第16話 馬は魔を祓う

 翌日、いつもの様に鍛錬をしながら今後について考えていた。

 

 昨日でレベルが五つ上がり、25になっている。

 

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 名前 天霧 英人

 Lv 25 

 HP:2600/2600(+500)

 MP :2600/2600(+500)

 龍気:1700


 筋力 :2700(+500)

 耐久 :2700(+500)

 器用 :2600(+500)

 敏捷 :2600(+500)

 知力 :2700(+500)

 ______


 D級で出現する魔物のレベルは大体20〜35。

 

 今まで通りだったら、浅い階層でレベルを30程まで上げれば攻略には十分だった。

 

 だけど昨日みたいなイレギュラーが起こることを考えたら、少し物足りないレベルだろう。

 魔物のレベルをこちらが超えると、途端に経験値が入りづらくなる。


 効率的にはやっぱりスキルレベルを上げるのと、リトスやディーンのレベル上げだろうか。


 ______

 名前:リトス

 種族:レインボージュエルドラゴン

 Lv33

 HP:183

 MP:183

 筋力:183

 耐久:183

 器用:183

 敏捷:183

 知力:183

 ______

 

 ______

 名前:ディーン

 種族:天龍馬

 Lv11 

 HP:2000 (+700)

 MP:400 (+140)

 筋力:2000 (+700)

 耐久:2000 (+700)

 器用:400 (+140)

 敏捷:4000(+1400)

 知力:400 (+140)

 ______


 昨日の戦闘で2体ともレベルがかなり上がった。


 リトスのバフが現在83%上昇。

 ディーンが敏捷4000上昇。


 この二つを合わせて、戦闘中の俺のステータスはこうなる。


 ______

 名前 天霧 英人

 Lv 25 

 HP:4758/4758(+2158)

 MP :4758/4758(+2158)

 龍気:1700


 筋力 :4941(+2241)

 耐久 :4941(+2241)

 器用 :4758(+2158)

 敏捷 :8758(+2158+4000)

 知力 :4941(+2241)

 ______


 この数値に、さらに「魔纏」による20%上昇がかかる。

 

 これは下級ジョブ「剣士」の100レベル相当の数値になる。

 下級ジョブは、パーティーでC級を攻略するのが限界と言われている。


 敏捷に関しては上級ジョブ「暗殺者」の最大レベルと同じくらいの数値だ。

 だけど「思考加速」がレベル1なせいで、最大までスピードを出すと思考が追いつかなくなる。


 現状ステータス面だけであれば、D級ダンジョンを攻略するには安全圏だ。

 まあこのくらいのステータスを得ている他の探索者は、もれなくスキルも最大レベルが増えているはずだけど。


 俺の場合スキルに関しては、並の探索者よりもかなりレベルが低い。

 

 ひとまずE級ダンジョンで魔石集めに専念しようかな?

 他の龍のスキルも、コスパがいいやつが手に入れば御の字だ。


 とりあえずのステータスやスキルについての方針は固まった。


 あとは、俺の目的についてだが……。


 生きた魔物については、父さんとは関係ない様に思える。


 父さんがダンジョンで、超高ランクの生きた魔物に遭遇した可能性を考えた。

 だけど生きた魔物が最初に目撃されたのは、7年前のアメリカらしい。

 その後中国やフランス、イギリス、ロシアなどに現れたという。

 

 父さんがいなくなったのは10年前、俺が8歳の時だ。

 微妙に時期が合わない。

 この件はブレイバーズに任せておいてもいいだろう。


 父さんに関しての手がかりはほとんどない。


 俺はこのままダンジョンを攻略していればいいのだろうか?

