この度、猫型宇宙人にアブダクトされ、公爵令嬢と使用人の道ならぬ結婚をエサに、美少女スーパー戦隊を率いて世界の平和を守る事になったドM転生者のサンビヴァンです

じょえ

第1話 ドS姫騎士とドM従者。世界平和の為に戦っています。

「この度、猫型宇宙人にアブダクトされ、公爵令嬢と使用人の道ならぬ結婚をエサに、美少女スーパー戦隊を率いて世界の平和を守る事になったドM転生者のサンビヴァンです」


 著 じょえ





 草木も眠る丑三つ時。

 『丑三つ時』って何時や!?

 とにかく夜中!  深夜!


 真っ暗な坑道の奥から鈍いランタンの光が、誰も居ないガランとした採掘場に近づいてくる。

 足音は5つ。


 ここは鉱山ギルドが所有する、魔鉱石鉱山の坑道だ。

 最近盗掘がちょいちょい発生しており、それに気付いた鉱山ギルドは、鉱山に入る為の一つしか無い入口を、自分たちの職員と冒険者を雇って、交代で寝ずの番をするようになったのだ。



「今日も来たぜ。魔鉱石鉱山。おぅミルク! さっさと終わらせて帰るぜ!」


 イビル冒険者ギルドに所属するゴールドクラス冒険者・破壊者グラップラー【イナズマ・サンダース】が、相棒のゴールド級冒険者・強盗ローバー【モウモウ・ミルク】に顎で指図をする。


 「あいよ、ダーリン♡。あんたたちぃ! もうさっさとやっちまいな!」


 ホルスタイン柄のボンテージスーツに身を包んだ、モーレツボインなお姉さん、モウモウ・ミルクが、手下の三バカトリオに命令を下す。


「「「あらほらサッサー」」」


 超絶出っ歯な小賢しい頭脳派盗賊シーフ【デッパ】・ずんぐりむっくりな力持ちのドワーフ戦士ファイター・おデブな【ポッチャ】・いつもヌボーッとしているノッポな魔法使いマジックキャスター・ガリガリ【ガリー】の三人が、慣れた手つきでピッケルやシャベルで鉱山から魔鉱石を掘り始めた。


 掘り出した魔鉱原石の周りの土をミルクが落とし、それをサンダースが麻袋に詰める。


「あそーれ、♪ガッツンガッツンガッツンでんなぁーっと♪」


 ずんぐりむっくりな体系をした陽気なドワーフ族のポッチャは、ブヨっとした上半身裸に左肩パッドのみという豪胆な格好だ。


 ドワーフの特徴は、なんと言ってもその体型から繰り出されるパワーだ。

 坑道の壁に打ち付けられる一振り一振りのピッケルから、ガッツンガッツン土塊が掘り出される。


 掘り出された土塊をデッパがその出っ歯で・・・いやいや、手に持ったシャベルで! 大雑把に魔鉱原石から土を削り落としていく。


 シャベルを器用に扱い、素早く魔鉱原石の土を削ぎ落としながらデッパの口が止まらない。

 

「姐さん、今日も大漁でゲスなぁー。それにしても鉱山ギルドのヤツらもバカでゲス。サンダースの兄貴がこの坑道に来るための新たな道を発見しただなんて、夢にも思ってないんでゲスからねー。ゲースゲスゲスゲスゲス」

 デッパの気色悪い笑い声が坑道に響く。


「・・・・・」 

 その横で黙々と土を払った魔鉱原石を集めて、モウモウ・ミルクの前に運んで行くガリー。


「鉱山ギルドのバカども、未だに入口に大勢で張り付いてやがるからな。今日も帰ったらアジトで宴会だぜ、ヤローども! こんなボロい仕事、笑いが止まらんなぁー。アーッハッハッハ」


 あっという間に2袋の麻袋がいっぱいになり、無事依頼達成。

 これから数日間は悠々自適な快適生活のはずだった。


「こんな事だろうと思っていましたわ! 観念なさい、盗賊さんたち! わたくしは姫にして騎士、正義の姫騎士【ターシュリー】。わたくしが来たからには、あなた方の悪事はもうお終いですわよ!」


 坑道内に凛とした声を反響させ、サンダースたちの後ろに立ち塞がる少女が、俺のご主人様、ターシュリー・ラ・ロマネッティ侯爵令嬢だ。


 俺は姫の威厳を知らしめる為に、ササッと動いて左右の足元に仕掛けた魔道ランタンをスポットライトモードで起動させ、ババーンと強烈なライトの光によって美麗なる彼女の姿を浮き上がらせる。


 スポットライトで照らし出された彼女は、全身ド派手なワインレッド色と金色の魔法の防具で固められていて、顔が出ているハーフヘルメットの後ろからはサラサラな金髪がフワッとなびいている美少女だ。


