第33話カール・クリス10歳③ 剣武祭 予選

クリオネア王国で行われる大きな大会の一つ。

剣武祭、腕に自信がある冒険者や、騎士や兵士。

騎士学校や魔法学校に通う生徒。

エルフにドワーフ、獣人族など様々な人型種族が出揃う。

大会の会場は、三つ用意されている。

紅の闘技場。シンプルに整備された土のグラウンド。

      障害物などが一切なく剣士や戦士などの職業に適したグラウンド。


蒼の闘技場。マナを帯びた石壁が至る所に配置されているグラウンド。

      障害物が多く、魔法使いなどの職業に適したグラウンド。


中央闘技場。一番大きな闘技場で本戦もここで行われる。国王や貴族たちが観戦するための特等席も用意されている。

前回の優勝者や、実力者達はここで予選を行う。


騎士見習い幼等学校は今回が初参加となる。

出場選手は皆、僕たちより体が大きい大人ばかりだ。

「おい、坊主?まさかお前もでるのか?」

腰に二刀の剣を携えた男が受付の前で声を掛けてくる。

「えぇ、そうですが?」

「はっアリエナイぜ!こんなお子様が出るのかよ」

「まぁ……そうですね、駄目ですか?」

男の棘のある言い方に少しムッとする。

「いや、駄目とは言わねぇ、まぁ頑張れよ!運がよけりゃ俺と当たるかもな」

男はそう言って颯爽と去っていく

「はぁ、やっぱりそうだよなぁ~」

外見はまだ10歳。

まだまだ子供の身体だ。

大人に舐められるのも仕方ない。

僕は、受付を終わらせてレントとナナの所に戻る。


「ひゅ~ねぇちゃん。良い身体してるね」

先に受付を終えていたナナはゴロツキに絡まれている。

「なんなのだ?どいてくれなのだ!」

「ちょっとこっちで話そうぜ!」

強引にゴロツキは、ナナの手を引っ張る。

「離すのだ!」

ナナは、ゴロツキの掴んだ手を捻りそのまま地面へと投げる。

「はぇ?」

ゴロツキは間抜けな声を上げて地面に叩きつけられる。

「ナナはまだ11歳なのだ!この変態めッ!」

ゲシゲシと、地面に叩きつけられたゴロツキを踏みつける。

「いたっ痛い痛いです。すっすみません。すみません。」

ゴロツキは泣きながら許しを請う。

「その辺にしときな、ナナ」

見かねたレントが止めに入る。

まぁ、ナナだけはもう成人女性に間違われるのも無理はない。

頭はまだ子供だが、身体付きだけはもう立派。



全員、何とか無事受付を済ませることが出来た。

今日は、予選一日目。

(僕は、Aブロックか―――。)


(ふふっ、では予選では当たりませんね)

ラビが念話で話しかけてくる。

(えっどこいるのラビ?)

(後です)


