第123話 軍備増強
俺はリュート達ネームドの龍人4人とドラゴニュート10人を箱庭に召喚した。
しかし、召喚された眷属達の様子がいつもと違った。
いつもなら召喚した途端、ガヤガヤと騒ぎ出していた。
だが今は俺の目の前で、全員が片膝をついて頭を伏せている。
ん? どうしちゃったんだこいつら……
リュートは事ある毎に跪いているから違和感はないけど、サクヤやリュウキまでこんな行動をとるのは珍しい。
少しばかり困惑していると、リュートが声を上げる。
「召喚に応じ参上いたしました。御用であれば是非我らにお申し付けください」
リュート、サクヤ、リュウキ、リュウガの4人が俺の前に並び、その後ろに新しく召喚した10人が横一列で跪いている。
うーん……これはあれか?
後輩が増えたから、先に召喚されたリュート達が教育した的な感じかな。
サクヤとリュウキは落ち着かない様子でソワソワしているのが分かる。
まあ騒がれるよりはやりやすいし、このまま話をするか。
「えーと……今日からこの『箱庭』の空間が、お前達眷属の拠点になる。色々やることはあるが、まずはドラゴニュートの数を増やそうか」
とりあえず部隊編成のパーティー上限までドラフォニュートを増やそうかな。
一気に数が増えるから、教育はリュート達ネームドに任せよう。
俺は眷属召喚を開き、部隊編成の残り枠である25人のドラゴニュートを一気に召喚した。
草の上に多数の魔法陣が浮かび上がり、ドラゴニュートの群れが姿を現す。
召喚されたドラゴニュート達はキョロキョロと辺りを見回し、すぐに全員が俺に視線を向ける。
リュート達みたいにネームドじゃないから、見た目は二足歩行のトカゲだ。
この人数を前にするとさすがに迫力があるというか……そんなこいつらを召喚した俺はさながら魔王にでもなった気分だ。
そして新たに召喚したドラゴニュート達が一斉に喋り出すかに思われたその瞬間、リュートは俺の一歩手前で立ち上がり、ドラゴニュート達に向かって一喝する。
「何をしている……頭が高い! 王の御前であるぞ!」
ドラゴニュート達は一言も喋ることはなく、慌ててその場に跪く。
おお、何だかリュートの迫力がすごかったな。
「召喚」が眷属にとって生まれるという意味合いならば、リュートは長男みたいなもんだからな。
そろそろお兄ちゃんとしてしっかりしないといけないとか思ったんだろうな。
うん、なんだか少し嬉しい気分になった。
子供の成長を実感した親の様な気分に浸っていると、突然アナウンスが脳内に響いた。
『ドラゴニュートの召喚数が「部隊編成」の上限に到達しました。コアスキル「部隊編成」が「軍隊編成」へと覚醒します』
『個体名:リュートの指揮官熟練度が一定数に到達しました。個体名:リュートに、一部の権限の移譲が可能になりました』
おお?
突然のアナウンスに驚きつつも、すぐにステータス画面を開く。
______
コアスキル
・軍隊編成(覚醒)NEW
:ネームド済の龍人一名を「龍軍大将」に任命可能。
大将以下に無制限に部隊を編成可能。
・権限移譲
:コアスキルの一部が使用可能になる。
移譲可能眷属 (個体名:リュート)
______
軍隊編成に関しては他にも説明がずらりと書かれているが、簡単に言えば「部隊編成」の規模が大きくなったという認識で大丈夫だろう。
それより、他のコアスキルも何か条件を満たせば覚醒するのかな?
まあいい、今はひとまず新しいスキルを活かそう。
「リュート、お前を今日から龍軍大将に任命する」
リュートは序列というか礼節というか、そういうものを重んじるから、ここは形式的にやっておいた方が喜ぶだろう。
龍軍大将は一人しか選べないし、リュートが適任だ。
リュートは再び俺の前に跪く。
「は! 拝命いたします」
するとリュートの体が淡い光に包まれた。
おや?
そして数秒で光は消えた。
何だったんだ?
リュートを見ても何か変化した様子は無い……あ、服が若干変わってるな。
ネームド組は全員、白い装束を身に纏っている。
現代の服装に似てるものが無いから例え辛いが、強いて似てるものをあげるなら平安時代の陰陽師的な感じだな。
今までは胸の辺りに、俺のコアにあるものと同じ龍の紋章が刻まれていただけだった。
しかし龍軍大将に任命したリュートだけ、その白装束が少し豪華になっている。
襟や袖に金色のラインが入っており、両肩には鋭い爪を持った龍の腕のマークが新たに蒼色で描かれている。
リュウキやサクヤ達との違いはそれくらいかな、ドラゴニュートに関してはスッポンポンなわけだし。
まあ観察はこれくらいにして、このままリュートにコアスキルの一部を譲渡していくか。
権限移譲で譲渡できるスキルはいくつかあったが、とりあえずは「ビルドシステム」、「眷属召喚」、「武装召喚」、「軍隊編成」、そして「箱庭」スキルの物質生成の権利を譲渡した。
試してみたが、譲渡と書いてあるが一応俺も使えるみたいだ。
「じゃあリュート、当分の間は今召喚しているドラゴニュート達を部隊に編成して、A級ダンジョンでレベリングと魔石集めに専念してくれ。集まった魔石でこの箱庭に自分達の休む場所を建築しつつ、どんどん眷属を増やしていってくれ」
「仰せのままに」
「ドラゴニュート達のビルドはそれぞれにあったもので構わないから、スキルオーブで習得させていけ。ガチャで龍スキルと、S級の武装が出た場合はまず俺に知らせろ。それ以外はリュートに任せる」
こうして俺は、リュートに一通りの仕事を任せた。
これでしばらく俺がクランの活動で忙しくしている間、魔石集めと眷属の育成、それから箱庭の環境整備を任せることができた。
ドラゴニュート一人一人のビルドを俺が設定していたら、いくら時間があっても足りないからね。
これくらい盛大に丸投げしてしまっても良いだろう。
少しクランが落ち着いたら、彼らの様子を見にくればいいさ。
こうしている内にあっという間に時間が過ぎており、俺は昨日に引き続きクランの仕事に向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます