第20話 制覇

 攻略は順調に進み、七階層までやってきた。


 ここまでで俺のレベルは29に上がり、あと1レベルで30だ。


 今まで通りならば、何かしらの機能が増えるタイミングでもある。

 前回は「武装ガチャ」という、俺にはあまり必要のない能力だったので今回は期待している。


 七階層の森を歩いていると、オークの集団が歩いている。


 まだ気付かれてない。

 隠密系の魔法を試してみるか……


 姿を隠したりする魔法は光と闇の魔法に存在する。

「光魔法」レベル5のミラージュと「闇魔法」レベル5のシャドウウォークがある。


 どちらかといえばシャドウウォークの方が、気配や魔力もある程度遮断するため優秀だ。

 逆にミラージュの方は気配は消せないが、姿を完全に不可視にできる。

 明るい今のフィールドならミラージュが最適かな。


「ミラージュ」


 俺の体は光を透過し、透明になる。


 正面から4体のオークに近づいていくが、気付かれている様子はない。


 そのまま大剣を構えてゆっくりと近づき、密集している2体のオークを両断する。


「「ブモー!」」


 2体を倒したことで、残りの2体が戦闘体勢に入る。


 しかし姿が見えないためか、キョロキョロと俺を探している。


 ミラージュは高ランクだとあまり使えないみたいだけど、D級なら十分だな。


 俺はそのまま残りの2体に近づき、立て続けに大剣で両断していく。


 『レベルが上昇しました』

 『レベル30到達を確認。魔石分解・合成が解放されます』


 これは……いや、とにかく詳細を確認してみるか。


 ______

 魔石分解:魔石を一つ下のランクに分解できる。

 例:D級1個→E級10個、E級10個→F級100個。

 ただし分解効率はレベルによって変動する。現在30%。

 ______


 ______

 魔石合成:魔石を一つ上のランクに合成できる。

 例:F級10個→E級1個

 変換効率は一定

 ______


 まじかよ、俺の一ヶ月間の努力は……

 これならレベルを上げた方がよ良かったかもしれない。


 少し落ち込みかけたが、冷静になれば素晴らしい能力だ。


 まずは分解だが、これは非常にありがたい。

 

 F級魔石は現状一番使用するランクの魔石だが、ダンジョンのランクが上がるほど集まりにくくなる。


 それはまあ当然といえば当然、A級やS級ダンジョンでF級のゴブリンが大量に出てきても困るからね。

 俺の場合はそこまで困らないけど……。


 だけど俺がS級になった時、まだF級の魔石が必要だろうか?

 おそらくその頃には、俺のスキルは全てレベルが最大になっていると思う。

 だとしたらいくらガチャを引いても意味はない、オーブがインベントリに溜まっていく一方だ。


 だからこその魔石合成なのだろう。

 使わなくなった魔石を変換すれば、無駄がなくなる。


 そして変換効率は30%と書いてあるが、これはどういう意味だろう?

 俺のレベルが30だから30%というのはわかる。


 まあ少し試してみようか。


 俺は魔石分解を起動し、余っているE級魔石を1個だけ分解してみる。

 するとE級魔石は、F級3個に分解された。


 なるほど、変換効率が100%の状態だとこれが10個になるという感じかな?


 つまり俺のレベルが50になれば、E級1個でF級が5個になり、レベル100になればE級1個がF級10個になるということか。


 ということは今分解するよりも、先にレベルを上げてしまった方が効率がいいのか。


 スキルレベルは今の所十分に思える。

 C級ダンジョンで様子を見てからでもよさそうだな。


 


 その後も俺はいろいろなスキルを試しながら順調に攻略を続け、ついに第10階層のボス部屋まで到達した。


 あれからレベルは32まで上がり、リトスやディーンも順調にレベルを上げている。


 時刻はもう18時を過ぎている。

 さっさと討伐して家に帰ろう。


 ボス部屋の扉を開け中に入ると、オークやホブゴブリンが20体ほど出現する。


 龍気もかなり溜まっているし、「龍剣術」を試していきたい。


 俺は大剣を召喚し、魔纏を発動する。


 腰を落とし、剣を水平にして構えて龍気を込める。


 剣は龍気をまとい、蒼く輝いていく。

 龍気は込める量が多いほど、発動までに多少の時間がかかる。

 

 オークとホブゴブリンの集団が広がりながらこちらに向かってくる。


龍燕斬りゅうえんざん!」


 大剣を横薙ぎに振り抜くと、刀身から三日月型の巨大な龍気の斬撃が放たれる。


 斬撃は超高速で飛翔し、大剣を振り切るのとほぼ同時に右端の集団に着弾する。

 

 俺は連続で龍燕斬を発動し、残りのオークめがけて剣を振る。


 たった二発の斬撃で、20体いた魔物の集団は漏れ無く両断された。


 使用した龍気は4000、最速で放てるように最低限の龍気だけで発動した。

 

 訓練すればもっと早く龍気を込められるようになるかな?

