Episode 02 東都
浮遊感の先に、私たちは東都のスポーン地点の一つ、東都駅前広場へと降り立ちました。
歴史と革新の町、東都。
二〇〇〇年代を思わせる景観という表現がなされることの多い東都ですが、私たちはその時代を知らないわけですから、懐かしさよりも新鮮味が勝ります。
賑やかな街並みに魔導列車の駅となると、流石はこの世界に数少ない百万都市といったところでしょうか。
馬車と二輪車の行き交う幹線道路に、十階程度のオフィスビル。リソース的な制限のある中ではかなり先進的な街並みだそうです。
「不思議な街ですね」
単純な現実世界の模倣ではなく。
数々の自由と不自由の存在する仮想世界を体現しているかのようです。
魔力という自由。
高度な科学の再現は魔力と反発し、その
「現実世界と違うからこそ仮想世界に意味があると考えたのかもな」
アキトさんはそのように考察します。
「そうでしょうか? 実質的な寿命が二倍になるだけでも十分に意義深いと思いますよ」
殆どの人々は普通に暮らしています。文明水準から現実世界と仕事は異なるところも多いですが、一つの町の中で比較的安全に生活を送っているようです。
現実世界の人生と仮想世界の人生。
同じようで違い。違うようで同じ。
どちらもきっと私たちにとって、かけがえのないものになっていくのでしょう。
さて、東都駅前広場は土曜の夜ということで人通りが多く、私たちは若干の人目を引いています。
こちらの世界では比較的、様々な風体の方が見受けられますが、早めに衣服を見繕いたいところです。
お金が必要になりますから、ダンジョンドロップを買い取って頂くか、システム的にお金に変換した後に、服飾店に向かうのが無難でしょう。
ただ、ここは素直に現実世界の家族を頼ることにします。
「東都駅前広場に午前と午後の七時に綾風さんが来てくださるはずでしたね」
「ああ、随分と待たせてしまったな」
七時まであと少し。服飾店に行く暇もないようです。
綾風さんは両親の会社に勤める若い女性社員で、非常に優秀な方です。
私の義理の姉でもあり、今回は仮想世界の案内を申し出てくださいました。
このような目立つ格好も綾風さんとの待ち合わせにちょうど良いかもしれません。幸いにも群衆は特設ステージ上のアイドルに夢中なようですし。
「新人のみんなー。仮想世界、最初の一週間は楽しんでる? 現実世界と違うところもいっぱいあって戸惑うかもしれないけど、楽しいこともきっとたくさん待ってるよ」
「私たちの歌も皆の楽しみの一つになれたらいいな、なんて思ったり。この東都全体にくらいは配信も届くし。生の人も配信の人も私たちのライブ楽しんでいってね」
音楽ライブはこの世界でのメジャーな娯楽です。スキルを駆使した演出は拡張現実とは異なる自由度を持っています。
今夜に限らず、東都駅前広場ではここ一週間は特別ライブが組まれていたはずです。産官合同のイベントだったかと思います。
土曜ということもあってか多くの学生が広場に詰めかけています。
折角の仮想世界ということでファンタジーらしい衣装を身に纏う学生も多いので、私たちも多少は馴染めているのではないでしょうか。
アキトさんと幾つか言葉を交わしながら、歌声を聴いている間に約束の時間となったようです。
スーツ姿の女性が私たちを見つけ、スタスタとこちらに歩いてきます。
「ナギサお嬢様。アキト君。ようやく会えたわね。良かった」
「こんばんは。綾風さん。迎えに来てくださり、ありがとうございます。何度も大変だったでしょう?」
私たちがスポーンした六日前から、綾風さんは毎日この場に来てくださっていたはずです。
「大丈夫よ。お嬢様が無事ならそれで」
綾風さんのそんな言葉に笑みを返して、お礼を言います。黒髪のままの綾風さんは現実世界と変わらず、キリリとした美人さんです。
姉とは言っても、姉妹の関係は些か複雑で、養子である綾風さんは私の教育係的な側面が強く、今の私が物語的御嬢様然としている所以の一つとなった関係性が築かれています。
綾風さんとの主従関係に近い何かがアキトさんとの関係に影響を及ぼしてしまったことは否定できません。
