第24話カール・クリス 8歳② 王都クリオネア
王都はカール伯爵領から、馬車で三日ほど掛かる。
道中、色々なトラブルにも見舞われたがこれは別な機会に
話すとしよう。
無事に王都へと着いた。
高く聳え立つ、堅牢な城壁。
開かれた大きな門の前で、門兵が慌ただしく検問をしている。
入口から、一人の若い門兵が駆け寄って来る。
「そちらの馬車止まりなさい。」
馬を鎮め、馬車は門の入り口で止まる。
「お二方、身分を示すものをご提示ください。」
僕は、カール伯爵家の家紋を見せる。
「おぉ、マルス様の
「兄をご存じで?」
「ええ、この門を取り仕切っておられるのはマルス様ですので」
兄の姿は見えないが、どうやら兄は国の治安を守る。
王国騎士団に所属しているようだ。
王国騎士団とは、国を守る騎士団である。3つの騎士団がある。
『
王都を、守る要の騎士団。
騎士団長、グレイズ・ノアが率いている。
副団長、ベル・シュリアを含め。総勢1200人の騎士や国兵が所属している。
王都最大規模の騎士団。
騎馬戦術を得意としており、他にも槍や弓など様々な兵種を揃えている。
国の有事の際は、真っ先に動く国の騎士団最大勢力。
『
騎士団長、デカント・バール。
副団長、娘のメリア含め総勢800人の騎士と重騎士で構成された。
戦士、剣士といったソードスキルを多様に使う。
勇猛果敢なもの達で構成された、騎士団で二番目の勢力。
主に、遠征を任されており国外の魔物討伐。
治安維持に努めている。
副団長のメリアは兄より二つ年上だが、実力を認められ
今年から副団長へと昇格した実力者だ。
『
騎士団長、シュピーネ・ネルガ
副団長、ガル・バトールを含め。総勢300人の騎士と魔法使いが所属している。
魔法を主に得意としたもの達で構成されている騎士団。
騎士団で三番目の勢力。
魔法具の開発、魔法使いの育成などに力をいれており。
シュピーネ・ネルガ団長自身も、魔法学校で教鞭をとっている。
話を聞くと、マルス兄さんは中央騎士団に所属しており。
国の防壁や門。
周辺に現れた魔物の討伐などを任されている。
「このまま行くと、副団長まで一気に出世されますよ。」
若い門兵は、熱く兄の事を語ってくれた。
「兄さんは、今どこに?」
辺りを見渡しても兄の姿はなかった。
「あぁ、マルス様なら今……あちらの方で対処しておられます。」
そう言って、一台の馬車を指さす若き門兵。
馬車の陰に隠れて見えなかったのか……。
「ありがとう、少し挨拶をしにいってもいいかな?」
「えぇ、わかりました。通過の手続きは済ませておきます。」
僕は、兄のいる馬車の方へ歩き出す。
どうやら、トラブルのようだ。
沢山の荷を積んだ馬車に乗った男が兄に怒声を浴びせている。
「えぇい、早くしろ!これから大事な商談なのだ!」
「しかし、荷を確認させてもらわなければいけない。」
「かぁーッ!何を言う!許可証はこの通りあるだろう!」
「確かに許可証はある―――だが、その荷の中には一つ確認せねばいかないものがあるようだが?」
「なっ何を訳の分からん事を!」
虚を突かれたのか、男に焦りが見える。
「すまないが、調べさせてもらう……。」
兄は、そう言うと荷台の荷物を1つ開ける。
男は観念したのか、大人しく従っている。
「ふむ、見た事か……。おいッ!テル!」
テルと呼ばれた先ほど、こちらを対応していた若き門兵は兄に呼び出される。
「はっ、マルス様!」
慌てて、こちらに走り寄ってきた若い男。
兄は、仕事に集中しており僕の姿に気づいていない。
「これを見よ!」
荷の一つから少女を引っ張り出すマルス兄さん。
少女は、ひどく衰弱している。
身に纏っている服と呼ぶにはあまりのも粗末なモノ。
全身が汚れ、身体中には痣がある。
「こっこれは!?」
テルと呼ばれた男が、驚きの声を発する。
「荷を検めて良かった。少女よ大丈夫か?」
兄は、少女を抱きかかえ言う。
「うっ……うぅ……。」
ひどく衰弱した少女。
まともに声を発する事ができない。
「おい、男を捕らえよ!これは人身売買だな……。」
テルに男を捕らえるように指示するマルス兄さん。
男は観念したのか、大人しくお縄につく。
少女はラビと同じオッドアイだった。
「少女よ、もう大丈夫だ。」
優しく少女の髪を撫でながらマルス兄さんは言う。
混血児を奴隷として誰かに売ろうとこの男はしていたのだろう。
「この聖都では奴隷商は禁じられている……。誰の差し金か……。」
兄は、唇を噛みしめながら言う。
「くっ、口は割らんぞ……。しかし何故分かったのだ……。」
男は縄に縛られながら悔しそうにそう言う。
「簡単な話だ。その荷だけが強いマナを発していた。」
僕も、気づいていた。流石マルス兄さんである。
あの荷からは大量のマナが溢れていた。
「くっくそぉ……、ここまでか……。」
奴隷商の男は嘆いている。
その時だった―――。
どこからともなく飛んできた一本の矢。
その矢は男の額に深々と刺さる。
「あっ……あがっ……。」
そして、矢からは黒くどす黒いマナを感じた。
黒いマナは男の全身を包み込む。
「ああぁぁぁあぁあ―――!」
男は悲痛な叫び声を上げながら藻掻き苦しみ始める。
身体はどんどん黒くなっていき
そして、全身が黒くなった時、男の身体がボロボロと
崩れ始めた。
男が居た場所には、縛り上げていた縄と黒い煤だけが残った。
「なっ何という事だ!テル!至急、他の者を集めろ!団長には私から
報告をする!」
マルス兄さんは、少女を抱きかかえたままその足でこの場を去った。
結局、兄に声を掛ける暇さえなかった。
「だが、あれは一体何だったのだろう―――。」
僕は、ラビが待つ馬車へと戻り許可が下りたので王都の中へと進む。
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