第11話 透明人間 現る 現るぅ♪
今回はウィスキーボンボン州にある
流石のランボルギーナとポーシェの脚でも、彼ら専用の重装備とキャンプ用具と馬上槍を装備したままの行軍では、丸3日掛かった。
本来であれば引っ越しの時に乗ってきた荷馬車を、溢れる財力で魔改造した【遠征くん1号】と、メイド一人を連れてきて快適な旅ができるのだが、今回は時間勝負の救出作戦だ。
スピード重視で最低限の装備になっている。
その為に姫も、テントで野宿を余儀なくされている。
ペティートが村から逃げてきて4日、そこから3日の行軍だから、かれこれ一週間が経つ。
囚われた者たちはもう連れ去られているかもしれない。
急げランボルギーナ!
駆け抜けろポーシェ!
と言うノリで3日目の夜にはペティートのうろ覚えの案内で、彼女たちがひっそりと暮らしている隠れ里に着いた。
村が見下ろせる高台に陣取り、今晩はココで一晩を明かし、明日から勝負だ。
実は明日になる前にやることがある!
フッフッフ。ここからが俺の出番だ!
いよいよ宇宙人が勝手に埋め込んだ能力をお披露目する時だぜっっっ!
「姫、いよいよ俺の能力の出番だと思わないか?」
俺は自信たっぷりに言う。
「能力? ああ! 例の『陶芸人間』ね?」
「そうそう。『何だこの色の出方は? こんなの俺の求める皿じゃねぇ! ガシャーン!!』
『♪陶芸人げーん、皿割る 皿割るぅ♪』って、ちっがぁぁぁう!
『♪透明人げーん、現る 現るぅ♪』だよ! って何で姫が【ピン〇 レディ】を知ってんだツーの!
【ピ〇ク レディ 2000】がデビューした瞬間、元祖【〇ンク レディ】が復活しちゃって、【2000】は一体どこ行っちゃったんだよ!?
って知るかぁぁぁぁぁぁ!!」
はぁ、はぁ。3日分のノリツッコミをして大満足の俺。
「さぁ、満足したでしょ? 行く前に馬の世話とテントの設営と武具のメンテナンス、夕飯の準備をなさいね?」
そうだった! 俺にはやることがいっぱいあった。
「夕飯を食べたら速攻で洗い物と片付けを済ませてから、
「はい、喜んで!(涙)」
[深夜]
フッフッフ。
闇夜に真っ黒いマントを身体に巻き付け、顔の半分まで隠れるフードを深く被って村の門前に立つ俺。
女と子供を寝かし付けてやっと俺の出番だぜ!
(小声で)
「俺は今、獣人の村に来ています!
この村に、獣人たちを捕まえて売り飛ばしちゃおうって悪いやつらが居るそうです。
そこで俺が攻め込む前の偵察に来たッスよ。
では、いざ行かん。悪党が潜む村へぇぇぇ」
何故か急に思い出したバラエティー番組の突撃リポーター風に一人で喋ってみた。
もちろん誰も聞いていない。
が、ひとしきりやったら満足した。
ココで宇宙人からもらった能力、奥歯をぐっと噛んで『透明人間』発動!
『透明人間』はご想像の通り、自身の身体と身体に触れている物が光を透過する様になる。
身体と身体が触れている状態(例えば手と手を繋いでいるとか)であれば、触れている人にも効果が及ぶ。
そしてその透過率は、俺が自由自在に調整できる。
え? 何を言っているか解らないって?
まぁ聞け。
眼球は光を見る器官で、捉えた光の情報を信号に変換して脳に送る。
送られてきた情報を脳が映像に変換して、景色を見ているのだ。
光は全方向に反射するが、その反射の情報から物体を認識しているのだ。
だから光が反射せずに透過してしまえば、物体なり風景なりを認識することができない。
ソレが透明化だ。
だから100%光を透過すれば完全に透明になって、女湯覗き放題だ!
