第22話 お家騒動の決着(終) 兄の旅たち!

あれから、季節が変わり季語で言うなら春になった。

温かで穏やかな風が吹き抜ける。


カール伯爵家のお家騒動は、ジャガーで始まり。

ジャガーで終息した。


マルス兄さんは、あれから父に頭を下げ騎士団に正式入団が決まった。


言葉遣いも大分穏やかになった。まだ抜け切れてはないが……。

筋トレは欠かさず続けている。

前のような荒々しさは抜けたが、トニーおじさんと未だに

組手は行っている。


白い騎士団服に身に纏った兄。授与された勲章もしっかりと

つけている。


「それでは、父上、母上。兄弟たち使用人の皆。」

兄は、今日王都へと向かう。

「しばしの別れになります―――。」

兄の顔は凛々しかった。

まだ幼さがあった顔立ちは立派な青年へと

そして、身体は制服がはちきれんばかりの筋肉だ。


「クリスよ、これを……餞別だ。」

兄は僕に、ドラゴンの鱗で出来た首飾りを渡す。

「これは、私の師が倒したドラゴンの鱗で作ったものだ……。」

兄は少し遠い目をしながら言う。


「これはきっとお前に勇気と力を与えてくれるだろう……。」

そして、僕の手をぎゅっと握りしめて言う。

「騎士の道は決して楽ではない……。励めよ、そして極めろ筋肉を……。」

僕の耳元でそう言い、兄は離れた。


「それとデント!お前も欠かさず鍛えるんだぞ!筋肉!」


「ああ、任せてくれマルス兄さん!」

デント兄さんは、確かに身体が見違えるように変わった。


筋肉は、性格かえるのだろうか?


前より明るくなり、僕に対してもあまり嫌味を言わなくなった。

マルス兄さんとデント兄さんはお互いに笑いながら肩を叩きあう。

「魔法学校でも励めよ……。」


「ああ、もちろんさ……。戦う魔法使いになるぜ!」


「マリア、お前にもしばらく会えなくなる……。成長を楽しみにしてるな」


「マーにぃも元気でね」

妹のマリアはしゃがんだ兄の頬を小さな手で撫でる。

「あぁ、元気に頑張るよ。」

マルス兄さんは、マリアの頭を撫でる。


「父上、母上。沢山ご迷惑をお掛けしました。不肖ながら誠心誠意努力いたします。吉報をお待ちください。」


父は目頭を赤く腫らし泣いてる。やっと苦労が報われたのだ。

「あぁ……あぁ。頑張れよ……。」

短いながら様々な思いがこもっている。

母も泣いている。

「マルスは本当に立派になったわ……良き師を持ちましたね」


「えぇ、師は偉大です。私の過ちを正してくれましたから……」

兄は嬉しそうに母に言う。


「使用人の皆、色々と迷惑も掛けたが助けてくれてありがとう!」

後に控えている使用人に手を振り兄は礼を言う。


「それでは、行ってきます」

兄は、荷を背負い。歩き出す―――。


遠ざかる兄の背中は、服の上からでも分かる筋肉


背筋には、優しい鬼が宿っていた―――。

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