第5話 print("内閣府" + "記憶の園")


 しかし採用されたとは言え、予算と期限が設けられている。


 単純にいちから開発を進められる訳ではなく、多少の妥協も必要となる。


 自分では最初から何もかも構築させたいという気持ちがあるのだが。でも、それらに使用する材料費は今回協賛してくれた企業と国の内閣府からであって、自分らで捻出するものではない。ただ、国が出してくれると言っても日本は世界と違い研究費が物凄く小規模なのがネックだ。


 トップの研究費を捻出しているのは、言わずと知れたアメリカで、次に中国。そして我が日本の場合なのだが、実はもう十本の指にも入らないほど後退している。


 そのため優秀な学院生や教授なんかは、実はさっき挙げた上位国にオファーされ引き抜きをされている。オブラートに包んで言ったが、ようは買収だ。全てとは言わないが、優秀な人材が世界に流れて言ってしまっているのが世の現状なのだ。


 今回、俺の場合は大学3年生であり、また自分自身だけでプログラムが出来る訳ではなく、またこの理論について日本語で説明出来ても、英文で論文を発表出来るレベルでは無いため、そのような引き抜きは無かったと研究員の人から説明を受けた。



 しかし鮫肌の話からすると、実はそうでは無いらしい……。



 この技術が何かの間違いで話が漏れ出た場合、大学3年生の俺でもオファーは有るくらいスゲーー発想だとのこと。


 でも俺英語がって彼に言ったら、『何を言うてんねや、今のご時世同時通訳の機器やアプリすら有る、それにな外人かて日本語めっちゃ上手い人間もおるねんぞ』ってツッコミを入れられた。


 よくよく考えればわかることだが、確かにそうだと納得した。


 じゃあ、何で今回は他の国にこの話が漏れずに済んだんだって事何だけど、どうやら教授から俺の事を、さんって言う今回のプロジェクトチームの主任に予め提供していたみたいだ。



 って、それって情報漏洩してんじゃん(汗)



 まあ、そんな訳で限られた期間と研究費用で開発を行わないと行けない。


 ロボットのボディ自体は人型軍用戦闘兵器、英文の頭文字を取って、HCMW(Humanoid Military Combat Weapons)を採用。コードネームはロックオン・リベレーター。


 何か最初名前を聞いた時は俺が小学校時代に見た某漫画のキャラ名がチラ付いたけど、そこから採用されたわけでは無かった。名前の由来は単純に軍用兵器の為、目標を補足し、民間人を自由への解放を促す者の意味合いで付けられたということだ。


 因みに某アニメの主人公キャラの名前もちゃんと軍隊って意味合いが有り、使用するロボットは一機なのに何で? って思うかもしれないけど、多分俺の予想では彼一人でも軍隊並の働きをするから、って所じゃないのかなと思う。


 まあそんなアニメの話はいいとして、それよりも疑問に思ったのは、このロックオン・リベレーターってヒューマン型のロボット、出処は一体何処のお国の物なのだろうかというのが俺の中で沸いて居た。


 これに関しては狂矢ですら知らなかった。あっ、因みに狂矢は鮫肌の事ね。一応仲良くなったんやから名前でってことで、あれ? 何か関西弁も伝染って来た気がする。


 まあ兎に角、国の研究所から提供されたこの素体を使用する訳になるんだけど、ただそのまま使う訳にも行かなくて、今現在あるプログラムの消去作業と書き換えの作業を同時進行に行う形でプロジェクトは進行している。


 何でワザワザ既に入力されているプログラムを削除する必要が有るのかと言うと……これも予算の関係なのだが、このロボット自体に使用されているFPGAと今回こちらで購入したFPGAを半々で使用するので、お互いがマッチするように調整する作業が必要なのだ。


 まあ、単純に説明すると左脳が軍事用に、右脳が今回購入した物で補うと言う感じになる。もちろん、そんな単純な話では無いのだけど。


 そして何より元は軍事用に開発されたロボットなわけで、戦闘プログラムが物凄く記述されている。つまり、これをそのままにして使用すると、日本の公共の場を歩かせる事は、女の子の仮面を被ったグリーンベレーが街を闊歩する事と同一になるのだ。


 想像してみてくれ、この平和の日本に一般女子の姿をした兵隊が街中に歩いていることを、それはそれは恐ろしい光景であるに違いない。


 そのため、現在俺達は必死になって軍事的なプログラムを消しては安全な命令へと上書きをしている。


 因みに、言語は一年生の時から学んだPythonで、偶然にも人工知能やディープラーニングに必須のプログラム言語だった。


 そう、俺も今ではへロー・ワールドからへロー・ディープラーニングの世界の入口に立つまでに至ったのだ。まあ、正直な話今回の分野に対しては、まだまだ何だよね。だから研究員の先輩方が合間を縫って、俺に講義をして下さっている狂矢と共に。