後を振り向くと、彼女ラビがいた―――。

美しい青い髪をなびかせ、堂々とこちらに向かってくる。

誰もが目を引く美しい女性。

歩く人は足をとめ、彼女のために道を開ける。

辺りが騒めき立つ。

「ラビだ……大会三連覇の剣舞いソードダンサーのラビ」

「うへぇすげぇ美人だ……。」

「うはぁー、いい匂いだ、俺~彼女のファンなんだよ」

立ち止まる男たちは口々に彼女を賛辞する。

男達をたちまちに魅了する彼女ラビ


「クリス様、負けませんよ」

僕の目の前に立ち、彼女は跪いて言う。

「おっおい、彼女……跪いてるぞ!」

「おい、あの坊主何者なんだ!?」

「くそっあんな近くで話せるなんて羨ましい。」

何とも、言いたい放題な外野だ。


「ラビ、正々堂々と勝負しよう」

僕は、彼女の手をとり立ち上がらせる。

「はい、もちろんでございます」

ラビは満面の笑みで答える。



「はぁ~話には聞いていたが、クリスの従者があの剣舞いソードダンサーとはなぁ」

レントは、僕の横腹を突きながら言う。

「いっ痛いなぁ、レント。だから前から話してたじゃないか!」

「いやぁ、見るのは初めてだからさ……」

照れながら、レントが言う。

「ほぇ~あんな綺麗な人がクリスの従者なのか?勿体ないのだ」

「いやぁ、主人として鼻が高いよ本当に……。」


今回の予選は3つの闘技場で行われる。

紅、蒼、中央闘技場。

紅の闘技場には僕。

蒼の闘技場にはレント。

中央の闘技場にラビとナナ。


初出場の選手は基本的にランダムに割り当てられる。


僕たちは、予選会場へと向かう。

「じゃぁナナ、頑張ってね!」

「うん、行ってくるのだ~」

「よし、じゃあ皆!私は蒼だからこっちだな」

三人でハイタッチをしてお互いの健闘を祈る。

そして僕たちは、別々のブロックへと向かう。


僕たちの第一試合は、こうして始まった。




大きな紅の旗が目印のグラウンド。

整備された、シンプルな土のグラウンドだ。

障害物なども一切ない。

まだ、予選なのか観客はまばらだ。


「紅ブロック!予選第一試合―――!」

司会の男が、グラウンドの真ん中でアナウンスを始める。

「カール・クリス選手。騎士見習い幼等学校から推薦された選手です!」

僕は、グラウンドの中へと進む。

「おい、まだ子供じゃねぇか」

「でもよ、カールって言ったらあの剣の神童マルスの弟じゃねぇか?」

「へぇ、なら面白い展開になるかもな」

観客席の、大人たちは口々に言う。

「続いて、今回の注目選手です!剣士アリエナイ選手!」

見覚えのある選手がグラウンドに立つ。

(あっ、受付で馬鹿にしてきた人―――)

アリエナイと言われる腰に二刀の剣を携えた剣士。

「おっ、アリエナイじゃねぇか!」

「あいつ最短で中級冒険者まで駆け上がったやつだろ?」

「そうそう、短期でホブゴブリンやハイオークを討伐できる腕利きらしいぞ!」

「いやぁ、こりゃあの坊主終わったな……。」

観客席は、アリエナイ選手に声援を送る。


「おぉ、あの受付の坊主じゃねぇか?よろしく頼むぜ!」

アリエナイと呼ばれた男は剣を一本引き抜き構える。

「まぁ、坊主なら一本で十分だ。」

余裕の笑みを浮かべながら言う。

「そうですか、ありがとうございます。」

僕も剣を鞘から引き抜き両手で構える。


「おっと、両者!準備万端のようですのでこれより予選第一回戦!」


『始めッ―――』の声と同時に動き出す。


僕は地を蹴り、駆けだす―――。

一歩、また一歩、距離は縮まる。

彼は、剣を構え目を瞑り一歩も動かない。

「馬鹿にしてッ―――!」

僕は、剣を下から上へと振り上げる―――。

それを、彼は身体を逸らせて簡単に避ける。

と同時に、剣ではなく前蹴りが僕の身体に飛んでくる。

「ウゥ……何で……。」

蹴りは僕の腹を突く。

鈍い痛みが全身に響く、僕は後ろに仰け反る。

そのまま、痛みを我慢して、跳躍してさらに後ろに距離をとる。

「単純な動きすぎて、剣を使うまでもないなぁ……」

彼は、欠伸をしながら剣を鞘に納める。

「くっそ……、見切られている……。」

相手は、見切りを使って避けていた。

目すら開いていない。

閉じたまま、攻撃を避けて剣ではなく蹴りで攻撃してきた。

相当の使い手である事は間違いない。

「ははっ坊主?どうする?――――棄権するか?」

彼は、笑いながら言う。

「いいえ、棄権はしません―――必ず勝ちます」

「へぇ、そうかい、そうかい。じゃあ容赦なく潰すぜ!」

彼は、右手でこちらを挑発するように手招きする。


「こいよ……坊主――――。」

「言われなくても……行くさッ!!!」


僕は、再び駆けだす―――。




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名前:カール・クリス 10歳 レベル:20

カール伯爵家の三男。

従者:ラビ レベル:50 


タレント:言語理解『中』マナの操作『上』、マナの蓄積∞、鑑定眼『中』

経験値2倍 ※魔物から得られる経験値が半分になるようだ。

魔法スキル:全属性魔法習得可能、炎魔法、風魔法、水魔法、土魔法、雷魔法

闇魔法、光魔法『全て中ランク』、筋力超上昇

ソードスキル:見切り

特殊スキル:

遮断、知覚の糸パーセプションストリング、隠蔽『上』


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