第35話 二人目の龍人と神の槍

 俺はステータス画面を開き、功績の欄を確認する。


 ______

 功績

 ・レベルが50に到達する。

 :スキル上限の制限解除。

 スキルレベル10の状態の一部のスキルを、さらに10個の同一のスキルオーブを使用して上位スキルに進化できる。

 ______


 どうやら、スキルを上位スキルに進化できるようになったみたいだ。

 

 また魔石の使い道が増えたな……


 スキルオーブ10個を集めるのはそこそこ簡単ではあるかな?

 F級魔石が4000個あれば確保できるわけだし。

 だけど現状、魔石の使い道が多いせいであまり余裕がある状態ではない。


 クランを作れば多少は軽減されるだろうし、それまでの我慢かな。

 

 俺は功績欄を閉じて、眷属召喚の画面を開く。

 

 C級魔石を10個消費して、二人目のドラゴニュートを召喚する。


 目の前に魔法陣が現れ、魔法陣からドラゴニュートが姿を現す。


 現れたドラゴニュートは、リュートの時みたいな龍に近い人型だった。

 だが今回は性別が違うようだ。

 今回は女性みたいだな……なんでそう判断したかは言わないでおこう。


「およ? 今回の主人あるじ様は人間なのです? 初めてなのです!」


 リュートよりだいぶ小柄なドラゴニュートが出てきた。

 150センチくらいか?

 子供なのかな?……喋り方も幼い様な気がする。


 そしてリュートのように片膝をつき、心臓あたりに手を当てて跪く。


 そうか……跪くのがデフォルトなのか……


 もっと普通にしてくれていいんだけどな……

 

「主人様、召喚していただき光栄なのです! ご飯食べさせてくれるなら頑張るのです!」


「え……眷属ってご飯食べるの?」

 

 ちなみにリュートは今まで食事をしたことはない。

 もしかして……リトスやディーンもお腹空かせてたのか?

 

「別に食事が必要なわけではないのです。ただご飯は美味しいのです!」


 なるほど……まあ、みんなの分もこれから用意するかな?


「ご飯の件は分かったよ。とりあえず君に名前をつけるよ」


「おお! なら名前はサクヤがいいのです! 前はサクヤと呼ばれていたのです!」


 あれ? リュートとは違って自分から提案してきた。


 それより……前の名前を覚えているのか?

 リュートも前の名前の方がよかったのかな?


「リュート、お前の前の名前はなんだったんだ?」


「申し訳ありません。私は以前の名前は覚えていません」


 ん? 眷属によって覚えてることが違うのか?

 リュートは忠誠心で、サクヤは名前と食事かな。


 覚えていることや見た目も性別もバラバラ、本当にどこかで生きていたのか……


 とりあえず名前つけるか。

 

「じゃあ要望通り、君の名前はサクヤだ」

 

 俺がネームド機能を使って名前をつけると、ドラゴニュートの体が光に包まれる。


 そして光が収まり、サクヤは現れた。

 綺麗な金髪のツインテールを腰まで伸ばし、額にはリュートと同じ様なツノが2本生えている。


 そしてリュートの時と同じように、龍人に進化した姿は服を着ている。

 丈が短めのワンピースの様な服を着ている。

 ドラゴニュートの時は、全身が鱗で覆われていた。


 胸の辺りに龍の頭を真横にした、紋様みたいな刺繍がある。 


 これってどこかで……


 リュートの心臓辺りにもこの紋様がある。

 それほど意識して見なかったけど、俺の大剣に嵌っているコアにも同じ紋様がある。

 眷属の証みたいなものかな?


「わーいなのです! サクヤ参上なのです!」


 名前つけたからか元気がいいな。


 さて……次はビルドだけど、一応聞いておくか。


「サクヤ、何か使いたい武器とかスキルはあるか?」


「う〜ん、サクヤは遠くから攻撃できればなんでもいいのです!」

 

 遠距離か、俺が予定していたビルドでよさそうだな。


 俺はサクヤのビルドのために、余っている魔石を分解してF級の魔石にする。

 レベルが50になったことで分解効率が50%になり、1個分解することで5個になった。

 

 ______

 インベントリ

 魔石

 ・F級:789個(+16)  →47289(+1500+7500+37500)

 ・E級;389個(+28)  →89(−300)

 ・D級:381個(+44)  →81(−300)

 ・C級:434個(+68−10)→134(−300)

 ______


 C級は今後も眷属を増やすために少し残しておいた。

 

 そして30000のF級魔石をスキルガチャに、10000で武装ガチャを引いた。


 3000連のスキルガチャで、各スキルのオーブが75個ほど溜まった。

 スキルを1から10までで55必要だから、全てのスキルをレベル10にできる分が溜まった。

 余ったオーブで、俺のスキルとリュートのスキルレベルを上げることにしよう。


 龍のスキルはこの6個が手に入った。


 ______

 ・龍魔法 NEW

 ・龍感覚

 ・龍斧術 NEW

 ・龍の心臓 NEW

 ・龍圧

 ・龍盾術

 ______

 

 新しいスキルと被りが半々の結果だった。

 こちらも気になるが、今はサクヤのビルドを仕上げよう。

 

 サクヤは遠距離がいいと言っていたので、当初から考えていた遠距離ビルドを仕上げる。


 ______

 名前:サクヤ

 種族:龍人族

 Lv 1

 HP:75/75   

 MP :1100/1100(+1000)

 龍気:125/125 

 

 筋力:50 

 耐久:50

 器用:1100(+1000)

 敏捷:50 

 知力:1100(+1000)

 

