第21話 最後通告
獣型ダンジョンを攻略した翌日、俺は新宿にあるD級ダンジョンを攻略した。
今回は早くC級を目指すために、攻略しやすいゴブリンがメインのダンジョンを選んだ。
俺のレベルは35に上がっている。
ディーンは27になり、リトスは40まで成長した。
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名前 天霧 英人
Lv 35
HP:4000/4000(+700)
MP :4000/4000(+700)
龍気:160800
筋力 :4000(+700)
耐久 :4000(+700)
器用 :4000(+700)
敏捷 :4000(+700)
知力 :4000(+700)
コアスキル
・召喚・送喚・スキルガチャ・武装ガチャ・インベントリ・龍脈回路・魔石分解・魔石合成
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名前:リトス
種族:レインボージュエルドラゴン
Lv40
HP:190
MP:190
筋力:190
耐久:190
器用:190
敏捷:190
知力:190
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名前:ディーン
種族:天龍馬
Lv27
HP:3600 (+1600)
MP:720 (+320)
筋力:3600 (+1600)
耐久:3600 (+1600)
器用:720 (+320)
敏捷:7200(+3200)
知力:720 (+320)
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現在リトスは全ステータス90%上昇、ディーンは敏捷値7200上昇。
やはり龍装の効果は絶大だな。
こいつらがいなければ、D級を1日で攻略するのは不可能だっただろう。
次のC級の眷属が楽しみだな。
そして規定である三つのD級ダンジョンを攻略した俺は、探索者協会池袋支部に来ていた。
エントランスを抜け、受付に着いた俺は受付嬢に昇格試験の申請をする。
「C級昇格試験は隣の闘技場にて行われます。時間になりましたら待機室までお越しください」
「わかりました」
攻略証明の審査を終えて、俺は闘技場へ向かった。
1ヶ月ぶりの昇格か……少し時間がかかってしまったな。
他の探索者の試験を見学していると、ついに俺の試験の時間が迫ってきた。
受付を済ませ、闘技場の武舞台に上がる。
武舞台の中央に歩いていくと、試験官が反対側の入り口から入場してくる。
ん? 試験官が変わるのか?
俺の一つ前の試験の試験官は女性の槍使いだったが、新しい試験官は短剣使いの斥候職のようだ。
何かおかしい……普通は受験者に合わせて試験官は選ばれる。
魔術師なら試験官も魔術師だし、剣士なら剣士か槍使いの試験官になる。
俺の武器は大剣、試験をするなら同じようにリーチのある武器を使う試験官になるはずだ。
大剣と短剣では明らかに武器の特性が違いすぎて、試験にならない。
どういうことだ?
俺が違和感を感じていると、試験官の男が話しかけてくる。
「よおルーキー。楽しもうぜえ」
「……」
試験官の男はボサボサな髪の毛と無精髭を生やしており、ニタニタと俺を見て笑っている。
その笑いを見た俺は、一月前に遭遇したライカンスロープを思い出した。
ライカンもあんな風に笑っていた。
嗜虐的な笑みだ……。
弱者を
新人を甚振るのが趣味なのかな?
不愉快なやつだな……まあ、そういう人間もいるんだろう。
ブザーが鳴り響き、試験が開始される。
するとその瞬間、試験官の男は猛スピードで接近し、短剣を振り抜いてくる。
俺は瞬時に大剣を盾のように構えて、鋭い攻撃を受ける。
――キン!
こいつ! 明らかに模擬戦闘の攻撃じゃない……おそらくジョブは「暗殺者」、それもかなり高レベルのはずだ。
「よく反応したなぁルーキー!」
その後も試験官の男は短剣での連撃を続ける。
俺は高速で振るわれる短剣を、大剣でガードするので精一杯だ。
大剣を振るにも、素早い動きで躱されるだろう。
そもそも大剣は、人間と戦うことを想定していない。
魔物を倒すのには向いているが、体が小さく動きの速い敵の場合は圧倒的不利になる武器だ。
しかもこいつ、明らかに致命傷になり得る箇所を攻撃してきている。
「どうしたあ! そんなもんかよルーキー!」
「くっ!」
なにが目的なんだこいつは!
俺の混乱とは反対に、会場は試験とは思えぬ攻防に今日一番の歓声が上がる。
「「「うおおお!」」」
「すげーぞ大剣の兄ちゃん! めちゃくちゃ強くなってるじゃねーか!」
「どうした新人! 押されてるぞ!?」
「もっと見せてくれー!」
どうする……龍のスキルはできれば使いたくない。
というかこれ、試験的にはもう十分なはずだ。
なぜ試験が終わらない?
考えていると、男はまたこちらに高速で踏み込んでくる。
――ガキン!
そして互いの距離が近づいた時、俺にだけ聞こえるように喋りかけてくる。
「お前、この試験受かると思ってんのか?」
「は?」
どういう……
「俺はよぉ、お前をこの試験に合格させるなって言われてんだよ」
「な!?……なんのためにそんなことを……」
互いに剣を打ち合いながら、男と会話を続ける。
「クハハ! 決まってんだろう?」
そうか……こいつは、父さんについて隠蔽している奴らの手先か!