 と言っても、狂矢は俺を指導する側で、本当にアイツは優秀な人間だ。これは正直、他の研究員の方はもちろん、この研究所の主任である主任もいち目を置いていた。


 人間、こう何かに没頭していると、月日が経つのは早いもので、もう既に二回目の冬をこの研究所で過ごしていた。このままだと当たり前にクリスマスは過ぎ、そして新年もこの謎の大陸で年越しそばを食べる事になるだろう。


 まあこんな事を聞くと、研究所内に閉じ込められて居るんじゃないかって思う人も居るかもしれないが、決してそうではない。少なくとも研究所から外の空気を自由に吸いに出て行く事が出来る。島からは海に囲まれていて、容易に出て行くことはできないが。かといって、島から出るなと柵で閉鎖されているわけでもない。


 しかし息抜きで研究所から出る度思う、此処が本当に謎の島に有る施設なんだと。


 施設の屋上から見渡す景色には、必ず360度何処の角度に変えても大海原が見えるのだ。そして何処の角度に変えても海の向こうは海しかなく、そこからは他の大陸の面影もしくは蜃気楼のような島すら見当たらない程に此処は孤島だ。


 また研究をする場所として選ばれるだけあって、此処の気候はとても穏やかで、有るとしたら大雨くらい。それも一年の間に数回起こる程度で、台風は愚か津波すら押し寄せない場所と来てる。


 見渡す海の青と砂浜全体の真珠に近い白のコントラストは格別で、生唾をゴクリとしてしまう程の絶景が広がっている。


 普通に遊びに来たら楽園の島という言葉が似合うだろう。


 俺も鮫肌も息抜きで海岸へ出ると、二人でゴキュリと喉を鳴らしてしまうほどのブルーラグーン。



 もう絶対人魚とか出て来そう、そんな雰囲気がこの島にはある。



 まあ狂矢は此処に来て、既に彼なりの人魚とご対面をこの研究所内でしているのだが。それにしても本当に神秘的な場所なので、真面目に人魚とか出てきそうだな。


 実際そんな御伽草子に出てくるUMAは居ないにしても、この島の南側の少し岩が集まった場所には、海亀が産卵しに来るポイントがある。その産卵シーンを見た時は、参加したメンバーのほどんどが号泣した。


 因みに主任の利根川さんはと言うと『はあ、海亀!? 産卵? 泣いている? あれは泣いてねーし……』と、平然とした顔で言ったあと、母海亀の涙について生物の知識と言うよりも? 何故だか科学の知識で解説を始める始末だ。


 因みに涙を流す理由は、海亀が海中に居る際に、餌を食べる時に一緒に海水も飲んでしまうので、その塩分調整の排出を目の後ろ側にある塩類線から排出する。その時に流れる水分が人には涙に見えるのだ。


 流石に頭がいい。

 本当に凄い人だと思う。


 それよりも凄いのは主任のアラフォーらしからぬボンッ、キュッ、ポンの水着姿……ではなくて、解説しながら同時にプログラミングで仮想の海亀を作成してしまったことだ。


 何でよりによって砂浜にまでパソコンを持ってくるんだとは思ったが。


 まあ、もし俺等が海亀の産卵についての研究班とかって~~話なら、パソコンだろうが他の電子機器を携えてても全然っおかしくは無いのだけれど、いやいや主任さん!? 生物学じゃなくて、工学系ですよね? このチーム(汗)


 それより一番謎なのは狂矢なんだけど、主任の完成されたプログラムの羅列が美しいと宣い、徐に主任の手を両手で握ると鮫肌成らぬ、鮫眼をギラギラさせて彼女に迫っていたのには驚ろかされた。


 そうか、狂矢の言っていた研究室の人魚ってのはこの人のことだったのか。


 流石の主任も『おっ……おお……鮫吉……』と引いてた(笑)

 せめて、まずは名前から憶えて貰おうな!? 愚て友よ(涙)


 何で大学のキャンパスではアイツいつも死んだ魚の目をしていたんだって思ってたけど、なるほどなっ、お前はガチの年増好きだったんだな。


 まあ、確かに利根川主任は普通に美魔女だと俺は思う。多分恐らく、メイビーだけど、美魔女コンテストも軽く優勝出来そうでは有る。でも、俺達の1.5倍の人生は送ってると思う、恐らくパハップス。


 経験の少ないというよりも無い若造のお前が、彼女との恋愛は厳しいんじゃあ無いだろうか?


 何れにせよ親友の俺は喜んで応援するぜ。と言いつつ、まあ俺は、ただ妹の冬美に興味を持たれなくて安心しちゃったり何かしちゃったりして、なんだけどな。


 いや、それよりなんかあの人何処かで見た事あるな~~ってくらい既視感があるのは俺の気のせいだろうか?


 何処かで会ってたっけ?


 to be continue ……the younger sister plus 

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