「アキト君。問題はなかった?」
「ああ、おおよそ問題はない」
「なら、良かった。魔物だけではなく、人にも気をつけてね」
「承知した」
本来は綾風さんとアキトさんと私で旅をする予定でした。綾風さんの仕事が忙しいために難しくなってしまったのが現状です。
仕事が忙しくなったのは彼女のせいではなく、私たちの両親のせいですから、仕事を頑張ってくださっている綾風さんには感謝しています。
「じゃあ東都の案内といきたいところだけど、今日は遅いし、この世界での我が家に帰りましょうか」
「ええ、そうですね。綾風さん、案内をよろしくお願いします」
「畏まりました。ナギサお嬢様」
綾風さんは私が幼い頃は丁寧な言葉遣いでした。もっともそれは私の前でだけだったようです。
そのことに私が気づいてからは無理しなくて良いですよと告げたところ、次第に今のかたちに落ち着きました。
彼女の案内で魔導列車のグリーンシートに乗り込むと、車窓からは美しい夜景を眺めることができます。
「お嬢様。どう? この世界は。お嬢様にとっては特に不自由なことも一杯あると思うけど」
ガタゴトガタと揺られながら、綾風さんは悪戯っぽい表情を浮かべます。
「とてもワクワクします」
「そういうと思ったわ。早速、冒険したんでしょ? どうだった?」
「楽しかったですよ。新鮮なことが一杯で。それに……実はですね。ダンジョンを見つけたんですよ」
生命迷宮はこの世界の一大コンテンツです。
一生の間に出会うことのない人が殆どのレアコンテンツでもあります。
「凄いわ。お嬢様のことだから、普通に帰ってくるだけの可能性は低いと思ってたけど、ダンジョンを見つけるなんて。代償と報酬はどうだったの?」
「3ヶ月6ヶ月でした」
「低難度ね。それならお嬢様を連れてもクリアできるかもしれないわ。帰ったらパーティを編成して……」
「いえ、綾風さん。私たち二人で既にクリアしてきました」
彼女の思案を遮るようにして、淡々と報告を行います。
綾風さんの表情が固まりました。
「おめでとうございます? お嬢様」
「はい、ありがとうございます。綾風さん」
戸惑う彼女に嫋やかにお礼を告げます。
私の普段通りの様子に落ち着いたのか、すぐに冷静さを取り戻した綾風さんは私に対して問い掛けました。
「幾ら低難度といっても、初心者にクリアできる程ではないでしょう? 実際大人でもダンジョンに挑むレベルってなると百人に一人もいないのよ」
「そうですね。私は正直なところ適正ステータスに達していません。しかしながら、アキトさんの能力が非常に高く、存外余裕があるようにすら見受けられましたよ」
彼女の言葉の通り、普通はあり得ないことと言っていいでしょう。ゲームバランスが崩壊しない程度には、初期能力というのは制限されています。
「まあアキト君は私よりも頭も良いし、身体能力だって高いだろうけど、初期ステータスの壁ってものが…………称号ね」
問われるような眼差しを向けられたアキトさんが「ああ」と答えます。
称号もジョブも初期ステータスと相関がありますが、称号に関しては上限を大幅に引き上げるのでは、と言われています。
ただでさえサンプル数が少ない上に、称号持ちは公開しない方が多いですから、実際のところは確かめようがありません。
とはいえ、私たちの例を見るにそう間違ってはいないのでしょう。
「いくら『秘匿』のスキルがあるからといっても、これは帰ってから話した方が良さそうね」
称号持ちを知られれば、各所からのアプローチがあることは想像に難くありません。
そしてその全てを退けることができるほどの後ろ盾が今の私たちにはないのです。
「幸先は良いわね」
「そうですね」
問題はどこにでもあります。
ならば、力はないよりあった方が良いのです。
その意味で幸先は良いと言えるでしょう。
「じきに着くわ」
車窓から眺める景色は、穏やかな灯りの目立つ百万都市。無機質な街並みに暖かさを感じる日常と非日常の境目のような街です。
綾風さんと他愛のない会話を楽しみながら、私の視線は東都の夜景を追いかけます。