「気付いたみてーだな! お前が何に首突っ込んでるか知らねえが、俺に仕事が回ってきたってことは、相当やばいこと知ろうとしてんだろう?」
くっ! またか! こいつも前回と変わらない……ただの駒なのか!
いや、前回のやつよりは多少は知っていそうな気がする。
僅かな情報でも聞き出さなければ……
「ええ、まあ。ところであなたは、ただの使い捨ての下っ端ですか?」
「んだとてめえ。この俺が下っ端だと?」
よし、挑発に乗ってきてくれた。
「そうです。だって、俺が何を調べているか聞かされていないんでしょう? その程度の情報しか聞かされていないただの駒でしかない」
「この……クソガキがあ!」
今までより速い!
速さの緩急に、大剣では受けきれずに少しだけ短剣が腕を掠める。
短剣が掠ったと同時に、俺の体に違和感が出始める。
っ!? 感覚がない!
剣を握っているのに、その握っている手の感触が消えた。
「チッ、ハズレか」
これは「短剣術」の奥義か……
______
短剣術
Lv10:
切り付けた対象の五感を一つランダムに奪う。再度切りつけることで、奪う五感が再抽選される。
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やられた……だけど視覚や聴覚じゃなくてよかった。
あの速度の相手が見えなくなるのは厄介だし、相手からの情報が聞き取れなくなるのもまずい。
これ以上は攻撃を受けるわけにもいかなくなった。
「俺は確かに下っ端かもしれねえ。指示を出してくるやつすら知らねえよ。だけどよぉルーキー、俺の役目は最後通告なんだぜぇ」
「最後通告?」
「次はねえってことだ。確かにてめえが何を探ってるのか知らねえが、これ以上探るなら上はお前に容赦しない。次お前の目の前に現れるのは、お前を殺しにくるやつだ。しかも一人じゃねえ、複数で確実にお前を仕留めにくるぜぇ?」
男は短剣をクルクルと回していじりながら、嗜虐的な笑みを浮かべている。
随分とベラベラと喋ってくれた。
こいつはやはりただの駒、だけど次来る奴等を返り討ちにすればいいって事だ。
来るのを待つしかないのはもどかしいが、次に接触して来るやつは殺しにくる。
つまりはそれなりの手練れ、尚且つ父さんのことを隠蔽する奴とは密接に繋がっていないと難しい。
暗殺なんて、それなりに信用できる者でないと、実行はできても隠蔽は難易度が高いはず。
今の時代、どこで誰が見ているかわからないし、いつ情報をネットにリークされてもおかしくない。
殺しにくるというのなら、それなりの心構えはしておこう。
さて、あとは俺が試験に合格するだけ。
こいつをぶん殴って、観客の誰が見ても明らかな勝利を掴むだけ。
そうすればこいつが合格を宣言せずとも、俺はC級に上がれる。
「そうですか……それで、あなたが知っていることはもうありませんか?」
「クハハ! 強がんなよルーキー! 弱っちいなりにはよくやった方だと思うぜぇ?」
気が変わった。
もう今回はスキルを隠さなくていいだろう。
パーティーの勧誘やらマスコミにダンジョン研究者、正直面倒な対応が増えるかもしれない。
だけどしょうがない、父さんの事以外は俺にとっては些細なことだ。
俺は大剣を「送還」で仕舞う。
無手になった俺を見て、下っ端の男は再び笑い出す。
「ハハハ! 心が折れちまったかぁ? だけど俺は、潔いのは嫌いじゃないぜぇ」
「
俺は静かに龍気を纏う。
体から溢れ出す膨大な量の龍気、澄み渡る空の様な蒼色のオーラが全身を包み込み、黄金の小さな龍達が俺の周りを泳いでいる。
大気は震え、やがて龍の咆哮に変わる。
会場の興奮は絶頂に達し、いたる所から歓声が上がっている様だけど、俺には聞き取れなかった。
「て、てめえ……なんだそりゃ。ユニーク持ちだったのか!? 聞いてねえぞ!」
「最後通告です。早く合格を宣言してください」
「っ!? なめんじゃねえクソガキがあああ!」
試験官は俺に向かって踏み込んできている。
遅いな……
「龍纏」は肉体の全てが強化されている。
思考、反射神経、五感。
全てが研ぎ澄まされているのを感じる。
俺はゆっくりと男が迫って来るのを観察し、最適な距離とタイミングで踏み込み、拳を振り抜く。
加速した思考の中で、俺の拳がゆっくりと男の顔にめり込んでいくのが見える。
――ゴキ
神速の一撃が顔面に命中し、男は錐揉み状に回転しながら闘技場の壁に凄まじい速度で衝突する。
――ズドーン!
試験終了のブザーが鳴り響き、俺は「龍纏」を解除する。
しばらくの静寂の後、闘技場を揺らすほどの歓声が鳴り響いた。
ふぅ……なんとかなったかな?
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