第3話 探索者登録

 ステータスの確認を終えた俺は、まずは探索者登録をするために、池袋にある探索者協会にやってきていた。


 探索者協会池袋支部、ここは俺の家から一番近い協会支部だ。


 ここ池袋は、近場に初心者用のF級ダンジョンから、中級者用のC級ダンジョンまで多くダンジョンが存在する。


 ゆえに東京に住んでいる探索者の初心者は、ここ池袋で活動する者が多いらしい。


 自動ドアをくぐり協会内に入ると、多くの探索者で賑わっている。


 学生服を着た探索者が多い印象だ。


 探索者育成高校というものが存在する。ジョブを得た探索者志望の者は大体がこの学校に入学する。

 俺はステータスがなかったのでそもそも受験資格がなかった。


 人混みを抜けて、空いている窓口に向かう。

 窓口に近づくと、受付嬢が声をかけてくる。


「いらっしゃいませ!本日はどのようなご用件でしょうか?」


「探索者登録をお願いします」


 受付嬢は顔で採用されていると揶揄されるほどに美人が多いと言われているが、どうやら事実なようだ。


「かしこまりました。それではそちらの画面に必要事項を入力してください」


 カウンター横に設置されている画面に、必要事項を入力していく。


 入力するものは、「名前」や「年齢」などの他に「ジョブ」などの項目がある。


 俺のジョブはなんだろうか?。ステータスには記載されていないし、とりあえず「なし」でいいか。


「スキル」の欄は「剣術」と強化のスキル3個、耐性スキルを2つだけ入力する。


 ジョブ無しが得られる初期スキルポイントは6なので、レベル1のスキル6個が最初に習得できるスキルとなる。


「入力終わりました」


「ありがとうございます。虚偽の申告を防止するために、鑑定させてもらいますがよろしいでしょうか?」


(っ!?)


 以前探索者登録できなかったことを思い出した。


 当時はステータスがなかったのもそうだが、S級探索者の天霧大吾あまぎり だいごの息子はステータスが開花していないと、少しだけ噂になったというのもある。


 中学の同じクラスで「鑑定士」ジョブを発現したやつが俺を鑑定したせいでそうなったんだけど……


 いやそんなことより、「龍気」やら「スキルガチャ」やら、未確認っぽいスキルが盛りだくさんだ。


 あれこれ聞かれたら少し面倒だな……だけどここで断るわけにもいかないか。

 

「ええもちろん……どうぞ」


「それでは見させて頂きただきますね、『鑑定』」


 受付嬢が鑑定スキルを発動させ、俺のステータスを見ようとする。


「あら?えっと……天霧さん?スキルの項目だけが見えないのですが、鑑定阻害のスキルを習得しましたか?」


(どういうことだ?鑑定阻害は持ってないはずなんだが)


 というか既にスキルを6個入力してしまったために、鑑定阻害のスキルを持っているという話は通じない。


 どうしよう……そうだ!

 

「えっと実は……ユニークスキルのせいじゃないかと……」


 ユニークスキルのせいで鑑定できないというのは意外と的外れでもないんじゃないか?。ステータスのどこにも鑑定を阻害する様なものはなかったし。


 ユニークスキルとは、ステータスが開花した時にごく稀に発現することがある。


 ユニークスキルは強力で、切り札になる。発現したもののほとんどが秘匿するため、登録時は自己申告でいいという決まりがある。鑑定をした受付嬢も、守秘義務で口外禁止となる。


「ユニークスキルの発現者でしたか、このことは守秘義務により、協会から情報が漏れることはありませんのでご安心ください」


「ありがとうございます。助かります」


 ひとまずなんとかなったか……


「続いて探索者証発行までに、探索者の規定について説明させていただきます」




 一通り話を聞いて、頭の中で整理する。


 まず探索者ランクは、F級、E級と続き、一番上がS級となる。


 ランクを上げるには、F級ダンジョンを一つ攻略することでE級になる。以降は探索者ランクと同じ等級のダンジョンを三つ攻略することで次のランクに上がる。


 探索者ランクより上のダンジョンへは立ち入ることができない。


 探索者ランクは個人ランクとパーティランクがある。パーティランクがBであれば、個人ランクがC級でもB級ダンジョンに入場することができる。


 大事なことはこれくらいかな?