 ランクを上げて協会の上層部にコネクションを作れば、何かしら情報があると思っていた。


 しかし昨日、遺品を回収している最中に二人になったタイミングで、御崎さんに思い切って尋ねてみた。


『御崎さん、俺の父さんについて何か知っていることはありませんか?』


『君の父親といえば、大剣の英雄だよね? どうしてそんなことを? 君の方が詳しいだろう?』


『父さんがどこで死んだのか、俺も知らないんです』


『たしか……海外のS級ダンジョンで事故にあったんだよね? 確かに彼の死は不自然な点が多いけど、僕も君以上の情報は持ってないよ』


『そうですか……』


『僕の方でも調べてみるよ、何か分かれば君に連絡するよ』


『ありがとうございます』


 御崎さんがS級になったのは父さんが居なくなった後だ。

 知り合いでもなかったみたいだし。

 天道支部長でも調べられないのだから、知らなくても無理もないかもしれない。

 

 協会支部長もS級探索者も知らないとなると、ダンジョン関係以外のルートを探した方がいいのだろうか?

 

 唯一の情報源は、俺に接触してくると思われる人物だけ。

 父さんについて、何かしらを隠そうとしている人物。


 接触してきた場合、全力で情報を聞き出す他ない。

 

 他に情報源がない今、接触してくる人物だけが頼りだ。


 どんなやつが来てもいいように準備しておこう。


 とりあえずの方針を決めた俺は、E級ダンジョンに向かう準備を始める。


 庭の端にある物置を開け、ボロボロになった防具の代わりを物色する。


 やっぱりいい装備は置いてないか……。


 父さんがS級ダンジョンで使っていた様な装備は、おそらくマジックアイテムで持ち歩いていたのだろう。

 物置には初心者用の革鎧しか置かれていなかった。

 俺の体格は父さんとほぼ同じなので、サイズは問題ない。


 そろそろ装備を自分で買うべきだろうか?


 その場合、魔石をある程度売却するか。

 もしくはD級ダンジョンで宝箱を探すしかない。


 ひとまずF級はガチャに回して、E級は売却するかな。




 準備を終えた俺は、E級ダンジョンに来ていた。

 しばらく魔石集めをするのは、ゴブリンがメインのダンジョンに決めた。


 蟲系は毒や飛行型の魔物が出るし、アンデット系は光魔法を使わないと効率が落ちる。

 ゴブリンは無難な選択だろう。


 ダンジョンに入場し、最下層の五階層にやってきた。

 この階層が最も複数の敵が出やすいし、帰りはボスを倒して転移魔法陣ですぐに地上に出られる。


 ボス部屋のボスは、入場した探索者が転移魔法陣で帰還してすぐに、次のボスがリスポーンする。

 中に探索者がいる場合、ボス部屋に入ることはできない。

 そのため討伐したあとは速やかに帰還して、ボス部屋を開けるのがマナーだ。


 ボス部屋付近は順番待ちの探索者が多いため、離れたところで狩りをすることにした。

 今日はちょっと試したいことがあるからね。


 ボス部屋から離れたところで、ディーンの龍装を解除する。


「ヒヒーン!」

 

 召喚されたディーンは、頭を俺にすりすりして甘えてくる。


「今日はディーンにやってもらいたいことがあるんだ」


 首の部分を撫でながら、ディーンに話しかける。 


「できるだけゴブリンをね飛ばしながら、この階層を全力で走りまわってくれ。できるかい?」


「ヒヒーン!」


(任せろ!)と、力強く返事をしてくれる。


 今回やるのはローラー作戦だ。

 ディーンが疾走してゴブリンを魔石に変え、その後ろを俺が魔石を回収しながらついていく。


 龍装を解除しても、少しだけ俺の方が敏捷が高いため、着いていくのは十分可能だ。


「じゃあディーン。初めてくれ!」


「ヒヒーン!」

 

 ディーンが雄叫びを上げて走り出す。


 前方からは、ゴブリンの声と衝突音が聞こえてくる。


「「「ギャギャ」」」


 ――ドン!


「ギャギャ」


 ――グサッ


 俺はディーンの後を追いながら、魔石を回収する。


「いいぞディーン! その調子で頼む!」


「ヒッヒーン!」


 ディーンは褒められて嬉しかったのか、嬉々として魔物を撥ねていく。


 よしよし、これで魔力を使わないし、かつハイスピードで魔石が溜まっている。


 その後も昼頃まで、休憩を挟みつつ狩りを続けた。

 

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