第30話 カール・クリス8歳 ⑧ 試験の結果。(終)
森の入り口では試験官が待ち構えていた。
「魔物の
レントは、鞄からゴブリンの
「とりあえずおめでとう!」
試験官は、
ホブゴブリンとの戦いは思った以上に時間が掛かったのだろう。
既に、数組が先に森をでていたようだ。
「ははっ、一番乗りとはいかなったね」
僕は、そう言いながら剣に刺さったままのホブゴブリンの
引き抜き、試験官に手渡す。
「なっ……これは!?ホブゴブリンの
試験官は驚きの声を上げる。
「そうなのだ~ナナ達でホブを倒したのだ~!」
ナナは嬉しそうに耳をピンと立てて言う。
辺りがざわつく、試験官は慌てて魔法具を取り出す。
連絡を取り合うためのトランシーバーみたいなものだ。
巻貝の貝殻にマナを込めて作られている。
貝で会話、だから貝話とも言われいる。
数キロ先の相手と会話をする事ができる。
精度が良いものだと数十キロ数百キロ先の相手とも会話が出来る。
もちろん、値段は張る。
この世界で一般的に普及しているものだ。
すぐさま、試験官達が集まりだす。
そこにはマルス兄さんと校長の姿もあった。
「クリス!大丈夫か!」
僕の姿を見つけた、マルス兄さんがこちらに駆け寄る。
「大丈夫だよ、マルス兄さん」
「良かった……本当に良かった……」
マルス兄さんは、事の経緯を教えてくれた。
今回の試験には、ホブゴブリンは用意していなかった。
用意されていたのは、下位の
スライム、ゴブリン、オーク。この三種類だったようだ。
その試験に紛れ込んだ上位種のホブゴブリン。
予期せぬアクシデント。
熟練の冒険者ですら手を焼くホブゴブリンを8歳の子供が
三人で倒したのだ。
試験官達は
校長ギル・ヴァレンシュタインが僕たちの元へやってくる。
「お主ら、どえらいことをやり遂げたな……」
蓄えた白い髭を触りながら校長が言う。
マルス兄さんも、それに同意するかのように頷く。
「本来は、一番乗りになった受験生は無条件で特別クラスにと思っていたのじゃが……お主らを合格とする。入学後は特別クラスで学ぶがよい。」
優し気な笑みを浮かべ、校長はそう言って去っていく。
「良かったな……クリス。」
マルス兄さんは、目に涙を浮かべ喜び僕を抱きかかえる。
「まだ、こんなに小さいのに……良くやった!」
そのままぐるぐると回り始める。
「まっマルス兄さん、目が回るよ!」
「ははははっ、いいではないか!ははははっ!」
マルス兄さんの逞しい腕にしばらく振り回され続けた。
「いいなぁ、私も回されたい」
レントの羨む声が聞こえる。
一歩間違えると誤解を与えかねない言葉だと思った。
こうして、長い一日は終わりを告げた。
明日から、僕たちの学校生活が始まるのだ。
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