 スキル

 ・武術系

 龍弓術Lv10、弓術Lv10

 ・魔法系

 光魔法Lv10

 ・強化系

 MP強化Lv10、器用強化Lv10、知力強化Lv10

 ・特殊系

 遠視Lv10、夜目Lv10、MP自然回復速度上昇Lv10、気配遮断Lv10、魔力遮断Lv10

 

 空きスロット:2

 ______


 今回は「龍弓術」を軸に、弓使いのビルドに仕上げた。

 俺もリュートも基本前衛だから、後衛の眷属が欲しかったところだ。


「部隊編成」の思考共有で、狙ってほしい敵を戦闘中に指示できる。

 

 相手が多数になるほど、秒単位で戦場の状況は変わる。

 思考共有のおかげで、的確な援護射撃が可能になる。


 サクヤの初期ステータスはリュートとは少し違った。

 HPや筋力が低く、MPや知力などの数値が高い。

 最初から後衛寄りの数値になっていた。


 弓術に必要な器用と知力を上げるために、「器用強化」と「知力強化」を習得。


 弓の狙いを正確にするための「遠視」と「夜目」。


 そして遮断スキルで気配を消して、サクヤの場所を特定できないようにする。

 光魔法も同じ理由で、レベル5の「ミラージュ」で透明になることで、敵がサクヤを視認できなくするという具合だ。


 なかなかいいビルドになった気がする。


 余っている空きスロットは保留にした。

 龍のスキルで後衛向きなものがあれば、それを習得させるためだ。


 あとはダンジョンでレベル上げだな。




 そして武器ガチャ、リュートに装備させているような名前付きの弓が欲しかったんだけど、残念ながら出なかった。

 

 今回でたレアな武装がこれだ。

 

 ______

 オリハルコンの弓(A級)

 オリハルコンの槍(A級)

 オリハルコンの短剣(A級)×2

 オリハルコンの盾(A級)

 崩滅ほうめつの斧・ユルングル(S級)

 ______

 

 初めてS級の武器が出てきたが、残念ながら斧だった。

 説明欄を見ると、S級のランクに相応しい超強力な武器ではあった。 


 だけど今の所、誰も使う予定がない。

 次のドラゴニュートは斧使いにするか……


 感覚だが、スキルガチャよりも高ランクのスキルの出現率が悪い気がする。


 ひとまずサクヤには「オリハルコンの弓」で我慢してもらおう。


「サクヤ、お前の要望通り遠距離で攻撃できる弓使いのビルドにしておいたぞ。武器はこれを使ってくれ」


 そう言って跪いているサクヤに「オリハルコンの弓」を渡す。

 弓の場合素材は関係ない気もする……どちらかというとオリハルコンを使うべきなのは矢の方じゃないかな?

 

 矢は「武装ガチャ」からは出現しないので、買う必要がある。

 一応「龍弓術」のスキルで龍気を矢に変換できるけど、実物の矢はあった方がいいだろう。


「ありがとうございますなのです! 主人様! ご飯くれたら頑張るのです!」


 ご飯はダンジョン前の広場で何か買ってやるか……1ヶ月間、E級に潜ってた時に換金したお金が結構溜まってるからな。


 そして「武装ガチャ」では一つだけ妙な武器が出ていた。

 

 それがこれだ。


 ______

 神焔槍しんえんそう・ヴォルザード(EX級)

 :神のほのおを宿した槍。

 (アッシュ専用武装)

 ______

 

 武器のランクはEXと書いてあり、S級を超えるランクってことでいいはずだ。

 俺の龍のスキルもエクストラスキルな訳だし。


 そして説明は一文だけで、一番下には「専用装備」と書かれている。

 

 アッシュ専用装備か……


 まず、アッシュって誰だ?

 

 可能性としてはドラゴニュートだろうか?


 彼らは前世の記憶が一部あるみたいだし、サクヤに関しては自分で名前を決めてしまったようなものだし。

 

 もしかしたらアッシュというドラゴニュートが、眷属召喚を続けていくと現れるのかもしれない。

 

 そして俺は、実験のために「神焔槍・ヴォルザード」をインベントリから召喚した。

 

「専用」という文言がどういう意味か気になったからだ。

 持つことができれば、使えるはずだろう?


 虚空から「神焔槍・ヴォルザード」が召喚され、俺の手に収まる。

 

 そしてその瞬間、手に強烈な痛みを感じた。

 

「アツ!?」


 今まで感じたことのない熱さに、思わず槍を落としてしまった。


 槍の至る所から炎が噴き出していて、槍自体が赤を通り越して白に近い色で熱を持っているようだ。


 ボス部屋の気温も、一瞬にしてサウナのような温度にまで上昇する。


 そしてさらに、見る見るうちにボス部屋の床が溶け出し、槍が沈んでいく。


 俺は慌てて槍をインベントリに「送喚」した。


「王よ! 大丈夫ですか ! ?」

「主人様! 大丈夫なのです ! ?」


 自分の手を見ると、皮膚が焼けただれている。

 血は出血した瞬間に、水分が蒸発して固まっていた。


 俺の耐久値と火耐性のスキルでも、少し触っただけでこれかよ……


 急いでポーションをかけると、火傷は綺麗に治った。

 ちなみにHPは500ほど削れていた。


 相当やばい武器だなこれ……


 専用武装はサクヤとリュートにもあるんだろうか?

 

 まあ、出た時に考えるか……


 ボスを討伐してからそれなりに時間がかかってしまったので、俺とリュートのスキルは寝る前に整えることにした。


 俺はボス討伐報酬を回収して、転移魔法陣で地上に帰還した。

 



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