第19話 ザーザ先生の魔法授業
丁寧な挨拶に気を良くしたのか、いつもにも増して三割増し気持ち悪い。
さっきから、ニヤニヤニヤニヤしてるんだけど、本当に可愛らしさの欠片も有ったもんじゃ無い。
まあ、そんなことは一先ず置いといて、これからどんな授業が始まるのか楽しみだ。
フィオーネさんには申し訳ないけど、今のままだと、どの道犬死にするだけなので、無事を祈りつつ彼女には踏ん張って貰おう。
あの人もきっと魔法とか何か特殊な能力は使えるはずだ。
彼女と初めて会った時もそうだけど、瞬間移動のような芸当もしてた。しかも二回も!
だからあの黒い怪物に捕まった時は、きっと油断をしていただけだ!……と思いたい。
折り紙の帽子は思いのほかブカブカなのか? 前に倒れると彼の視界を何度も遮ったが、彼は負け時と何度も被りなおし、何かコツと掴んだのか帽子がズレなくなると魔法について話し始めた。
魔法と言うのは、まず自身にある、第三エネルギー『コル』(新たな力)とこの世界とは異なる世界のエネルギーである『光』か『闇』の二種類のいずれかと繋がり、この星に元々属す四つのエレメント『火』・『水』・『風』・『土』と結びつける事により、我々が呼ぶ『魔法』という力を行使する事が出来るようになる。
更に、出生した場所や生活環境により、それぞれの個性とも言える個の属性の魔法を操る事ができ、簡単に言えば、『水』は『氷』に『土』は『溶岩』等へと変化させる事が可能らしい。
因みに彼が言うにはユートピュアさん? は究極の"光の氷雪"使い。
彼が戦場で偶然見た、印象に残っている彼女の技は二つ。
まず一つ目、
━━
これは一見、霧の様なものが視界に現れたと思うと、瞬間冷凍され、対象が六方晶系の水晶の様な空間に閉じ込められるとのこと。
最初説明されたときは、無敵にに思えたが、この魔法は、レベルの高い炎の属性の魔法使いには破壊される可能性があるとのことだった。
それを、彼女は考慮していてか、更に合わせ技を使用していたとか。
それが、彼が見た二つ目の魔法、光の力と氷雪魔法を組み合わせた。
━━金色の雪(レイ・フレイク)━━
敵を粉微塵に斬り刻み、全てを雪の結晶へと帰していたらしい。
これは一見雪の結晶の形をしているが、光の速度で敵を襲う手裏剣のようなもので、超絶恐ろしい技らしい。
それを語るザーザーさんの顔が、また少し青褪めたのは気のせいだろうか?
まあ、それは敢えて触れないとして、
「いや~~ユートピュアさんって本当に凄いんですね~~」
" You said something talking about Utopure.....What?"
「自分の事について何か言いました?」
"No, not really, but just what I said is I would like to recover my memories and use my spells again, that's it."
「いいえ別に、ただ記憶を取り戻し、魔法を使えるようになりたいと言っただけです。」
"I see."
「なるほど」
危ない危ない!? 普通に魔法の授業を聴いていて、それで六方晶(ヘクサゴナル・クリスタ)って魔法と金色の雪(レイ・フレイク)って魔法の凄まじさを知って他人事のように驚いてしまった。
でも、ユートピュアさんってのは……僕の事だから、自分の技を驚くのは不自然極まりない。
ザーザさんが僕の素の言葉を理解出来なくて助かった(汗)
僕はザーザさんへ音頭を取ると、機嫌が更にもう一ランク上がったのか? 魔法の感じ方についての説明が始まった。
第一段階は呼吸法だ。
まあ、こういうのは何処の異世界話もそうだけど、まずは取り敢えず眼を閉じる事から始まる。そしてヨガじゃないけど、呼吸法について、呼吸って普段無意識にしてるから、いざ意識してやろうとするとこれまた難しい。
しかも自分が想像していた呼吸と全然違ってて、てっきり腹式呼吸とかかなと思ってたんだけどそうじゃなかった。
最初に息を吐き切るんじゃ無くって、何もするなって言うんだ。息を止めても行けないし、吸っても行けない。眼を閉じて、ただひたすら鼻の奥が冷たい空気で満たされて行くのを待てとの事。
何を言ってるのか分からなかったんだけど、眼を閉じて、ただ待って居たら、本当に呼吸が変化したから驚いた。今まで自分が行っていた呼吸の方法は間違っていたのか? そう思えるほど、鼻に流れて来る空気自体が一変した。
そして第二段階、
同じく目は閉じたままなんだけど、眼が有る位置で見るのでは無く、額の真ん中辺りに意識を集中して、謂第三の瞳で見るようにと、言われた。
これまた不思議で、眼って言うのは普通は眼の位置に有るはずなんだけど、言われた額の真ん中に意識を集中すると、意外にもそこに瞳があるように感じることが出来た。
そして第三段階、
これは第一段階と第二段階を統合する。呼吸の意識を額まで拡大するイメージで、驚いたことに、額の周りが冷却されるように冷たくなる。
なんて言うのだろう、風邪で熱が出た時に使う、冷えペタを常に貼っているような感じで冷たくなる。
そして魔法の感じ方の最終段階、
なんと先程の全ての感覚を維持して目を開けるというもの。
できるか? 正直不安だったけど、恐る恐る目を開けると、僕の目の前で信じられないことが起こった!?
僕は思わず息をのんだ!?
目の前には、今まで見たことの無い粒子のような物が、無数に飛びかっているのが見えたのだから。
僕の反応が違うことに彼は気が付いたのか?
僕に向かってこう言った。『ようこそ、魔法の世界へ』と……
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