第2話 print("study hard")


 今日も俺は、機械技術と言うかバーチャル空間への技術進歩の恩恵で、食事と勉強時間以外は、電脳空間上で妹とこっそりお忍びデートを楽しんでいた。


 まあ、とは言ってもあくまで俺が一人で勝手にデートって言ってるだけなのだが(汗)


 当然、妹は普通に兄貴が兄妹として話掛けてるだけだと思っている。まあ、それは当然ちゃ当然の話なのだが……そう考えると切ない。


 以前の俺の時間の使い方はゲームに殆どの時間を費やしていた。その次に一番時間を使って居たのが妹の冬美との会話だった。それでもゲーム時間と冬美との比率を数値化した場合、以前の俺は7:3で圧倒的にゲームが多かった。


 まさかあんな事になるなんて、誰が想像しただろう……。普通生物的な観点で考えてみても、死期は当然先に産まれた俺にこないとおかしい。


 正直初期の段階で病気の症状が出てさえ居れば、今も俺の横で彼女は笑って居てくれたかも知れないのだから。


 まあ、その場合は冬美を独り占めなんか出来ないし、当然デートする事なんて出来る訳が無い。それにそのまま成長した場合、きっといつか彼氏を紹介される日が来るに違いない、いやそれはガッデムだ。想像するだけでも胸が痛くなるのはなんでだ。



 くぅううう。



 それよりも俺が妹を愛してるなんて事がバレでもしたら、きっと母ちゃんに殺されるだろうな……うん、間違いなく殺される。


 そう言えば、この間親父はウッカリ口を滑らせて、冬美とバーチャルデートだぁ~~なんて馬鹿なことを言ったもんだから、怒った母ちゃんにスリーパーホールドを極められて失神してたっけ。で、目覚めたその後も、娘に手を出す父親が居ますかって二時間くらい正座をさせられて説教されていた。父ちゃんの場合は俺と違って、完全な冗談なのにかわいそす。


 だからもし俺がそんなん言った日にゃ、『兄妹で恋愛だなんて断じてあるまじき行為です。非常識です!?』と顔を真っ赤にした青鬼に叱られるに違い無い。多分三時間はかたい、いや半日とかも有り得るな。


 病院で、キスをした時に後ろに立っていたのが母ちゃんじゃ無くてほんっとにほんとうに良かった。


 それよりも俺が妹を愛してるなんて事がバレでもしたら、きっと母ちゃんに殺されるだろうな……うん、間違いなく殺される。


 そう言えば、この間親父はウッカリ口を滑らせて、冬美とバーチャルデートだぁ~~なんて馬鹿なことを言ったもんだから、怒った母ちゃんにスリーパーホールドを極められて失神してたっけ。で、目覚めたその後も、娘に手を出す父親が居ますかって二時間くらい正座をさせられて説教されていた。父ちゃんの場合は俺と違って、完全な冗談なのにかわいそす。


 だからもし俺がそんなん言った日にゃ、『兄妹で恋愛だなんて断じてあるまじき行為です。非常識です!?』と顔を真っ赤にした青鬼に叱られるに違い無い。多分三時間はかたい、いや半日とかも有り得るな。


 病院で、キスをした時に後ろに立っていたのが母ちゃんじゃ無くてほんっとにほんとうに良かった。


 でも、妹を失った時に初めて俺は自分の気持ちに気が付いたんだ。


 冬美の事を好き何じゃ無くって、んだってことを。

そして最悪にも俺は死んだ彼女に邪な気持ちを抱いてしまっていた。


 気が付いた時には彼女の唇に俺の唇を押し付けていたんだ。

 しかし想像していたのと違ってて、それは硬い感触だった……。


 よく恋愛物の物語だとチューをした感想はとっても柔らかいって描写されているのに、冬美のそれはカサカサに乾いていて、サンドペーパのようにザラついていた。生きていた頃の彼女の唇の色は桃色で見た目もプルンとしてたのに、あの時は青紫色に近い暗い色に変わっていたっけ。


