第17話 躍進への助走

 昼になり、母さんから持たせてもらった弁当を食べながら午前中を振り返る。


  ______

 インベントリ

 魔石

 ・F級:183個(+87)

 ・E級;556個(+42)

 ・D級:78(+0)

 ______


 午前中だけでF級87個、E級が42個集まった。

 ディーンのレベルも二つあがり、13になっている。

 

 効率は格段に上がったが、ずっと全力疾走しているのは流石にきつい。

 途中からは龍馬を一体新しく召喚して龍装していた。


 午後は自分の訓練のためにも、自分で狩る時間も作るか。


 昼休憩を終えた俺は、再びディーンによるローラー作戦を再開した。


「午後も頼むぞディーン」


「ヒヒーン!」


 2時間ほどディーンでの狩りを続け、その後は自分で戦闘して魔石を稼いだ。


 E級ダンジョンの魔物は大体のステータスが1000に届かないくらいなので、あまり訓練にはならなかった。

 レベルも1しか上がらなかったし、経験値の効率は悪いな。


 探索を終えた俺は、ボスをサクッと倒して地上に帰還した。




 地上に戻った俺は、E級魔石を換金しに協会支部に寄った。


「美澄さん。換金をお願いします」


 俺は今日手に入れたE級魔石100個を渡す。

 ボスドロップは下級ポーションだったため、自分で持っておくことにした。

 何が起こるか分からないからな。


「すごいですね! 1日でこれだけの魔石を稼ぐなんて」


「まあ、いいスキルを手に入れましたからね」


「それではこちらが今回の代金になります。シーカーリングの方に送金しておきますね」


「ありがとうございます」


 E級は一個1000円で取引されるため、今回の換金額は10万になった。

 C級やB級で通用する防具を買うには、まだまだ全然足りない。

 

 今日は1月3日の火曜日、来週の月曜日からは1週間、午前中だけ学校の授業がある。

 来週は午後しか潜れないから、今週は頑張らないとな。

 

 その後帰宅した俺は、ベッドに入るとすぐに眠ってしまった。




 そしてあっという間に時間は過ぎ、1月9日の月曜日になった。

 

 今日から冬休みが明け、授業が始まる。


 俺は三年生だから、授業があるのは今週の午前だけだ。

 俺以外のほとんどは、大学受験が控えている。


 俺もステータスが無いままだったら、みんなと同じように受験で忙しかっただろう。


 昨日までで魔石はかなり溜まった。

 

 ______

 インベントリ

 魔石

 ・F級:1207個(+1024)

 ・E級;488個(+32)

 ・D級:78(+0)