 ひとまずソロで活動する予定だから、F級を攻略したあとは、三つずつダンジョンを攻略していくことになる。


「こちら探索者専用の端末になります、探索者証も兼ねていますので紛失には十分にお気をつけください」


 そう言って渡されたものは、腕輪型の機械端末だった。


 これは探索者が使うスマホの様なもので、通称「シーカーリング」と呼ばれている。


「シーカーリング」はランクごとに素材に使われる金属が変わる。F級は銅で、赤褐色の見た目をしている。S級は確かオリハルコンが使われており、耐久もかなりのものになる。


「以上で登録は終了になります。ダンジョンに潜る際は、入り口に設置されている入場ゲートに端末をかざしてください」


「わかりました。ありがとうございます」

 



 探索者登録を済ませた俺は協会内に置いてあるソファに座り、先ほど受け取った「シーカーリング」を起動する。これは便利な機能がたくさんあるが、これを手に入れるために探索者になったと言っても過言ではない。


「シーカーリング」に存在する機能の一つに、「ダンジョンデータベース」というシステムがある。


 このシステムは、ダンジョンに関するあらゆる情報が載っている。各ダンジョンで出現する魔物や、内部の構造、魔物のステータスやボスの情報まで載っている。


 俺の目的は父さんに関する情報だ。


 データベースには過去の上位探索者がいつどこのダンジョンを攻略したか、何人パーティで、メンバーのレベルは幾つだったか?、などの情報が載っている。


 これは過去の実力者を参考に、自分達に何が足りないかを確認するために使われる。また、現役で活動するものの情報は、本人が許可を出さない限り載る事はない。


 俺は「データベース」を起動し、検索欄に父さんの名前を入力する。


 検索結果を少し見てみたが、日本のダンジョンでの情報しか得ることはできず、海外のダンジョンの活動記録は存在しなかった。


 噂によると、高ランクにしかアクセスできない情報もあるらしい。


 やはり父さんについて探るにはランクを上げないとダメそうだな……


 ダンジョンについては全てが世間に公表されている訳ではない。


 やはり重要な情報を得るためには、協会の上の上層部や高ランク探索者とコネクションを作るしかないか。


 まだ時間はあるし、早速F級ダンジョンに向かうか。




 池袋支部から歩いて30分ほどでF級ダンジョン、通称初心者ダンジョンについた。


 入口のゲートでシーカーリングをかざし、ダンジョン内部に足を踏み入れる。


 このダンジョンは3階層までしかなく、出てくる魔物もF級に分類される魔物のみ。ちなみにS級ダンジョンは50階層もあるらしい。


 第1層は草原で、ゴブリンやスライムなどが出るようだ。


 入口付近は他の探索者が多いため、シーカーリングの「マップ」機能を起動する。

 腕輪からホログラムが出現し、階層の地図と現在位置が表示される。


 しばらく歩くき、探索者はまばらになったところで一匹のゴブリンが出現した。


 身長は120センチと小さい、ゴブリンは俺に気づいたようで、こちらに近づいてくる。


 彼我ひがの距離は5メートルほどで、すぐさま大剣を召喚し正眼に構える。


 「ギギャ!」


 ゴブリンは迷いなく正面から飛びかかってきた。


 俺は斜め前方に踏み込み、そのまま大剣を地面と並行に寝かせて一閃する。


 剣はなんの抵抗も感じずに、そのままゴブリンを上下に両断した。


 「ふう……まあこんなもんか」


 ゴブリンは魔石だけを残し、霧の様に雲散した。


 落ちている魔石を手に取って確認する。


 大体指の爪ほどの大きさのF級魔石、これ一つで部屋の明かりを1日中使えるエネルギーになるらしい。

 今はダンジョン出現から50年経ち、魔石から電力を生み出す技術が開発されていたりする。


 魔石をインベントリにしまおうとして気づく。


 どうやってしまうんだろう?


 一般にマジックバッグと呼ばれる収納の魔道具には、入れるための口があったりするんだけど、俺のスキルの場合どこだろうか?


 とりあえず俺は手のひらの魔石をインベントリにしまうイメージをしてみる。


 すると剣についている球体の部分が輝き、魔石は球体部分に吸い込まれるように消えていった。


 インベントリを確認してみると、スキルオーブの欄の下に魔石という項目が増えていた。

 

 ______

 インベントリ

 ・スキルオーブ

 ・魔石

 ______

 

 ひとまず今回の探索の目標はF級魔石100個、それでスキルガチャを引こう。ついでにどこまでレベルが上がるかも楽しみだ。


 俺は2階層を目指しながら歩き始めた。

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