家庭教師に「あ」



何だかんだで俺は6歳になった。

こうなるまでに風邪を10回以上発症し、

隣の家の住人は二回変わり、いつも母さんが

昼に聴いていたラジオ番組は20周年を迎えた


しかし、俺には気がかりな事があった。

それは魔法の使い方がまだ分からないのだ

父さんの部屋にあった本からこの世界に魔法が存在するのは理解したが、それがどうやって使えばいいかさっぱり分からない。ま、その内覚えるだろう


そう言えばステータスボードとか称号みたいなのもまだ出てこない。だから俺が今レベルが幾らなのかそもそもレベルがあるのかも分からないのだ


(やっほー☆始めましてー!)


え?!誰かの声だ……母さんか?父さんか?


いや、二人とも違う。来客も無し

じゃあ誰だ


(私はあなたの頭の中にいる案内人でーす

でもまだあなたはなーんにも魔法覚えて無いのでしばらくばいばーい!)


それは女の声でやけに腹の立つアクセントだった。頭の中で声がした様な……


「あ! ちゃんこっちへいらっしゃーい」

「へいへい」


お母さんが手をちょいちょいと動かし、俺にこっちへ来いとサインを送る


どうでもいいが、母さんって何歳なんだ?

見た目的にはまだ30代前半ぐらいに見えるが

この世界なんせ前世とは違う世界だからなぁ


そんな事を考えながら、母さんの方へ辿り着くとそこには1人の女性が立っていた


顔は若く、ほうれい線も無いし目元もたるんで無い。ていうか格好が前世映画とかで見た

魔法使いなんですが


「ほら、挨拶しなさい。あなたが中学に入るまでお勉強教えてくれる先生よ」

「え!?し、小学校は!?」

「行けるわけ無いでしょ!ここから10時間かかるのに」

「10時間だぁ!?」


確かにこの世界では義務教育は中学と高校なので小学校に通わなくていいらしいが、だからってこの女1人で小学校全科目を?!


「すいませんねぇ、この子はまだ礼儀を学んで無いもんで」

「いえ、それは構わないのですけどお子さんの名前をちゃんと教えてくれませんか?私の聞いた限りでら"あ!"としか聞こえ無かったのですが……」

「へ……?それで合ってますよ。"あ!"=クリスタルです」

「ふぇ?!」


微笑みを浮かべ、お母さんがそう告げると女は目に渦巻きを浮かべた様な顔して玄関から外へ倒れた


「わ、私変なこと言ったかしら!?」

「かなりな。で、どうするよ」


結局、家庭教師の歓迎パーティは中止になり

また後日来てもらう事となった。安易に名前を発してはいけない、俺はつくづく感じた



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