この世界の灯りは稀少です。魔石を焚べた光がこうも煌びやかな街は世界を見渡してもそうはないという話です。
地を照らすは星屑のようで。
その光一つ一つが重く、私の心を揺らします。
良い景色ですね。
その心は声にはならず、東都の町へ溶けて消えてゆきました。
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東都の中央からは幾分か離れた頃合いで、魔導列車は自宅最寄りの駅へと到着しました。
駅から自宅へは徒歩で向かうようです。時間にして10分ほど。大きな一軒家の並ぶ住宅街を進みます。
道幅は広く、等間隔に植えられた街路樹を淡い灯りが照らしています。このあたりは高級住宅街にあたるそうで、几帳面な景観が心地よいリズムで続きます。
「ここが私たちの家よ」
「ここですか? 良い家ですね」
案内された先に待っていたのは、この住宅街においても大きいといえる二階建ての居宅でした。
日本家屋をイメージしたデザインは趣を感じさせます。
「気に入ってくれて良かったわ。
「お母様らしいですね」
「そうね」
綾風さんに広い我が家を簡単に案内してもらい、一階の広間にて食事を摂ります。
どこかのレストランから取り寄せたらしいその料理は、歓迎の意の込められた豪勢なものでした。
3人の静かで温かな食卓は何処か懐かしさを感じます。
「明日の入学式、間に合って良かったわ。色々と話したいこともあるけど、今日はゆっくり休んだ方が良いわね」
「そうします。これから話す時間は沢山あるでしょうし」
話すことは現実世界でもできますからね。
綾風さんの言う通り今日はゆっくりと休むとしましょう。
『浄化』というスキル枠を消費しないシステムスキルのおかげで清潔さを保つことができていましたが、久しぶりのお風呂に入ってから私は自分の部屋へと向かいました。
私の部屋には既に上質なベッドをはじめとしたインテリアが用意されていました。
まともな寝具で休むのは久しぶりです。
ダンジョンでは完全な野宿でした。『守護』や『結界』系スキルがあるとはいえ、アキトさんには大分負担をかけました。
道具なども用意せずに挑んだのは無謀が過ぎたかもしれません。結果がよかったのは何よりですね。
澄み渡る湖に沈み込むように、私の意識は眠りに落ちていきます。寝心地の良いこのベッドで眠れば、疲れも十分とれるでしょう。
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そして、翌朝。
綾風さんの手料理を食べた私とアキトさんは用意してあった制服に袖を通します。
初期装備は装備スロットへ。能力に影響を与えられるアイテムは身につけているものではなく、システム上の装備スロットに選択されたものが適用されます。
沢山重ね着をしたり、アクセサリーをつけても意味がないということですね。
リソース的な問題なのか、ファッションを自由に楽しめるようにといった計らいなのか、はたまた他に理由があるのかは不明です。
ただし、身につけていない装備品は『収納』の容量を使用しますので、身につけることにメリットもあります。
「ナギサお嬢様、とても似合ってるわ」
「ありがとうございます」
綾風さんに着替えを手伝ってもらった私は、そのまま鏡の前で髪を結ってもらいます。複雑なクラウンヘアは余裕の証明ということで、現実世界では日常のヘアスタイルです。
こちらの世界での普通にするつもりはありませんが、はれの日くらいは良いでしょう。
そうして身支度を終えた私は自室で準備してきたアキトさんと共に馬車に乗って第一高等学校へと向かいます。
送り迎えは綾風さんも一緒です。不躾な『鑑定』などは揉め事の種ですので、早々ありませんが、一応『秘匿』を使っていただいています。
私の『神聖』にも秘匿効果はあるようですが、アキトさんへの秘匿効果に不安がありますから。
魔導列車の最寄駅から徒歩で登校する生徒が多い中、校門前には幾ばくかの馬車が停まっていました。
