幕間二
駄目だ、今年も不毛、いや不作の年のようだ。
これではどんどん我々の国は他国にIT技術に於いて置いて行かれる。
そう、もう追い抜かれるのを恐れる立場はとうの昔に過ぎてしまった。追いつかないと行けないのだ。我が国はまだビリでは無いが、このままではビリどころか蚊帳の外の立場になりかねない。
海外に目を向けていない井の中の蛙の人々は、まだ我が国は先進国であり、世界をリードしているなどと勘違いしている。SNSでも、ニュースサイトでも隣国の技術に対し、パクリだの技術が遅れているだの、フェイクニュースの内容を鵜呑みにして自国を称えている者が非常に多い。
海外に一度も出た事ない人間ほどそう口にする。
自動車なら我が国はまだまだトップの位置に居ると思っている勘違い野郎が沢山いるかもしれない。もちろん他社の企業の情報が全部耳に入るわけではないが、有る情報だけでも聞いた時には思わず納得と笑ってしまった。
何処の企業とは言わないし言えない、漏らしたら情報漏洩がどうのと叩き出す人種がいるからだ。だが、私が有る筋から聞いた話は衝撃的であり、そしてウンウンだからかと首肯してしまう内容だった。
車のデザインは今やほとんどの自動車メーカが、あるフランスのIT企業の開発したソフトウェアを採用している。ほぼ車の形をしたデフォルトのデザインから形を変形させ、そしてそれを我が社の新車のデザインと大手を振って発表しているのだから、お笑い種だ。自らいちから手掛けている企業なんていないという話だ。
日本のITデザインメーカーはどうしたというのだ?
いや、他企業を叩く資格など私にはないか……。
私も同じように、内閣府から今年の研究所の新しいアイディアはどうなっている。日本の研究所は何をやっているというのだ、と叱責を喰らったのだからな。
全く……
「手塚っ、次は何処の大学だ」
「主任、東京角詠夢工科大学になります。ちょうど今日発表会があるみたいです。しかし、そこまで偏差値は高くないので、期待はできないかと……」
「偏差値? そんなの関係ないだろう。私のIQを知ってるよな?」
「ええ、もちろん。主任は天才ですからね。確か、200越えでしたよね」
「そうだ、だがそんな頭でも世界を震撼させるアイディアは浮かばんのだ。何処かにいるかもしれない新しい発想の持ち主を探すのが、今我々が出来うる唯一の仕事だ」
IQが高いからなんだと言うんだ。
IQはあくまで数値、潜在能力を持つ人間はそんなものでは測ることなんてできやしない。
そういう人間を私は探すのだ。
来る日本の未来のため、もう我が国はこれを逃したら後がないのだ。
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