第9話 This project actually "Yomigaeri"


 そんなこんなで新メンバーを交え、新しい風の入る中、何故かまたプレゼンをやらされることとなったのだが、


 まさか、こんな出逢いと言うか、再会があるとは互いに想像もしていなかった。

 といっても、この時も俺はまだお互い初対面と思っていたのだけれども……。


 プレゼンの内容はと言うと、このIoPのプロジェクトそしてその為に今このチームが構築しようとしているAuto Variable Translational Genes"(自動可変翻訳遺伝子)について詳しく説明をした。



「ーーえーー以上が僕が考えましたIoPプロジェクトとなります。この事業は正式にはまた異なるのですが、一応大枠でヘルスケアのロボティクス部門に入ります。何か質問が有る方は?」


(よしっ、特に居ない。はあ〜〜コレでお昼休憩に入って……)


「あのぉーーしっ、白川プロジェクトリーダー……しっ質問、よろしいでしょうか?」



 うおっ、こんな娘も入って来たんだ。瞳をウルウルさせて、しかも声が終始上擦ってるし、かなり緊張してるっぽいな。


 

 なんか初々しい。(新しい風か……)



「おい、白川!? 白川!?」


「あっ、すいません。利根川主任。じゃあ、質問どうぞ、え〜〜と『まっ、丸山冬海で……す』」


「ふっ、冬海!?」


「はひぃぃぃぃい」



 しまった!? 妹の名前と同じだったので、つい声が。



「どうした白川? 知り合いか?」


「あっ、いや下の名前がですね」


「ああ、そう言えばお前の妹の名前も冬美ちゃんだったな」


「はい」



 いや、ちょっと待て。少し自分の位置から離れてるから、はっきりと分からなかったけど、この子ってば俺の妹に似てないか? 世の中自分と瓜二つの人間が3人は居るって何かの本で読んだ事が有るけど、名前だけじゃ無くて、顔まで冬美にソックリだなんて。


 まさか目の前に亡くした亡霊のように、妹にソックリな女の子が現れる何て思っても見なかった。俺は動揺していたが、このプロジェクトの真相を誰にも知られたく無かったので、気持ちを切り換える事にした。



「少し、取り乱して申し訳ない、では質問をどうぞ」


「あのですね。正式にはヘルスケア等の介護ロボットで無いと仰られてたんですが? 正式にはどの様な事業に相当するのでしょうか?」



 若干まだ少し声が上擦ってはいたが、先程よりも芯のある声で彼女は質問をして来た。しかも案外と真のつく質問だ。


(それにしても、顔だけじゃなくて声も似ているような)

(いや、それは多分きのせいだろう)


「実は……まだ公には発表していないのですが、一般にはヘルスケアとして謳っておりますが、実際はが目標のプロジェクトです」


「黄泉がえり? つまり……死者のですか?」



 彼女の的を得た返答に、一瞬他の新メンバーに動揺が伝播する。ザワついた空気が会議室を覆い始めた。既にベテランメンバーの中では当たり前に認識されている真のプロジェクトも、配属されたばかりの新人達に詳細無しでいきなりコアの部分を触れたのは不味かったかも知れない。



「非科学的です」


「「「科学技術分野なのに蘇りはおかしいのでは?」」」



 想定していない程の反論が出てしまった。ちゃんと詳細を伝えてから話すべきだったと後悔したが、もう後の祭りだ。俺は急いで訂正に入ろうとしたが、思ったよりも空気がやばい方向へと向かい始めていた。


 このプレゼンが失敗したら、結構まずいことになる。この一大プロジェクトはチーム一丸となって行動しないと、下手をすれば失敗を招くことになるかもしれない。



(どうする……俺)



「あの、皆さん。すいません、今は私が質問して居ます」



 ザワついた空気が一気に静まり返った。さすが俺の妹じゃ無かった、でも妹もそうだったけど、凄いなこの子も。さっきと違って、しっかり周りを見ている感じだ。彼女のお陰で、俺はさっきの蘇りのプロジェクトについて補足をする事が出来る。


 よし、せっかく彼女が作ってくれたチャンス。俺の想いを皆にしっかり伝えなければな。


「非現実的と先程思われたかも知れませんが、エタニティブレインで有名な企業で様の提供しているサービスを皆様はご存知かと思います。生前亡くなる前に移し替えた記憶を仮想世界へと移すことで、データとして生存させるテクノロジーサービスです。これは実際に世界でも認められている記憶移行の技術です。しかし、この3次元または4次元の世界で触れ合う事はもう肉体が無い為出来ません。それを今回……『IoPのロボットで復活させるって事ですね、白川先輩っ!?』先輩?……まあ、そうなります」


「すっ、すいません。プロジェクトリーダーなのに……先輩だなんて」


「いやっ、間違って無いから大丈夫。気にしないで」



 話を終えた瞬間会議室内で、地震の様な地鳴りが起きた。それはさっきとは違う物凄い空気と拍手の嵐が新人から贈られたものだった。気合いを入れるもの。感動して顔をクシャクシャにするものと様々だが、よりこのプロジェクトの成功へ向けての波が1つの方向へと流れて行くのを肌で感じた。


 さっきの""が提供するエタニティ・ブレインを利用している人が今回の新人にも居たらしく、是非完成したら自分の家族を蘇らせたいとぐっと俺の手を強く握って来た。


 これから仲間となる新人達とも確約がとれた、それはより妹の冬美と再会するための道が更に近付いていくことを意味している。


 

 待ってろーー冬美っ!?


 

 俺は利根川主任を見た。彼女の首肯見て、プレゼンも無事に終了したことが分かり、小さなガッツポーズをとると、会議室から出て行った。




◆◆◆



「冬海って、白川リーダーがタイプでしょう」


「ムゥ!? そんな事ないもん、うるさいなキヨは。そうじゃないって……」



 そう、彼女は名前と顔だけじゃ無く、もう1つ俺の冬美と同じ特徴を持っていた。でも、プロジェクトの成功に頭のベクトルが向いていたため、この時彼女の口癖にまだ俺は気付いてもいなかった。


 そして彼女があの本屋でぶつかった中学生の女の子だなんて、誰が気付くのだというのだろう。



to be continue ・・・・・・the younger sister plus

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