第18話 接触者
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少し短めです。
***
学校が始まってから5日が経った。
今日で午前中だけの授業は終わり、これで卒業式までほとんど登校することはない。
この2週間、毎日同じE級ダンジョンに潜って狩りを続けていた。
特に変わったことは起こらなかったが、一つだけ妙な噂が流れていた。
『E級ダンジョンで馬のような魔物が、走り回ってゴブリンを撥ね飛ばしている。その後ろを追いかける若い冒険者がいた』
うん……これは間違いなく俺だな。
多分天道さんにはバレていると思う。
協会の人間はダンジョンの入場記録が見れるし、一度電話がかかってきたけどそれとなく誤魔化しておいた。
F級の魔石は2000ほどまで溜まった。
まだまだ足りないけど、目的はもう一つある。
俺は同じダンジョンに毎日訪れている。
ダンジョンにいる時間も毎日同じだ。
そろそろ何者かが接触してきてもいい頃だけど、まだ現れていない。
うーん、当てが外れたかな?
ダンジョンデータベースを調べただけだと、圧力をかける程でも無いのか?
俺がデータベースで父さんについて調べたことがわかるということは、間違いなく協会の上層部に関係者がいるはず。
そうすると俺が毎日同じダンジョンに潜っていることもわかると思ったんだが。
まあ、魔石が貯まるまではE級に籠る予定だから、そのうち現れるだろう。
そうして俺はまた、E級ダンジョンに向かった。
俺がダンジョンに入場し第一層を歩いていると、3人組の探索者のパーティが声をかけてきた。
「ちょっとそこの、足だけ高級装備のお前」
足の装備はディーンのことだろう。
性能も見た目も、D級探索者が装備できるような物じゃない。
それはさておき、ついにきたか?
「はい? 何かようですか?」
そう言って振り向くと、3人のチンピラ探索者がいた。
いかにも素行の悪そうな見た目をしている。
「お前が天霧英人だな?」
「ええ、そうですけど。俺に何か用ですか?」
槍を肩に担いだ金髪の男が続ける。
「お前、これ以上首突っ込むと死ぬぜ?」
「これ以上ダンジョンには関わらない方が身のためだな」
「そうっす」
なるほど、今回は忠告か……
だけど現状俺にできることは少ない。
何がなんでもこいつらから情報引き出す!
「龍圧」
「っ!?」
「「ヒッ!?」」
龍圧を試してみたが、効果は絶大だった。
槍の男はガタガタと震え、取り巻きの二人は腰を抜かしている。
俺は恐慌状態になっている3人に質問する。
「あなたたちは何者で、どうして父さんの事を隠そうとするんですか?」
「お、俺たちは何も知らねえ!」
「そ、そうだ! 頼まれただけなんだよ!」
「ヒ〜!」
頼まれた?……そうか、くそっ! ただのメッセンジャーだったか。
俺は龍圧を解除して、もう一度質問する。
「誰に頼まれたんですか? そいつは今どこに?」
「本当に何も知らねんだ! 俺たちはさっき男に伝言を頼まれただけなんだ! 『これ以上探るな』と『探索者をやめろ』、この二つを伝えてこいって頼まれただけだ!」
取り巻きの二人に視線を向けると、首をブンブンと振っている。
「男は俺たちに伝言を依頼して、そのままどっかにいっちまった。そいつの名前も、どこに行けば会えるのかも知らねえんだ」
こいつらの後を追えばその男に会えると思ったけど無理そうだな。
「そうですか、もう何もなければさっさと行ってください」
俺がそう言うと、3人は走ってどこかへ行ってしまった。
はぁ、結局何も得られなかった……
だけどあちらは、俺に探索者を続けて欲しく無いらしい。
予定通り上を目指せば、また接触してくる可能性が高いってことか。
見知らぬ探索者を使ってきたと言うことは、まだ大きく動くまでも無いってことだろう。
ならば最速でS級を目指そう。
向こうが危機感を持つくらいの力を持てばいいだろう。
そうして俺は、第五層でいつも通り魔石を集めて帰宅した。
そして翌日から毎日朝から夕方まで魔石を集め続けて、気がつけば2月になっていた。
今日もE級ダンジョンで狩りをして、今家に帰ってきたところ。
魔石は予定通り6000を確保した。
______
インベントリ
魔石
・F級:6123個
・E級;1380個
・D級:78(+0)
______
これでスキルガチャを600連引くことができる。
龍系のスキルはこれまでで「龍圧」と「龍剣術」の二つだけ。
この600連でいくつ当たるかわからないけど、明日からは本格的にD級の攻略を再開する。
できれば攻略が楽になるスキルが当たれば嬉しい。
約一ヶ月ほE級に籠っていたので、昇格スピードは予定より大幅に遅れている。
ライカンスロープに遭遇してから3週間近く経つが、その間も御崎さんとは何度か連絡を取っている。
あちらの調査もほとんど進んでいないらしい。
生きた魔物は全国各地で現れ、討伐できる探索者がいない地域にはブレイバーズを派遣しているようだ。
目撃情報が増えすぎたため、つい先日メディアが取り上げていた。
その後もダンジョンからは出てきていないみたいだし、そこまで世間が騒ぐことはなかった。
一度討伐すれば現れないのもあると思う。
明日からはD級ダンジョンに潜る。
またイレギュラーが起こるかもしれない、気を引き締めていこう。
ガチャは600連も引いていたら時間がかかりそうだな。
いつもより早く起きることに決めて、俺は眠りについた。
***
SIDE:???
人間は哀れですねぇ……呑気なものです。
今こうしている間にも、ゆっくりと滅びに向かっていると言うのに……
さて……次のターゲットは彼女ですか。
天道レイナ、期待のお嬢さんみたいですが……彼女でしょうか?
少し様子を見させてもらいましょう。
なるほど……ただのユニーク持ちですか。
残念ですが、彼女はハズレのようですねぇ。
次の人物に行きましょうか……。
「そこのあなた、ずっと私をつけていたようだけど、何か用かしら?」
おや、私の隠密に気付きますか……これで二度目ですねぇ。
随分とユニークスキルを使いこなしているようです。
「これは申し訳ありません。あなたの剣技に、つい見惚れてしまいましてねぇ」
「変な格好ね、今どき手品師? 目障りよ、用がないなら消えてもらえるかしら?」
「辛辣ですねぇ、用は無くなりましたから、そう言わずとも消えて差し上げますよ。それでは、ごきげんよう」
今回もハズレでしたが、そのうち見つかるでしょう。
そうなれば後は、あの方達がお戻りになられるのを待つだけ。
ククク……楽しみですねぇ
彼らはどんな表情を見せてくれるでしょうか……
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