それからの「あ」
何だかんだ一年が経過した。どうやら俺は死んでしまって新しい世界に転生したらしい
しかし、この家は前世バカにしていたライトノベルみたいな家でクーラーも無い洗濯機も
無いスマホも無いとにかく現代とはかけ離れた生活をしているらしい
かと思えばトイレは水洗式だし、白熱電球っぽいものもある、何故かラジオもある
考えるとおかしな事ばかりで「?」に頭の中が埋めつくされてしまいそうなので、とにかく最近は外を眺めている。窓の外には森が広がっていて、たまに何かよくわからん鳴き声がする
「お〜い"あ!"ちゃん」
母親が俺の名前を呼んだ、普通に歩く気になれば歩けるがめんどい事になりそうなので今はハイハイで動いている
そして、声のした方へ向かうと母親が俺をひょいっと抱き上げた
「よ〜しよし……いいこいいこ。今日はね、
おそとでるからね」
「おそと……?」
「そう、おそとだよ。たーたんにあえるよ」
「たーたん?!」
たーたんとは太陽の事らしい俺が外を眺めていたら「あれがたーたん、あれがもみもだよ」と教えてくれた
「要は散歩ってわけね。へっ」
「ん?今なんか流暢に喋らなかった?」
「あ……っと!たーたん!はやく!たーたん!!」
「気のせいか」
小さい子の振りは疲れる。俺は何度も実感している
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家を出ると、そこにはファンタジー感がすごい街並みが目に付いた。レンガ造りのなんて言うかその……オシャレ?な感じ
「こんにちは、リドルさん」
「あら、こんにちはファーマさん。それからえっと……"あ"ちゃん?」
道で母親に声をかけたのは見た目50ぐらいの
ご婦人だった。どうやらリドルと言う名前らしい
「リドルさん、違います"あ!"です」
「は、はぁ……」
リドルの目は一気に軽蔑の眼差しに変わっていった
「あの……失礼ですけどほんとにその名前で
いいんですか?」
「そんなのいいに決まってるじゃ無いですか!いい名前でしょ、あ!=クリスタル」
「ひぃ……」
母親はずいっとリドルに顔を近づけて言った
ますますリドルは困惑している様だ
「じゃ、じゃあ聞きますけどねぇ……その
"あ!"ってのはどんな意味があるんですか!」
「意味?!もちろんあるに決まってるじゃ無いですか!"あ!"ってのは……」
「"あ!"ってのは………えっと」
あるわけ無かった。だって最初に発した言葉が「あ!」だったからなだけだし。まぁここは俺が助けてやるか
「かーかんいじわるやめ!」
「え?!」「おわ?!」
リドルと母親は揃って驚愕した。何故ならこの歳の子供が親を守る事は有り得なくは無いがここまで発言して守るのは珍しいからである
「まぁ……好きにしなさい。私は忠告したからね!」
「へっ……好きにしてやるよ。ね"あ!"」
「かーかん……」
母親は頭を撫でてくれた。俺はその顔を見ているとこの名前も悪くないからと思ってしまった
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