「サンビヴァン、ライトのタイミングが1テンポ遅かったですわよ!」


 観客(盗賊たち)に聞えないように小さい声で言いながら、ターシュリーの足下で小さくなってライトの影に隠れている俺に、軽く蹴りを入れる姫。


「さぁーせんっっっ、姫ッ!」

 姫の従者スクワイヤである俺の扱いは、だいたいこんなものだ。



 

 申し遅れた。

 俺の名はサンビヴァン。

 ここ、アルコホール王国でも有力な大貴族である、ロマネッティ侯爵家にお世話になっている者だ。


 俺は幼少の頃、侯爵家の次女であるターシュリー様に拾われて以来、ずっと傍付きを仰せつかっている。


 子供の頃から『礼儀作法』『国の歴史』『社交技術』などの勉強は全く身に入らず、『剣術』『魔法知識』『魔法技術』など、およそ貴族のご令嬢には縁のないものばかりがメキメキと上達するお転婆だった俺の姫、ターシュリー様。


 お転婆とは言え、メイドが居なければ一つとして家事がこなせない箱入りのお嬢様が、なぜ親元を離れて王都で暮らしながら冒険者をやっているかは、また後で話すとして、今は姫の活躍を見て欲しい。


 


 ピカッッッ!!

 真っ暗な坑道に強烈なライトが光り輝き、光の中に居る一人の金ピカ少女を照らし出す。


 ターシェリーは光の中で、盗賊たちからは後ろ向きに仁王立ちで立ち、上半身は振り返る形で立っている。

 左手は腰に、右手はVサインの形を横にして右目に添えている。

 姫の『決めポーズ』が決まった! 

 

「覚悟なさい!」

   

 スポットライトに照らされた場所から、勢い良く飛び出す俺の姫。姫カッケー。


 庶民の家が30軒程度余裕で建てられる程のお金が掛かった、金で縁取りをしたメタリックなワインレッドに光り輝く【ミスリル銀製の+2スーツメイル】に身を包んだターシュリー様の動きは軽く、全身金属鎧なのに殆ど音がしない!


 それもそのはず、彼女が着ているスーツメイルは、エルフの中でも一部の者しか製法を知らないと言われる伝説の金属【ミスリル銀】で造られているのである。


 『硬さ』と『軽さ』、相反する性質を同時に存在させる魔法金属のミスリル銀で打ち出されたスーツメイルに、更に『消音』『俊敏度+5』の魔法が付与エンチャントされているのだ。

 ちなみにスーツメイルの下には突き刺し防御の為に【ミスリル銀製+1チェインメイルアーマー】(『消音』エンチャント)を着ているが、もちろんコレも名前を見ての通りミスリル銀製だ。


 金持ちバンザイ!



 突然のド派手な登場に驚いている盗賊たち。


 採掘場は通路よりかなり広くなっているが、広大な一つの部屋の形になっているので、逃げ道は無い。


「なんじゃー? てめぇらぁ!?」

 サンダースが叫ぶ。


「あ、姐さん、どーしやしょーでゲス」

「あわ、あわ、あわ・・・」

「・・・・・」


 採掘の手を止めて、それぞれの得物を持ってオロオロと固まっている三バカトリオ。


「もう、何ビビってんだい、アンタたち! 相手はションベン臭いお子ちゃま二人じゃないさ! 大人の世界の厳しさってモンを教えておやりなさい。それにご覧よあのピカピカの鎧! 売ったら高く売れそうじゃないのさぁ、もう!」

 言いながらデッパの横につつつと来て、はち切れんばかりに成長した2つの胸でデッパの二の腕を挟みつつ、頬をそそそと撫でるミルク姐さん。


「ゲ、ゲース。ゲ、ゲース・・・」

 ミルクの真っ赤な唇から漏れる吐息から、その形の良い唇がデッパの頬に触れてしまいそうな位置にある事を感じ、胸の谷間に挟まれた左腕から彼女の体温を感じ、鼻腔いっぱいに広がる彼女の甘い香水を感じ、唇とは反対方向の頬を伝う指の微細な技を感じて、恍惚の表情を浮かべているデッパ。


「そ、そうでヤスねー、姐さん。だんだんあの小娘が単なる金づるに見えてきたでゲス」


「そーだろー、そーだろー。もうチョイ遊んでおあげ」


「ゲッヘッヘ。そうしヤス。ポッチャ! ガリー! チョイと世間の荒波でモミモミしてやろうでゲス」

 前に突き出した両手をモミモミしながら、下卑た笑いを浮かべたデッパが言う。


「えーなー! おいちゃんたちが大人を教えてやりまんがなぁー。♪ あ、もーみもみ、ソレもーみもみ♪ でんなぁー」

「・・・・・」

 ポッチャの歌と踊りに合わせて、ガリーも両手でモミモミしながら踊っている。


「なんてハレンチなんですのっっっ!?」

 風のように走り込んできたターシュリーが、【+3フルーレ】(『冷気属性』『俊敏度+7』『武器スピード×1.53』)を抜き放ちポッチャに強襲を掛ける!


