第39話 B級眷属

 結界石で安全地帯を作り、ステータス画面を開く。


 そして眷属召喚の「B級」をタップする。

 

 すると魔法陣が輝き、眷属のカードが召喚される。


 とうとう来たか……


 ステータス画面の眷属カードには、ドラゴンが描かれている。

 

 このスペースで召喚できるだろうか?


 今いる場所には、丁度木々が生えていない直径10メートル程の円状のスペースが空いている。


 とりあえず召喚してみようか。


「召喚」を発動すると、円状のスペースに直径7メートル程の大きな魔法陣が地面に形成された。

 

 そして魔法陣が完成した直後、中心から何かが勢い良く上空へ飛び出した。


 飛び出した眷属は上空をしばらく旋回し、巨大な翼を羽ばたかせて魔法陣の上に着地した。

 

「グオァアーーー!」


 俺の目の前に着地したドラゴンは、天に向かって咆哮を上げる。


 今回の眷属は、その名の通りドラゴンだった。 

 ディーンのような黒曜石のような黒色の鱗が全身を覆っている。

 そして立派なツノが2本生えており、翼と前足が一体化しているタイプのようだ。


 しかし、デカイな……


 人間なら丸呑みにできるほどの頭の大きさに、両翼は広げると10メートルに到達しそうな勢いだ。


 俺はB級眷属のステータスを確認する。

 

 ______

 種族:ワイバーン

 Lv1

 HP:200

 MP:100

 龍気:150


 筋力:100/100 

 耐久:200/200

 器用:50/50

 敏捷:150/150

 知力:100/100


 スキル

 ・龍炎弾りゅうえんだん

 龍装

 ・「龍翼りゅうよく鱗鎧りんがい

 _____


 種族はワイバーンと書かれており、耐久寄りのステータスをしている。

 

 そして今回は「龍装」がある。

 名前からして鎧の龍装か……新しく防具を買わないでおいて正解だったな。

 

 さらには、今までの眷属と違って攻撃スキルがある。

 普通に戦闘させるのもいいかもしれないな。


 上空から火の玉が飛んでくるのは厄介極まりないだろう。


 さて、ひとまず挨拶?でもしておくか。


「俺は英人だ。よろしくな」


 俺がワイバーンに挨拶すると、ワイバーンは一度頭を地面に着けて、伏せの状態になる。

 多分リュートやサクヤがやっていた眷属なりの挨拶みたいなものだろう。


 そしてワイバーンは頭を俺に擦り付けてくる。

 リトスやディーンみたいだな。


「名前は何にしようか……」


 ドラゴニュートみたいに喋る種族じゃないみたいだし、自分で考えようか。


 そして数分頭をフル回転させた俺は、ワイバーンに名付けを行った。

 

「お前の名前はソラだ」


 安直だが、これが俺の限界だ……


 ワイバーンが光に包まれ、種族の進化が始まる。


 光に包まれている段階でわかる。

 さらに一回り大きくなっていると。


 これは出す場面を考えないと、討伐隊が組まれそうなレベルだな……


 光が消えるとそこには、美しい蒼色の鱗を纏ったソラの姿があった。

 

 所々元の黒色を残し、光の反射で青に見えたりする不思議な色をしている。

 2本のツノはさらに鋭く大きくなり、瞳の色も蒼色に変わっている。

 手足の爪も一層鋭利になり、尻尾の先は槍のようになっている。


 龍装しない方がいいかもしれないな……


「グオァアーーー!」


 歓喜の咆哮を轟かせるその姿は、先程よりも一層美しく見えた。

 

 そして、ネームド後のソラのステータスがこれだ。

 

 ______

 名前:ソラ

 種族:蒼天龍そうてんりゅう

 Lv1

 HP:250

 MP:150

 龍気:200


 筋力:150/150 

 耐久:250/250

 器用:100/100

 敏捷:200/200

 知力:150/150


 スキル

 ・龍炎弾

 ・龍蒼炎弾りゅうそうえんだん


 龍装:「蒼翼そうよく王鎧おうがい

 ______


 ステータスは50%ほど上昇し、さらにスキルも一つ増えた。


 同じようなスキルだけど、消費するものが龍気かMPかの違いだ。


 そして一番気になる龍装の詳細がこちら。

 

 ______

蒼翼そうよく王鎧おうがい

 耐久値が蒼天龍の数値分上昇


 スキル

 ・龍翼:龍の翼を展開し、飛翔することができる。

  MP・龍気消費なし

 