綾風さんに挨拶した私はアキトさんにエスコートされながら、馬車を降ります。正門を抜ければ、まだ早い時間なこともあり、前庭にて多くの新入生が談笑していました。
新入生とはいっても、皆さん既に顔馴染みです。そこに緊張は然程ないでしょう。
「ナギサ。おはようございます」
「おはようございます。コノミさん」
「七尾君もおはようございます」
「おはよう。九重さん」
コノミさんは昔からのお友達で、九重グループのご令嬢でもあります。黒紫の髪を長く伸ばした和服の似合う彼女は、大きな瞳に鋭さと落ち着きを共存させています。
「入学式に間に合ったようで良かったですわ。昨日まで連絡が来なくて心配していましたのよ」
「ご心配をおかけしました。どうにか昨日の夜に東都まで辿り着きました」
「ランダムスポーンなんて、災難でしたわね。無事で良かったですわ」
「ありがとうございます」
「外の世界はどうでしたの? 私はまだ東都から出ていませんの」
「非常に刺激的でしたよ」
「楽しみですわ。魔物とは戦いまして?」
当たり障りのない範囲で外での話をしていると、聞き慣れた西洋訛りの挨拶が飛んできます。
「オオー。ナギサ嬢にアキト君。オハヨーございます」
「シャルさん。おはようございます」
勢いよく駆け寄ってきたシャルさんは、そのままコノミさんに抱きつくように挨拶をします。
現実世界と同じく、金髪碧眼のシャルさんはブリテン生まれのブリテン育ちです。輝くポニーテールが快活な彼女に一層元気な印象を与えます。
「ナギサ嬢。ワタシ忍者になったのデス。見ててくだサイ。忍法、分身の術」
両手で印を結んだシャルさんが二人に増えます。
「どうデスか? インクレディブルでショー?」
「はい。素晴らしい忍術ですね」
「ニンニンでーす」
仮想世界の特徴の一つに言語の壁がないことが挙げられます。古代文字等の例外を除いて、自動翻訳機能が備わっているのです。
シャルさんは英語が母語ですが、日本語も話せます。ただ現実世界での日本語は辿々しいところがあり、今のような勢いは英語の時しかありません。
翻訳技術によって、母語のみでも何一つ不自由ない時代です。多言語が飛び交う国々でも単一言語に依存する方々が多いと聞きます。
現実世界でも自動翻訳機能と似たようなことはされていますからね。異なるのは聞き手よりも話し手の感覚のようです。
「シャルったら一週間、こんな風にずっと喜んでいますのよ」
「無理もありません。忍者は彼女の希望職でしたし、かなり珍しい職ですから」
アキト君、忍者デースとシャルさんはアキトさんに絡んでいます。英語のできる彼はシャルさんには話しやすい存在のようです。
「留学の甲斐がありましたわね。本当に差があるのかはわからないのですけれど」
「そうですね」
それからしばらく四人でお話ししながら、入学式の時間を待ちます。
入学式は講堂で行われました。宗教的なデザインの取り入れられた教会のような建物は、その見た目に反して意匠以上の意味はないそうです。
学生と教師だけで行われる簡素な入学式です。保護者が入れないのは防犯上の関係でしょうか。
ランダムスポーンなどの理由で生徒の参加も任意ですから、本当に歓迎の意を示すための儀礼といった感じです。
純粋な仮想世界の住人の教師が幾人、自己紹介をしてくださいます。
こちらの世界で校長を務めるユレイ先生もその一人です。紫髪の彼女は長命な種族という噂もあり、二十代中ほどの外見でいらっしゃいます。
ユレイ校長先生は貫禄のある立ち姿から落ち着いた声を置くように生徒たちに語りかけました。
「まずは入学おめでとう。新入生の諸君。そしてこの世界へようこそ、夢見る人よ。私がこの学校の長、ユレイ=カガミネだ」
夢見る人、それは仮想世界の住人から見た現実世界の人々のことです。
「君たちにとってはこの世界が夢のようなものかもしれないが、喜びも悲しみも、生も死も全ては消えない過去になることを覚えておいて欲しい」
警告は必要です。生命の扱いの違いが生む犠牲は毎年積み重なっています。
私はその重みを噛み締めながら、冒険をしなければなりません。