 金持ちエンチャントで超速い姫の攻撃スピードに、見た目とは裏腹に機敏に反応するポッチャ。

 ポッチャは歌って踊れるポッチャリさんなのだ。


 ドワーフのポッチャは持っていたピッケルを横に振り払い、ピッケルの半月形の面でフルーレの切っ先を受け、野球のバッティングよろしく、力任せに振り切る。


 ターシュリーが突き出したフルーレの細い刀身の横っ腹を、分厚い鉄の塊であるピッケルの刀身(?)でポッチャが力一杯叩いので、姫は身体ごと横に弾かれてしまった。


 こうなると形勢は一気に逆転。

 姫は無防備な横面を敵の前にさらけ出してしまった状態だ。

 しかも、振り切ったピッケルはその勢いのままぐるんとポッチャの頭上に持っていかれ、今は上段打ち下ろしの形になっている。


「しまっっっ・・・」

 ターシュリーの顔が恐怖に引き攣る。


 しかぁし、そこに俺!

「危ない、姫!」

 

 姫の従者スクワイヤたる俺が追いすがって、体勢を崩されて固まっている姫に体当たりを噛まし、彼女を弾き飛ばしてピッケルの軸線上から外す。


 俺はターシェリーを弾いた勢いのまま目の前のデブにジャンプして身体ごと飛び込み、喉元にダイビングクロスチョップを食らわす。


「ひでぶ~~~~!」


 クリティカル!

 ダメージ増し増し、おデブちゃんの背中からから黄色文字で『588』の文字がコロンと転げ落ち、続いて赤文字で『1』が転げ落ちて、ポッチャは気絶した。



 最初の数字『588』は俺がポッチャに与えたダメージ数。

 一般的には白文字だが、クリティカルしたから黄色だ。


 次の『1』はポッチャのライフポイント。

 ヒットポイントが『0』になるとライフポイントを『1』失って『気絶』状態になる。

 そのキャラクターが持っているライフポイントが『0』になると『死亡』状態になる。


 『気絶状態』のキャラに攻撃を加えると、攻撃の度に『1』ライフポイントを削る事が出来る。



 決まったぜ! 今ので姫から俺への胸キュンポイントがグググッと上がったはずだ!


 俺は着地して振り向き、ドヤ顔で姫に向かって親指を立てる。


 弾き飛ばされて尻餅をついていた姫はムクッと起き上がり、俺のそばに寄ってきた。

 うむ、うむ。俺が愛おしくて仕方がないんだろー?


「サンビヴァン! あなた主人のわたくしに対してなんて無礼なの!?」

 言いざま姫の金属トウキックが俺のケツに突き刺さる!


 俺の背中から黄色文字で『782』のクリティカルダメージがコロンと転がり落ちる。


 姫、ケツに金属トウキックはやべーよ。

 穴が広がっちまうじゃねーか。

 しかも俺の残りヒットポイントは『3』だ。


「け、ケツぅぅぅぅ」

 ケツを手で抑えながら倒れ込む俺。

 その表情は苦悶に満ちているのでは無く 、恍惚の表情になっているのは内緒だ。


 姫、ご褒美の『心に染みるケツキック』をありがとうございます。

 愛しています姫!





 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


〈あとがき〉

 はじめまして、【じょえ】と申します。


 ドタバタコメディを目指しています。少しでも笑っていただけたら幸いです。

 

 実は戦闘シーンはリアルっぽく書きたい派なのですが、リアルに書けば書くほどコメディさ加減が遠退とおのいて行くので、考えた結果、「ゲームの様に数字を転がり落としたらどうか?」

と思いつき、こんな感じになりましたw



 ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます。


 宜しければ、♡や ★★★で応援をよろしくお願いいたします。


 みなさまの清き一票を、下記のリンクから飛んで、↓ポチッとなw

https://kakuyomu.jp/works/16817330652646882843




 他にはこんなものを書いています。

 良かったら覗いて見てください。



【実話。3400文字。完結】

ちょっと留置場に入ってきた。

https://kakuyomu.jp/works/16817330650173907337



【妄想・ごちゃバトルコメディ。連載継続中】

「魔王軍VSスパロボ&スーパーヒーロー’S ~魔界から魔王軍50万が東京に攻めてきた件~」

https://kakuyomu.jp/works/16816700427028791174



【実話。『うつ』『解離性同一性障害』記録の為の話し。超不定期連載継続中】

観察日記『妻と13人の別人格との共同生活』

https://kakuyomu.jp/works/16816700428966142110




 最後になりましたが、いつも応援してくださる方、さらに重ねて御礼申し上げあげます。


 誠にありがとうございます。


 感謝しております。


 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

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