第122話 新たな空間

 生配信の翌日、今日は日の出よりも2時間ほど前に起きた。

 ベッド脇の時計を見ると、まだ時刻は午前4時を過ぎたばかりだ。


 俺はあくびを噛み殺しながら無理やり体を起こし、トレーニング用の服に着替える。

 

 少し寝足りない気もするけど、昨日は全く体を動かせなかったし、今後も忙しいだろうから仕方がない。


 顔を洗って支度を済ませた俺は、クランハウスの中庭に移動した。




 俺は初めて、クランハウスの中庭に足を踏み入れた。


 うーん……中庭っていうより、これはグラウンドって言った方が適切な気がするな。


 大体広さは縦横100メートルくらいかな?

 ブレイバーズは大人数でここで訓練していたんだろう、入り口の横に訓練用の木剣や木槍などが大量に置いてある。


 御崎さんが置いて行ってくれたのか……俺は自分の木剣があるからいらないけど、新しく加入する人たちには必要だな。

 

 俺はインベントリから木剣を取り出し、素振りから始める。


――ブン!……ブン!


 まだ月明かりしかない薄暗いグラウンドに、素振りの風切り音だけが響いている。


 しばらく素振りを続けていたが、やっぱり少し物足りない感じがする。


 最近鍛錬をしていてよく思う、訓練メニューを変えるべきかと。

 

 ステータスが上がり過ぎているせいで、これまで通りの力で剣を振っていてもあまり意味がない気がしている。


 もっとこう……思いっきり振りたい。

 だが今の俺が全力で剣を振れば、多分衝撃で建物に被害が出る。

 

 どこかいい場所があればいいんだが……


 そう考えて真っ先に、最近入手したスキルが思い浮かんだ。

 

 箱庭か?


 クランハウスの訓練場でもいいが、どうせなら箱庭で思いっきり環境を整えてもいいかもしれない。


 そういうわけで早速、ゲートを開いて箱庭に移動した。


 


 前回の時から何も変わっていない箱庭の空間、俺は目の前に広がる大自然を堪能しながら、あれこれと考えてみる。


 うーん……眷属達の住む場所も作りたいし、どうにかして場所を分けたいな。


 そういえば、チュートリアルの時の天の声さんはまだいるのかな?


 そう考えた瞬間、脳内に声が響いた。


『はい。チュートリアル後の疑問も受け付けております』


 おお、居たのか……これは助かる。


 早速俺の思いつきが実行できるか聞いてみた。


「今居るこの場所とは別の空間を作れたりしないかな? 例えば……ダンジョンみたいに階層で区分けするとか?」


 天の声は俺の質問に即答してくる。

 

『可能です。魔石から得られる魔素さえあれば、生命以外の全てが生成可能です』


 なるほど、それなら俺が思いつくくらいのことは大体できそうな気がするな。


 俺はついでに、少し気になったので追加で質問した。


『じゃあ生命を作りたい場合はどうすればいい?』


 これは単純に気になっただけだ。

 

 ただの興味本位だったが、驚きの答えが返ってきた。

 

『生命を生み出すには「ソウル」を利用すれば可能ですが、現在の権限レベルでの実行は不可能です』


 おいおい可能なのかよ……それに言い方的には、その内できるようになるってことか?


 生命を生み出すなんて、一人の人間がやっていいことではない気がする。


 まあ一旦これは聞かなかったことにしよう……


 俺は気を取り直して、天の声に色々と質問をしながら、訓練用に使う空間の生成を開始した。


 まあやることは簡単だった。


 新たに作る空間のイメージを天の声に伝え、提示された魔石消費量を承認すれば終わりだ。


『了……B級魔石1256個を消費して、新たな空間を生成します。生成には20時間程かかります』


 というわけで、明日まで待てば勝手にやっといてくれるらしい。

 忙しいからありがたいね。


 魔石消費後の残りの魔石がこれだ。

  ______

 インベントリ

 魔石

 ・F級:203006

 ・E級;735

 ・D級:654

 ・C級:1742 

 ・B級:1978(−2256)

 ・A級:148

 ______


 B級が1000個多く消費されてるが、これは前回オリハルコンを生成した時のやつらしい。


 一気に減ってしまったが、また集めればいいさ。


 新しい訓練場所ができるのはすごく楽しみだ。

 明日まで待ち遠しい。


 ひとまず今日の鍛錬はどうしようかと思ったが、俺はこのままやるべきことを先にやっておくことにした。


 鍛錬は明日から思いっきりやろう。


 クランの仕事が始まるまで大体あと3時間くらい、その前に眷属達の武装やビルドを整えよう。


 今の内にC級のドラゴニュートも可能な限り召喚する。

 そしてリュート達ネームド組には部下の育成と、俺がクランの仕事をしている間のA級ダンジョンの周回をしてもらいたい。

 

 そういうわけで、俺はリュート達眷属の全員をこの箱庭に召喚した。




 ______

 あとがき


 近況ノートを更新しました。

 今後の更新の仕方について書きましたので、よければ見ていただけるとありがたいです。

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