 まあ鍛錬するほど龍気が余っているわけじゃないし、今後龍気を溜め易くするスキルが手に入ればいいんだけど。


 俺は散らばった魔石を回収し、ボス討伐報酬を確認する。


 今回のボスドロップは「結界石」だった。

 拳大の灰色の石で、5メートル四方の結界を張れるマジックアイテム。

 売ればそこそこの値段だけど、C級以降で野営に必要になるから持っておこう。


 俺は手に入れたアイテムをインベントリにしまい、ダンジョンから帰還する。


 これであとD級ダンジョンを二つ攻略すれば、C級に上がることができる。


 


 そして翌日、俺は池袋周辺にもう一つあるD級ダンジョンにやってきた。

 今回は獣型の魔物が多く出現し、全フィールドが深い森に覆われたダンジョン。


 出てくる魔物の種類は多種多様。

 F級のホーンラビットに始まり、D級ではボア、毒を持ったキラースネークが出てくる。

 

 一番厄介なのはD級のバレットバードだろう。

 弾丸の速度で飛んできて、鋭いくちばしで貫こうとしてくる。

 体も小さいため、大剣を使う俺では相性が悪い。


 だけど一見厄介なこいつ、実は攻略法が確立されていたりする。

 そのために少しだけ「武装ガチャ」を回す事になったけど……

 

 初見の魔物ばかりできついかもしれないが、なんとか今日で攻略したい。




 気合を入れて先に進み、なんとか5階層までこれた。


 ここまでは魔物を無視して最短でやってきた。

 第5階層からD級の出現率が上がり、バレットバードも出現するようになる。

 無視して先を進むのにも限界がある。

 ずっと走ってなきゃいけないからね。


「気配感知」を発動しながら森の中を進んでいると、数体の魔物がこちらに高速で近づいているのを感知する。

「気配感知」の距離は現在は最大50メートルまで探れる。

 森林フィールドは障害物が多いため、正確に探れるのは30メートルほど。


 高速でこちらに接近してくるのはおそらくバレットバードだ。


「召喚!」

 

 俺は気配がする方向に向き直り、左手に大盾を召喚し、右手に短剣を構える。


 そして「盾術」を発動。


「挑発!」

 

 すると一斉に鳥たちが、高速で大盾に突進してくる。


「「「「クエー!」」」」


 バレットバードの嘴が大盾に突き刺さり、動きを止める。


 俺は突き刺さったまま動かないバレットバードを、一体ずつ短剣で切り裂いていく。


 これが通称「バレットキャッチ」と呼ばれているこいつの攻略法だ。


 まあなんというか……少しかわいそうだよね。


 


 俺はその後もバレットバードを狩りながら進んでいき、19時にようやくボス部屋にたどり着いた。


 ここにくるまでに一通りの魔物とは戦った。

 ボアは突進が強力だけど、真横に避けながら大剣を振ることで簡単に討伐できた。


 キラースネークに関しては動きが遅いため、全てスルーしてきた。


 ボス部屋に入ると、今までとは違い所々に木が生えている。


 中央にボアが三体、そして木々の上にはチラホラとバレットバードが見える。


 ここはソロでクリアするようなダンジョンではないが、俺の豊富なスキルなら可能になる。


 まずはバレットバードの処理が優先。


 大盾を構え、「挑発」を発動する。


 ボアもこちらに突進してくるが、ファイアーウォールで分断する。


 大盾に突き刺さった7体のバレットバードを素早く短剣で攻撃し、魔石に変える。


 素早く大盾と短剣をしまい、大剣を構えて「龍剣術」を発動。

 

「龍燕斬!」


 ギリギリ2体が斬撃の餌食となり、両断される。


 そして最後の一体、ボアの突進をギリギリで避け、通り過ぎ流と同時に大剣を上段から叩き込む。


 胴体を切断されたボアは魔石を残して雲散する。


 ふぅ、なんとか攻略できたな。


 俺は魔石とボスドロップの銀のインゴットを回収し、急いでダンジョンを後にした。




***

あとがき


皆さんお待たせいたしました!

最近どうしても退屈な展開が続いてしまっていたと思います。

私の実力不足です。

次回以降はストーリーが動き出していきます。


次回は昇格試験で、2話後にようやくC級の眷属が登場します。

何が出て来るんでしょうか?(˙-˙ ٥)


お楽しみに〜

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