第22話 光の世界へ繋がれ
ザーザ先生は一人浮かれていたが、僕と眼が合うと、たちまちまた真面目な顔に戻り、わざとらしくコホンっと咳を一つした後、万年筆を手に取ると、まるで指示棒のようにトントンと机に立て掛けられた板を叩き、次の授業に進みますと僕に言った。
今度は光との繋がり方についてだ。
その言葉を聞いて僕は疑問が沸いた、闇の力と契約していた彼が全く真逆の力である『光』について、教える事が可能なのだろうかということを?
"ZARZA? May I ask a question?"
「ザーザ先生、質問しても良いでしょうか?」
"Sure, go ahead"
「もちろんです、どうぞ」
"You said you lost your all magical power but somehow you could see Elements"
「先生は魔力を失ったと言いました。でもどういう訳か? エレメントが見ることが出来ます」
"Yes"
「そうですね」
"Well, I dare not mention this as it's a common story, But this time you are going to tell me about LIGHT SIDE POWER not DARK SIDE. So?"
「まあ、これは共通した話しなので、敢えては触れませんが、でも、今回アナタは私に『闇』の力では無く、『光』の力について指導してくれます、だからその……」
"So, What?"
「だから、何ですか?」
"Why can you teach me LIGHT one even you have never use it and also not LIGHT SIDE?but DARK SIDE."
「どうして、アナタは私に『光』の使い方について教えて頂くのが可能なのでしょうか? だってアナタは一度も『光』の力を使ったことが無いですし、そもそも光側じゃないでしょう? 闇の方じゃ無いですか」
それを聞いた彼は、内包された魔力が体内に流れていた以前の自分なら無理かも知れないが、現在起きている不思議な状態のため説明が出来ると言った。
でも、彼の瞳は核心めいた物ではなかった。
どちらかと言うと挑戦しようとするものの眼だ。
そして彼は続けて僕に言った。それは魔力を失い『闇』との力と関係が切れたことで、『光』の存在を初めて知覚出来るようになったと言うのだ。
以前は『闇』しか見えなかったらしい。
つまり、今現在の彼は『光』と『闇』に干渉出来る可能性が有るか、その何方にも属せない可能性が有ることを意味していた。
そして、今回は彼は後者側に属した。何方も見えるだけで、何方とも繋がることは出来なかった。そうするとやっぱり教えることは無理なのでは? と思っていたが、繋がる方法は覚えて居るので、普通に魔力を持つ僕なら、問題無く出来るのではないか? とのことだった。
もちろん、『光』と『闇』の繋がる方法が同じ場合で有ればという条件付きだ。試してみなければ分からない、しかし試す価値はある。そう僕に説明してくれた。
『では、始めましょう。アナタなら出来ますよ』そう自信を持って鼓舞する彼の声に、勇気を貰った気がする。
僕は、彼の説明のままに、光と繋がるトレーニングを始めた。
瞳を閉じ、頭上の頂辺に意識を集中し、そこから無数の糸が伸び上へと繋がるか、または上から無数の糸が垂らされ、そこへ繋がるかのどちらかをイメージするように言われた。
因みに『闇』の場合は、これとは全く反対で、足元から無数の糸を地下へと伸ばすか、または無数の糸が足に絡まるかをイメージする必要が有った。
僕は無数の糸のイメージが上手く出来なかったので、代わりに光の柱を思い浮かべた。
ドクンッ!?
瞳を閉じている筈なのに、物凄く眩しい。
錯覚なのだと思うけど、僕は瞳を開いている感覚だった。そしてその眩しい光の津波が、自分めがけて怒涛の勢いで流れてきた。僕の全身はその中へ飲み込まると。キーーン、キーーンと物凄い高周波の耳鳴りが連続で起き始めた。
僕は顔を顰め、両耳を必死に両手で抑える。それは僕の鼓膜が弾けそうな程の振動で、時折目眩を伴った。それが繰り返されていたが、徐々にその音が遠ざかって行くのを感じた。
鳴り止んだことを少し確認してから、そっと耳から両手を離し、そして目を開いた。するとそこは、辺り一面が白銀の世界へと変わっていた。
雪? いや、違う……
パラパラパラパラとゆっくり、時間が止まったかのように、物凄くゆったりと金色に光る粉が辺り一面を降り注ぐ。
それが身体に触れると、雪解けのように溶けて行き、化粧水が染み込むようにスッーーと体内に吸収されて行く。身体の内にそれらが浸透していく度に、胸の辺りが仄かに暖かくなる。
まるで細胞一つ一つにエネルギーが満たされていき、自分が新しい自分に生まれ変わるような生命の息吹を感じる。
すると、何か記憶の破片のような物が映し出された、物凄い勢いで映像パネルが切り替わる。これは多分僕の前世の記憶なのだろうか? でも、それが何なのかは一瞬の出来事なので、はっきり分からなかった。
ドクンッ!?
また、何処か違う場所に移った感じがした。でも、これはいつものカーテンを捲る物とは異質で、そして何故だか安心感を伴っていた。
……此処は?
何故だか分からないが、とても懐かしさを感じる。
何処かの建物の中だろうか?
「姉さん? ユートピュア姉さん」
えっ?
誰かが、彼女(僕)のことを呼んでいる……
僕は辺りを見廻した。しかし、誰も居ない。
「姉さん? 姉さん? 俺だよ、此処だよ」
声の響く方向に顔を向けると、白い粉雪が目の前で回転しながら集まり、やがて人の姿らしきものが形成されて行く。男性の姿にそれは変わると、手先から順にまるでデジタル処理で色を埋めるかのように、ハッキリとした姿で現れた。
その姿は僕がローゼンマリアさんの屋敷で見た、掛け軸らしき絵に描かれた顔と全く同じだった。彼はそう……彼に間違いない。
「姉さん、俺だよ!?」
「ユ……ユニバー……シア?」
「ああ」
「生きていたんですね」
「まあ、生きてると言えば生きてる、でも今は肉体が無いけどね」
「肉体が無い? でも、目の前に……」
「ああ、コレ? コレは違うよ! いまの姉さんだってそうさ、今は精神世界に居る」
「精神世界?」
「ああ、精神世界だ。だから俺は姉さんに会うことが出来た」
「じゃあ、此処は想像の世界で、本当のあなたは?」
「いや、想像でも無い。俺は俺で本物だよ。何て説明すればいいかな~~」
「想像じゃない? それって……」
「悪い姉さん、そろそろ此処と繋げられなくなる」
「えっ? ちょっ……ッ、ちょっとまだ話が!?」
「あっ、そうそう、何が有っても俺は姉さんの味方で、いつでも姉さんを……る……」
ドックンッ
合図のように、大きく心音が鳴ったと同時に、僕は元の場所に戻っていた。
何故、あの場所で突然弟のユニバーシアとコンタクトが取れたのか、理由は分からない。それより自分の身体にさっきまで感じることが出来なかったエネルギーの流れを感じる。
これが……僕の魔力。
どれ位が一般の魔力量なのかなんて分からないけど、それでもこの量は桁違いなのが感覚で分かった。
出来ました、と言う意味でザーザ先生を見たのだが、彼は僕の顔を見て喜ぶどころか? 手に口を当てて、これでもかと許りに目を見開いた。
どうしたのか?尋ねると……
"Your eyes are BLUE"と、一言だけ呟いた。
僕の瞳が青い?
自分の瞳など見ることが出来ないので、鏡等の映し出す物が無いか、机の引き出しを開けては閉めを繰り返し、探していたその時だった。
「オイ!? そこに居るのは誰だ!?」
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