「危険は少なく、希望は多い。そうやって君たちが成長していくことを私は望む。その先で、この広大で未知に溢れた世界を見てほしい。きっと世界は幸せに満ちている」
誰かにデザインされた世界ならば。
何処かそんな意図を感じる不思議な言葉です。
先生のような仮想世界の住人、いわゆる
そんな中、彼女の言葉は夢見人のことをよく考えられていることが窺えます。
「まずはこの学校を皆が卒業してほしい。すでに聞いているとは思うが、こちらの学校の卒業要件はたった一つ。東都ダンジョン第三十層に存在するセーフエリアに到達することだ」
東都ダンジョンは都市迷宮と呼ばれるタイプのダンジョンで、踏破という概念は存在しません。その代わり、新しい階層を発見すると始まりの広場による魔物不可侵領域が拡大します。
都市の拡大には、都市迷宮の探索が不可欠なのです。
「少しでも不安がある者は授業を受け、教員の指導の下、ダンジョンに挑むように。また、ダンジョンに挑む前には必ず三名の教員から認定を受けること。これまでの死者ゼロという実績あっての自由だ。優秀な者ほど無茶をして危険な目に会うことも多い。君たちの正しき成長を期待する」
それでも尚自由を求めて冒険をするためには、相応の能力が必要となります。
目下のところは、能力向上に努めるのが無難でしょう。ただアキトさんの能力のことを考えると安全なルートで旅をしながら、レベリングということになりそうです。
ユレイ先生のお話が終われば、新入生代表のが挨拶を返します。
コンパクトな入学式は恙無く終わりを迎え、新入生は各々で学校を見て回ることとなりました。
卒業生からの寄付もあり、広大な敷地に様々な施設が整っています。ここでの学校生活はきっと楽しいでしょうね。
行事も色々と用意されているようですし。
とはいえ。
「ナギサたちも能力測定に行きません?」
「行かないデスか?」
「今はやめておきます。旅に出る予定ですから、高スコアの施設利用権にも意味はないですし」
能力測定は学校が独自に行なっているテストのようなものでスコアに応じて、優先的に使用できる学校の施設などがあるとのことです。
「やっぱりナギサは学校には通わないのですわね」
「全くというつもりはありませんよ。ただ基本的にはそうなるかと思います」
「残念ですが、貴方らしいですわね。いつだって行動や決断が速いですもの」
「そうでしょうか?」
どちらかというとゆっくり考えることの方が多いかと自分では思います。ただ考えるポイントの違いから、そういう印象を与えることはあるかもしれません。
「旅なんて口で言うほど簡単ではありませんわ。皆、最初は少しずつ慣らしていくもの。それが賢明とも思いますわ」
「そうですね。しばらくは東都近辺で様子を見ることになると思います」
最低限の授業は受けていくつもりです。旅に出たいという気持ちは余りにも強いのですが、座学の重要性は理解しているつもりです。
それに学校に通うということも魅力的です。今しかできないことですし。それ以上に旅をする理由があったというだけです。
「仕方ない、ですわね。ナギサが無理をする姿は想像できませんが、くれぐれも命を大切にしてくださいまし」
「ええ。お互い無理はしない範囲で、来るべき時に備えましょう」
私たちは力を早急に蓄えておく必要があります。鎧将軍の言葉通り、勇者と魔王の世代であることは漠然とした共通認識です。
近々、人類が脅威に挑まなければならないことは明白であり、それまでに準備をしておかなければ危機を避けることすら儘なりません。
「そうですわね。では、私たちは能力測定に行ってきますわ」
「はい。良い結果が聞けることを期待しています」
コノミさんが
「もう少し学校を見て回ってから、帰りましょうか」
「ああ」と頷くアキトさんと共に散策することにします。図書室で調べ物をしてから、食事をとって、午後は能力測定の見学を少々。
そうして私たちの仮想世界の最初の一週間は過ぎて行きました。
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