 俺は感動よりもその事で唇が歪みワナワナしていた。そんで彼女に何か言おうとした時、後ろで物音がした。


 振り返るとそこに看護師の宮本さんが立っていた。あの当時、彼女もまだ新人さんらしく、動揺して各道具をワゴンから落としてしまったらしい。


 それを見た俺はと言うと、訳も分からず『最期だから、もう妹と会えるのはこれで最期ですから』と理由になっていない言葉を呟いて必死に自分の行いを誤魔化そうとしていたらしい。俺はその時は本当に気が動転していたので、そんなことを言った覚えなどなかった。


 何故それを知る事になったかというと、妹が亡くなった約二ヶ月後のことなんだけど。妹の事と仕事のストレスが祟って、なんと今度は親父が胃潰瘍で入院することになった。その時たまたま偶然、担当となった看護師さんが彼女だった。


 父ちゃんの見舞いで母ちゃんも隣にいたので、あの時の出来事を話されたらまずいと思って焦った俺は彼女の腕をぐぃっと掴むと、両親を残して廊下へ出ていた。


 慌てている自分と違い、彼女は普通に『大丈夫よ、お姉さんはねっこう見えてもプロなんだから、あの事は内緒にしといてあげるわ』とウィンクすると、またそのまま父親に居る部屋に入っていった。暫くすると彼女は一礼をしたあと静かに出ると僕に近付き一言いって去って行った。


「強引だと女の子に嫌われるぞ」


 耳が熱くなりながら親父の居る部屋へと入ると、二人は俺を笑顔で迎えてくれた。どうやら彼女は父と母に俺が親父の容態について質問をしていたのだと伝えたそうだ。その時に、息子である俺に『お父さんは大丈夫ですよ、安心してくださいねっ』と言ったと二人に伝えたのだ。


 たったの二ヶ月でこうも人は変わるのか!? 

 病院ってスゲ〜~と思った。



 今回、親父の命に別状は無いとは言え、妹の事も有り、死と言う物の距離がぐっと近付いたせいか、俺はこれまでの生活リズムを根本的に見直すことから始めることにした。


 元々成績は中の上で、決して悪い方じゃ無かった俺だが、人の死と向き合う事で生きる事の大切さを誰よりも学び、今後の進路について真剣に考えるようになった。そして特に目標の無かった志望校も、妹の肉体がこの世界から無くなった事で一本に絞み込まれた。


 東京角詠夢工科大学 偏差値 49.5

 コンピュータサイエンス学部の場合 50.0


 現在の俺の偏差値はと言うと52で一応はクリアーをしているが、安全かと言うと正直微妙なところ位置していた。ここからもっと更に成績を上げていかないと、受験で失敗する恐れが有った。それにこれから成績を上げて行けば、あわよくば推薦入学枠に入れるかもしれない。


 母ちゃんには勉強に目覚めたのなら、何故Fランを目指さないと言われたが、目標としているコンピュータサイエンス学部でAIやIoTを学びたいと説明した。横文字の苦手な母ちゃん、当然顔にはクエスチョンマークが浮かび、彼女の周囲にも同じようなものがところどころに浮かんでいた。そのため、これを学ぶ事で冬美を妹をこの世界に呼び戻せるかもしれないと説明しなおしたら、即OKサインを貰えた。


 恐らく俺は当時の高校生の中で一番勉強をしていた自信がある。俺は毎日がむしゃらに、それはもう起きてから眠るまで本とノートを往復し、同じ参考書を何冊も買い替えたほど、何度も何度も読み返したり、書き込んだりしていた。


 高校の三学期の始めには実際俺の偏差値は70近く迄跳ね上がった、担任の早苗からは熱烈に『白川くん、東大を目指さないかい?』と言われたが、俺は願書はあくまで東京皆星工科大学の一本のみに絞っていたので、丁重にお断りをした。


 そして俺は大学試験をトップの成績で通過し、念願のコンピュータサイエンス学部への入学切符を無事に手にすることが出来た。


 まあ、もし英語が出来るのならば、日本のとある有名人みたいにアメリカのピッツバーグに有るというカーネギー・メロン大学を目指していたかもしれない。


 ああ、そうそう俺も最初疑問に思ったんだけど、大学の名前はアンドリュー・カーネギーって言う実業家が果物のメロンが好きだから付いたみたいないい加減な物ではなく、有る財閥のメロン兄弟の創った研究施設と合併した事で、カーネギー・メロン大学となったらしい。



 to be continue ……the younger sister plus 

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