第17話 お家騒動② デントの悲劇

最近、マルス兄さんの様子がおかしい。


俺は、魔法学校が冬季の休みになり実家に帰省していた。

退屈な学校生活だが、今は家より寮生活がましに思える。


祝いたくもない無能の誕生日を祝い。

町にドラゴンが現れる。

現れたと思ったら、あっさりジャガーとか言う奴に

倒される。


俺からしたらどうでもいい事ばかりだ。


「けっ、何がクリスだ。あんな無能と同じ空気も吸いたくない。」

俺は五つ下の弟、クリスの事が大嫌いだ。


あれは、あいつがまだ一歳の時だ。

家に、強盗が押し入って気が付けば捕まっていた。

俺は気絶していたから、何があったかは分からないが

仲間割れを起こしたようだ。


俺とあまり歳の変わらない少女が、大人を倒した。

父は、強盗の一人であるその少女を許し家で雇う事にした。

その美しい少女に俺は恋をした。


そこまでは、良かった。


何かにつけて、理由を作り彼女に会いに行く


その度に、彼女は弟のクリスの面倒ばかりみて


こちらに構ってくれなかった。


悔しかった。


なぜ、弟ばかり世話をするのだ。


俺は、後々理由を知った。


弟が三歳になった時だ。


魔力適正検査。

血を取り、羊皮紙で作られた魔法具マジックアイテム

そのものが持つ潜在的能力、タレントやスキルを読み取るものだ。


貴族社会では、鑑定士を招き大々的に行う儀式だ。


「ふむ、クリス様はどうやらマナに適正がございません。」

そう告げる、鑑定士。

この世界では、マナを扱えない人間は無能ノーレスト扱いだ。


平和な世になったとは言え、奴隷制度もある。


マナを扱えない平民は、肉体労働か奴隷戦士として過酷な生活を

送っていることは、誰もが知っているこの世界の常識だ。

無能の民、ノーレストと言われる


だが、クリスは伯爵家の息子。


いくらでも、そのような暮らしをすることはないのだ。


初めてできた弟、俺はマルス兄さんと同じく可愛く思っていた。


(あの日だ……、俺があいつの事を許せなくなったのは……。)


儀式の後、俺は父と母がひそひそと話しているのを偶然耳にしてしまった。


「まさか、我が息子が無能とは……。」


「ええ、でも私たちにとっては大事な息子に変わらないわ。」


「もちろんだとも、エリザ……。」

母の肩を抱く父。


「それに、クリスにはラビがいるから……。」


「そうだな、彼女と奴隷契約を結ばせて良かったと今は思うよ。」


衝撃的だった―――、彼女はクリスと奴隷契約を結んでいたのだ。


確かに、強盗をした罪を清算もせずにのうのうと働くなど出来やしない。


何故……。何故、俺ではなくクリスなのだ。


俺から彼女を奪った弟を俺は許せなかった。


「はっ……だから家には戻りたくない。」

俺は長い廊下を歩きながら感傷に浸っていた。


「デント様、失礼いたします。」

考え事をしいて、彼女とすれ違っていた事に気が付かなかった。


「ラっラビ……久しぶりだね。元気にしてたかい?」

長く美しい青い髪、目鼻立ちが整った顔。

また一段と美しくなった彼女に俺は胸が締め付けられる。

「ええ、変わりなく元気です。」

彼女は素っ気なく返事をする。

「あっあの、よかったら少し話さないか?」

俺は、彼女と少しでも一緒にいたかった。

「申し訳ございません。クリス様の所に行く途中なので……。」

そう彼女は言い残し、頭を下げ去っていった。


(クリス、クリス。またクリス。)


俺の中で、あいつが大きくなる。


(あぁ、意識がないままそのままいなくなってくれれば良かったのに……)


そうすれば、彼女は俺の物になるだろう。















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