第19話 お家騒動④ 計画に向けて 

 デント兄さんは、外でマッスル兄さんから厳しい指導を受けている。


「立てぇ!そんなの生半可な覚悟では筋肉が泣く!」


 もう既に、100回以上腕立て伏せをさせれている。

 デント兄さん。

 息を荒げながら、必死に腕立て伏せをしている。


 限界が来たのか、デント兄さんは腕を折る事ができない。


「ポーションだ!」


 そう短く言うと、トニーおじさんがデント兄さんにポーションを

 飲ませる。

 ポーションは体力を回復させる。

 傷が癒える魔法具の一つだ。

 それをまさか、こんな使い方をするとは……。


「これで傷ついた筋組織は、新しく生まれ変わる。」


 なるほど、マッスル兄さんもこの方法を使ったようだ。

 普通の筋トレは、休むを挟みながら行うものだ。

 だが、この荒療治ならすぐさま筋組織を回復させ。

 短期間でビルドアップできるということか……。


 こんな事、ファンタジー世界だからできる技だ。


 再び、腕立てをさせるマッスル兄さん。


 その後も、腹筋、スクワット、走り込みをポーションを

 挟みながら行う。


 日も暮れ始めた頃、訓練グラウンドの隅には山のように

 積まれたポーションの空き瓶があった。


「どうだ……。デントよ……生まれ変わった感想は?」


「はいっ!マルス兄さん!!」

 あの、デント兄さんが笑顔で言う。

 やせ細った身体が嘘のように筋肉質に変わっている。

 だが、まだマッスル兄さんより二回りも小さい筋肉。


「だがまだだ、まだ遠いのだ!明日も継続だ!!!」


 ここに三人のマッスルが揃った。

 三人は笑顔でお互いの筋肉を褒めあっている。


「嗚呼、早くジャガー様にお会いしたい!」

 兄は、右手を強く握りしめ天高く拳を突き上げる。

 そして、中指を立てて言う。


「筋肉だ!―――そう筋肉だ!」


 最早、病的なまでの筋肉愛。


 早く手を打たなければいけない。


 このままでは、家がマッスル健康家族になる。


(ラビ、聞えてる?)


(はい、クリス様)


 僕は、ラビに念話で会話する。


(どうやら、デント兄さんもマッスル化してしまった)


(そのようで、随分と健康的になられましたね)


 何とかして三日後までに作戦を成功させなければならない。


(ラビ、嫌かもしれないが計画実行日はデント兄さんの足止めを頼む)

 これから三日間、彼らは毎日筋肉を鍛えあうであろう。

 何としてでも、マルス兄さんを一人にする時間を作らなければ……。


(畏まりました、クリス様のご命令なので苦ではないです)


 デント兄さんが、ラビに好意を寄せているのは知っている。

 それをラビが迷惑に思っていることも……。

 僕に突っかかてくる理由はラビだということぐらい

 魂年齢37歳の大人が分からないはずがない。

 なんたって身体は子供、頭脳は大人。


 トニーおじさんは、使用人だ。

 用さえ作ってしまえばいい。


 後は、食事をとって自室に戻る前の兄を説得。


『ジャガー』に変化チェンジして話をする。


 これが三日後の計画だ。


 その前に、父にあっておかなければならない。









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