 ______


 E級は毎回100個を換金して、初日と合わせて60万円になった。


 F級に関してはかなり溜まっているように見えるが、実際には足りない。


 ガチャから出てくるスキルは約40個。


 スキルを一つ、レベル1から10にするには、同じスキルのオーブが55個必要になる。

 そしてガチャの性質上、一つのスキルを狙うことはできない。

 今の所均等に出ているので、特に「剣術」が出やすいということはない。 


 例えば「剣術」のスキルオーブが55手に入った時は、他のスキルも55個前後のオーブが手に入っている状態になる。


 確定チケットがあるけど、それでもレベル9から10に上げる時は、チケットを10枚消費しないといけない。


 つまり「55×40」で2200回ガチャを引かないといけない。

 F級魔石10個で一回引けるから、最終的に必要になるF級魔石は22000個となる。


 まだ10分の1すら貯まっていない。


 流石に2万個の魔石が貯めるまで、E級で作業のように魔物を狩るのは辛い。


 ひとまずは大体のスキルレベルが5になる程度で切り上げるつもりだ。


 とりあえずは6000個まで溜まったら、ガチャを引いてD級を攻略しよう。


 鍛錬を終え、今後の方針を固めた俺は、久しぶりの学校に登校した。




 俺が通う高校は普通の高校だ。

 それでも探索者志望の生徒はちらほらいるけど、どの生徒も探索者高校を受けて落ちた下級ジョブが多い。


 下級ジョブはパーテーを組んでも安全に攻略できるのはC級が限界。

 まあ、ユニークスキルを持っていれば話は変わってくるけど。


 ユニークスキルの発現者は非常に少ない。

 1億人に5人とかのレベルらしい。


 しかも厄介というか残念なのは、ジョブのレア度に関係なく平等に発現することだろう。

 それこそジョブがない者も発現する。


 だからこそ、ユニークジョブとユニークスキルを同時に持っていた父さんは相当運がいい。

 最強の探索者と呼ばれるのも頷ける。


 現在ではアメリカの「剣聖」が唯一、ユニークスキルとユニークジョブを同時に持つ人物だ。

 レオナルド・アルティリオ、通称「レオ様」。

 年齢も20歳と若く、世界的に人気があるみたいだ。


 日本でも有名なユニークスキル持ちがいる。

 俺の幼馴染の天道レイナだ。

「剣豪」の上級ジョブとユニークスキルを持っていて、今一番S級に近いと評判だ。


 考え事をしていたら、いつの間にか教室についた。


 自分の席に向かっていると、俺の唯一の友達が声をかけてくる。


「よう英人! 久しぶりだな」


「おはよう修二しゅうじ


 茶色に髪を染めて、いかにも女遊びをしていそうな顔立ちのやつだ。


「相変わらずトレーニングばっかしてるのか? たまには遊ぶのもいいもんだぞ?」


「まあそんなところ、最近はダンジョンにも潜るようになったよ」


「お!? ついにステータス手に入れたのか? よかったなあ英人!」


 そう言って背中をバシバシと叩いてくる。

 これが修二なりの祝い方なんだろう、多分。


「てことは卒業したらそのまま探索者になるのか?」


「ああ、そのつもりだよ」


「頑張れよ! そして俺にレイナちゃんを紹介してくれよな!」


 レイナはメディアで注目されているのもそうだが、アイドル並みの綺麗な顔立ちのおかげで若い世代の人気は絶大だ。


「まあ……そのうちな」


 修二は変わったやつだ。


 大抵の人間はもれなく、俺が探索者になると言ったら馬鹿にするか、お前には無理だと言ってくる。


 探索者という職業は人気がある。

 高ランクになれば芸能人のような扱いを受けるし、何よりも報酬が他の職業とは比較にならない。


 そんな皆が成りたい職業だが、ステータスが発現した段階でその将来性が分かってしまう。


 最低でも上級ジョブでないと、皆が思い描くような探索者にはなれない。


 そして自分には才能がないからと夢を諦めた者が多いこの学校で、俺のようなステータスすら無い奴が探索者になると言った。

 周りは当然気に食わないだろうな。


 だけどその中で唯一、修二だけは俺を笑うことはなかった。

 

『お前には才能がないから無理だ』

『現実を見なさい』

『とりあえず大学には進学しておきなさい』

 

 担任や他の先生、生徒に散々言われてきた。


 だけど俺は全て無視した。

 俺の人生だ、部外者は黙って見ていればいい。

 

 今は落ち着いたけど、中学の時はそれはもう毎日イライラしていた自覚がある。


 まあ、毎日授業が終わり次第帰宅してトレーニングをしていたから。

 今では修二くらいしか話しかけてこない。

  

  

 午前の授業はあっという間に終わり、午後からは大学受験組だけに特別講習がある。


 俺は急いで家に戻り、支度をしてダンジョンに向かった。


 午後の少ない時間しか潜れなかったので、F級は100個ほどしか集められなかった。


 午前が使えないとこんなものか……。


 今週だけ我慢するしかないな。


 そうして今日も、ベッドに潜った途端に泥のように眠った。

 




 ***

 あとがき

 1000PVを突破しました!

 多くの読者様に読んでいただけて本当に嬉しいです。


 第2章はまだまだこれからですが、徐々に点と点が繋がっていきます。

 

 早く最終回をお届けしたい気持ちもありますが、ゆっくりやっていきます。

 年内には完結すると思います。早くて夏頃かな?


 これからもよろしくお願いします!。

                      ナガト


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