 ・高速飛行:龍気を翼に纏い、高速で飛行することができる。

  消費龍気は毎秒10。

  飛行速度は装備者の敏捷値に依存する。

 

 ・フォートレス

  鎧と翼に龍気を纏い、硬質化することで耐久を大幅に上昇させる。

  発動中は飛行不可。

 ______


 今回は耐久値にバフがかかる龍装みたいだ。


 今までの大きな怪我は、最初にライカンと戦った時と3人の殺人鬼と戦った時だけで、普段のダンジョン探索ではあまり怪我はしてこなかった。


 だけどB級からは敵が多様化し、スキルやステータスも強力になるから、耐久が増えるのは都合がいいかもしれない。


 スキルも3つと、今までの眷属よりも多い。

 そして、とうとう空が飛べるみたい。

 後で試してみよう。


 そして「フォートレス」というスキル。

 飛行はできなくなるが、敵の大技を受ける時は役に立つかもしれない。


 とりあえずはこんなところかな。


 次はソラに乗って飛行を試してみようかな。


 俺は早速ソラの背中に飛び乗る。

 

「ソラ、少しこの辺りを飛んでみてくれ」


「グオァア!」


 俺が指示を出すと、ソラは翼を羽ばたかせてゆっくりと浮上する。


 木々の高さを超えて浮上すると、今度は徐々に加速してダンジョン内を飛行し始める。

 

「おお! なかなか気持ちがいいな」


 ソラの背中は案外乗り心地は悪くない。

 

 そして風に乗って第一層の空をしばらく飛行していると、眼下に魔物を発見した。


 あれは……アンバーマンモスか。


 木々の隙間からでもはっきりとわかる巨大な体躯。

 確かデータベースによれば、全長は6メートルほどもあるんだったか。


 アンバーマンモスはB級の魔物で、大きな牙が2本生えているのが特徴だ。

 その体躯から繰り出される突進の威力は凄まじく、盾職の探索者でもその突進を盾で受けるのは危険だという。


 しかしアンバーマンモスに、対空攻撃手段はない。

 今なら一方的に討伐できるんじゃないか?

 ソラのスキルを試すいい機会かもしれない。

 

 俺はソラに指示を出し、アンバーマンモスに向けてスキルを放つ。


「ソラ、あいつに向けて龍炎弾を撃て!」


「グオァアー!」


 ソラの口から業火の玉が放たれる。


 凄まじい熱量に、背中にいる俺にも熱気が伝わってくる。


 龍炎弾はアンバーマンモスの背中に命中した。


 しかしアンバーマンモスに目立った外傷は無い。

 おそらくソラのレベルが低いせいで、ダメージが通っていないのだろう。


 もう少しレベルを上げてからまた試すとするか。


 そろそろ帰らないといけない時間だし、火魔法でサクッと討伐してしまおう。


 俺は火魔法を発動する前に、「龍感覚」で周囲に他の探索者がいないかを探る。

 

 魔法のレベルが8以降で使える魔法は、広範囲に影響を与える魔法が多い。

 そのためボス部屋以外で使用する場合は、他の探索者に配慮するのがマナーだ。


 よし、周りに人はいないな。


 俺はソラの背中で立ち上がり、アンバーマンモスに両手を向けて火魔法の発動準備をする。


 俺の両手には魔力が集まり、やがて灼熱の焔に変わる。


 直径1メートルほどのサイズの火球が完成し、そのままアンバーマンモスに向けて魔法を発動する。

 

焔爆撃エクスプロージョン!」


 今回は焔爆撃を最大威力で放ってみた。

 暗殺者と戦った時は、早く撃つことを重視しすぎて本来の威力は出せていなかった。

 だけど今回は、最大消費量のMP9000を使用した。


 放たれた火球は高速でアンバーマンモスに着弾し、そして爆ぜる。


 ――ドカーン! 


 アンバーマンモスを中心に凄まじい爆発が起こり、爆音と熱風が俺のところまで届いた。


 辺りの木々は半径20メートルの範囲で炭化し、それより広い範囲では爆風で木々が薙ぎ倒されていく。

 ちなみにダンジョンの木や石などは、次の日には元通りになっている。


 俺はソラで爆心地に降り立ち、魔石を回収する。

 他のD級やC級の魔物も、何体か巻き添えで撃破したようだ。


 辺りの魔石を回収した俺は、探索を切り上げて帰還した。


 ______

 インベントリ

 魔石

 ・F級:7301

 ・E級;108

 ・D級:92

 ・C級:55

 ・B級:1

 ______

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