第3話和解
「俺はタクミだ。タクミ・ヤマアラシ。異世界からこの地に飛ばされた人間だ。」
彼女はキョトンとした。
そんな彼女に俺は聞いてみる。
「異世界から人が来る事はあるか?」
「いいえ。私も昔その手の本を読んで見た事はあるけど…所詮創作物の範疇を出なかったわ。キミ見たいな人は初めてよ。」
「なるほど。まぁ、取り敢えず俺は別の世界からこの世界に"何故かは分からないが"飛ばされた。そして気づけば騎士様の家にいた。俺は鍵を開けることは勿論、賊のような根が腐った奴らでもない。騎士様に殺されたただの一般人だ。」
彼女は少し顔を傾げたあと
「分かった。キミが言ったことは理解した。」として、理解してもらえたようだった。
「つまり今のキミの状況は、何も知らない状態でこの世界で生き延びようとしていたという訳になるけど…」
「なるけど?」
彼女は少し言葉を詰まらせたが、難なく話始める。
「キミにこの世界のことを教えよう。冒険者とは言え元は騎士に憧れていた身。そのくらいしなければキミを殺した償いにはならない。」
もう気にしなくて良いからと俺は言うが本人はかなり傷ついているようだ。
何も知らない一般人を殺した事は自分の騎士道精神に反する事、そう考えると彼女が落ち込むのもわかる気がする。
でも
「そんなふうに思わなくて良いから本当に!でもこの世界については知りたいかな。」
そういうと彼女は一瞬だが目を煌めかせ、コホンと精神を整えてから彼女は世界について話し始めた。
「まず世界の枠組みから話していくけど、これから話す事は冒険者なら皆知っている事だと思っておいてね。」
と注意をした上で長い夜の授業が始まった。
「まずこの世界は"センダ・クロスティ"と呼ばれる原初の光が世界を流転させ始め、全てを基礎を作ったとされるわ。それ故に人々、特に冒険者たちはその原初の光を求めて毎日深淵を覗いているわ。」
「なんで原初の光を求めるんだ?」
「原初の光は全ての基礎を作ったとされると言ったと思うんだけど、全ての基礎を作れるが故の"万能さ"を皆は求めているのよ。」
「なるほど、万能を求めているのか。」
「そしてセンダ・クロスティの発生から時を超え、この惑星"ナルダドダイ"が生まれたのよ。」
「つまり俺の世界で言うと原初の光が"ビックバン仮説"でナルダドダイが"地球"って事みたいなものか。意外と理解できるな。」
「そして私たち人類はこのナルダドダイで産まれた固有の生物の1種だ。」
「今思ったんだが、何故
「この世界が知りたいと言ったのはキミだろ?それに嫌でも知ることになるんだ。今のうちに聞いて損はしないよ。」
「そうか。」
「あーそれと大事な話が1つ。この世界には原初の光が封じ込められた黒箱、所謂"センダ・クロスティの黒箱"が存在していて、それを持った人は莫大な力を得るのと同時に契約をしないといけないらしいから、もし見つけても触れないでね。」
「凄く興味惹かれる物だけど触れないでおくよ。」
「ふぅ、説明したかいがあったってものだね。」
気づけば太陽は完全に落ちきって、俺たちの顔もさっきよりも薄暗く見える。
焚き火が目の前でメラメラと熱を発しているとは言ってもやはりと言うべきか、少し寒くなってきた。
「夜だし、寒い。こんなんでどうやって寝るんだ?」
「ん?あぁ、少し待っていてくれないか?すぐ寝れるようにするから」
俺は彼女が何をするのか気になるが、少し焚き火から離れて行ったため恐らくあの重そうな鎧を脱いでいるのだろうと思った。
案の定、鉄と鉄が擦り合う音が周辺に響く。
それから数分経つと彼女は焚き火の前へ戻ってきたのだが、座らなかった。
「座らないのか?」
「ほら、こっちおいでよ」
彼女はその言葉と共に俺を手招きする。
一体何をすると言うのだろうか?
「キミはそこで座って、私は後ろから失礼するよ」
「んなぁ!?」
人生で初めて母親以外の女性に後ろから抱きつかれてしまい、少し変な声を出してしまった。
今俺の背中には大きな大きなメロンが押し付けられ、彼女の鼓動も肌を通して伝わってくる。
この状況は凄く興奮する。
しかし同時に自分を殺した存在だという認識も浮かび上がり、この行為に嬉しさと恐怖を同時に感じてしまっていた。
そのせいなのか俺の鼓動も少し高ぶっていた。
「やっぱりまだ根に持ってるんだね…」
彼女は耳元で囁く。
まるで付き合いたてのカップルみたいだ。
「実を言えば…俺はまだ騎士様が怖い…また、殺されるんじゃないかって」
そんな俺の気持ちを彼女は受け止めた。
そして彼女は唐突に提案をし始める。
「大丈夫。もうキミを殺したりなんかしない。だから私と一緒に冒険者になってパーティ、組もうよ。」
騎士様と冒険か…。
悪くないし、なんならこの世界を楽しみたいと言う気持ちが大きく膨らんでいたからすぐにでも反応を返したいのだが…
「すまん、今はなんとも言えない…。」
俺は今すぐ答えを返せなかった。
でも彼女はそれを理解した。
「じゃあもう寝ようか。私はこのまま抱きついてるから…」
「あぁ…ありがとう」
そして俺たち2人は互いの体温を感じながら穏やかに眠った。
朝起きると焚き火は燃え尽き、木は炭とかしていた。
そして背中に抱きついていた彼女は既に目を覚まし、鎧を装備していた。
昨晩は光が足らず気づかなかったが、よく見ると腰に"あの直剣"を装備していた。
「騎士様、これからどうするんだ?」
「はぁ…昨日から思っていたんだがその"騎士様"呼びはやめてくれないか?私にだって名前はあるからそれで呼んで欲しい。」
呼んで欲しいと言われてもなぁ…
「じゃあまず名前を教えてくれよ。そうじゃないと何も言えないじゃないか。」
「!。私は昨日教会で名乗ろうとしたのにキミと言ったら私や顔を見るやいなやさっさと外へ走り出してしまったではないか!」
「うっ…それはすまなかった。」
「コホン。私は英雄国タルバットのタルバット冒険者ギルド所属のアルカ・スマトロンだ。二つ名は"狂気の刃"。よろしくね」
「じゃあアルカって呼ぶ事にするよ。それでいいだろ?」
「勿論、問題ないわ!じゃあまずはタルバットに戻りましょ!そこで仕事を見つけなきゃね!」
俺は彼女について行くことにした。
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