第6話  plan = " new year noodle "


 俺の予想通り、と言うか予想何てわざわざしなくとも、矢張り此処で年越し蕎麦を食べる事となった。


 国の協力もあってか、わざわざヘリで蕎麦粉と諸々の食材そして何とわざわざ老舗から蕎麦職人を贅沢にも2人も乗せて運んできての贅沢な年越し蕎麦がスタートした。


 俺の実家の年越しそばと言えば、そばの麺をスーパーで購入した物を、母ちゃんの自家製鰹だしのスープでそばと紅白の蒲鉾に、あとは餅菜を入れたシンプルな奴。蒲鉾もわざわざ蕎麦用に購入して来たものじゃなく、おせち料理を用意する際に余った残りの蒲鉾を使っていると言う質素なものだ。


 まあ、食べる順序的にはこっちの方が先何だけど、余りっちゃ余りなのだ。だとしても、美味いのは言うまでもない。家庭の味馬鹿と言われちゃあそれまでなのだが、母ちゃんの年越し蕎麦は特別だ。


 話をさっきの此処の年越しそばに戻すが、こっちのの場合なんだが、敢えて漢字にするにはちゃんと理由がある。それは普通の庶民が口にしても良いのかって程の素材がこの蕎麦にはふんだんに使用されているからだ。


 去年も食べた筈なのだが、まるで初めてお目見えするかの様に、入っている具材が半端ないのだ。政治家のお偉いさん方は、こう言うのをしょっちゅう食ってんのか?って初めて食べた時は、正直怒髪天ものだったが、そんな今の俺達も普通に食べており、文句が言えなくなってしまった。


 ちくしょー、上手く俺達を手懐けやがって。こうやって俺も一歩も二歩も確実に大人のイヤらしい階段を昇ってくんだな〜〜と思いつつも箸が止まらない。


 まあ、それよりもその政治家御用達の年越し蕎麦がどんな物なのか、せっかくだから説明させて貰うとだ、先ずは海老フライ、しかも中身は言わずと知れた伊勢で取れる奴だ。そして何故か牡蠣がはいっている、フライでは無く殻からワザワザ取り出した物を蒸し煮にしてから入れて有る。しかもかなりサイズが大きい。


 普通俺ら庶民が食べる牡蠣と言えば、火を通すと決まって縮んで小さくなり。それは親指何かよりも小さい。


 此処で出されるのは、なんと親指二つ分も有る。


 しかも口に入れた時に染み出す何とも濃厚でクリーミーな味わいには、自分の舌の下に水風船を入れてるんじゃあ無いかってくらいに唾液は溢れて止まらない。独特の暑さに口をハフハフと言わせながら、寒空の下で身体に染み渡っていく温かさは何とも言えない多幸感へと満たされる。


 その他有機野菜をくどくない程度に入れ、例えば人参とほうれん草が全体の味わいに自然の甘さの引き立て役を担い、これに海の塩で塩加減を整え、ダシには飛び魚が使われており、絶妙なスープを作り上げている。


 そんなんだから、普段なら残して捨てるお汁も、此処のは老舗の料亭で出されるスープへと昇華されている為、飲み干すだけの一択となる。


 蕎麦を食べ終えた全員が決まって口にするセリフそれは……


「「「今年こそはIoPをローンチさせるぞ!?」」」


 僕等にとっての年越し蕎麦は、新年への誓いのプログラムのコードみたいな役割を果たしていた。


 まあ、俺だけ実は心の中でもう1つの誓い『今年こそは妹+Plusを完成させる』と呟いて居たのだが、もちろん皆には内緒だ。


 コソコソ


 ん?


 「夏、ほんまお前は妹がすっきゃな~~」


 どうやら狂矢にはバレていたらしい……。

 まあいいや。



 ああ、早く現実空間で妹を抱きしめたい……。



to be continue ・・・・・・the younger sister plus

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