と言いたい所だが、そうは問屋が卸さねぇ。
100%光を透過すると言う事は、眼球も100%光を透過してしまう。
つまり眼球が光を見ることができない。
明かりを失う。つまり『失明』だ。
完全透明人間になって女湯に忍び込んでも、何も見えないのだ!!!
さて、人間の眼と脳は非常に優秀で、眼の機能を50%程度失っても、脳が映像を補完するから普通に暮らせてしまうのだ。
だからこそ緑内障が進行して周りが見なくなってきた時には、既に手遅れになっているのだが。
だから50%透過であれば、敵の視線を誤魔化しつつも(敵からは半分透けて見える)、けっこう普通に行動できる。
なんて言うんだろう、テキストアドベンチャーゲームで、絵に被さって吹き出しの中にテキスト(文章)が出ているのは分かりますか?
その吹き出しの透過率を上げて下の絵を見られる様に設定で調整したりするじゃないですか。
あんな感じでテキストを見つつも絵が見られるみたいな状態です。
隠密行動をするときには70%程度の透過率で行動をする。
70%透過であれば視野狭窄がかなり進行してしまい、見ることが難しくなるが、敵からも発見されにくくなる。
特に夜の隠密行動には最適だ。かなり透明人間だぞ。
ヤバくなったら最後の手段として、100%透過でやり過ごす。
その時には全く目が見えなくなるので、耳だけが頼りだ。
俺は透過率70%になって、民家の影から民家の影へ、ソソソソっと移動する。
端から見ると俺の身体は、スタッテッドアーマーごと後ろの風景が透けて見えている状態だ。
まるで『窓ガラスに映り込んだ人物を見るような感じ』よりも透けていて、不意に見たら幽霊かと思うくらいの存在感の薄さになっている。
この状態だと正面以外まともに見えないから、移動するときは足元や周囲に最深の注意を払いながら進まなければならない。
ちなみに『透明化』の使用は1日5回。
使用回数は(姫の酸素ボンベも同じだが)午前0時に宇宙パワーによってリセットされる。
現在23時。
今日の分を使い切っても、明日の襲撃に支障はない。
1回使用すると最大30分間使用できる。使用中は本人の意志で
人気の無い、誰も居ない真っ暗な村の中を静かに潜行する。
農村なので民家から民家の距離が長い。
今日が満月に近い月齢で良かった。
もっと暗かったら70%での行動は不可能だっただろう。
結局カクビン村には一番奥に建っている大きい家以外、人の気配はなさそうだ。
みな連れ去られたか逃げ出したか、殺されてしまったか。
大きな家の前に来た。
道を挟んだ向かい側に立っている大木に身を潜め、先ずは見える範囲で中を見る。
その家は大きな垣根で囲われていて、村の中では一番のお金持ちっぽい家だ。
垣根が切れている入口には両側に
門番はいない様だ。
そこで急に視界がハッキリと見える様になった。
『透明化』が切れたのだ。
慌てて大木に首を引っ込め、再び奥歯のスイッチを押す。
深夜で、村を制圧していると思っている悪党どもは、油断しているのだろうか?
見える限りは誰もいない。
意を決して垣根の傍まで移動する。
篝火に炙られて顔が熱いが、こんな所で見つかるワケにも行かないのでガマンだ。
首だけ出して中を覗き込む。
屋敷の庭では悪党どもが酔っ払って博打を打っていて、あまり周囲に気を配っていない様子だ。
これ以上は屋敷に潜入しなければならない。
今これ以上のリスクを負うことに意味は無い。
明日にしよう。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
〈あとがき〉
【じょえ】じゃないかと思います。
いかがでしたでしょうか?
ちょっと違ったアプローチの『透明人間』です。
使いどころが難しいっすねw
でも一般的な透明人間は便利すぎてつまんないですよね。
なかなか話しが進まないですが、
早く『コントローラー』も出したいです。
ここまで読んでいただきましてありがとうございます。
みな様に幸多からんことを!
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
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