ついそっちの美味を思い出し、ヨヨギ・ヴィレッジを見渡した。
周囲を見た限り残念ながらどうやら今日はやっていないようだが、たまにその辺の痩せた汚染された土地を使った家庭菜園のような畑ではなく、本物のきちんと農地として開拓された畑の野菜や、工場の培養肉ではなくちゃんと飼育した動物の肉を使った、美味であり栄養価も高い、「慈善活動」の炊き出しがたまに行われる。
ノーストウキョウから武装したガードマンに護衛されやってきた、ホワイトランクかそれ以上の、上物の服を着たご婦人や坊ちゃん嬢ちゃん達が行う炊き出しだ。
彼らはゲットーの人も地も放つ異臭にさすがに顔をひそめながらも、野菜類や、牛肉、豚肉、鶏肉など、具だくさんなありがたいスープを、使用人として恐らく都市で雇われてるオレンジの人間に住民に手渡させ、住民の感謝の言葉に満足し微笑む。不定期に、月2,3回くらいだろうか。頻度はかなり気まぐれだが楽しみの一つだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます