第8話 牛飼い娘スカイ

「それで、スカイ様。昨日話していたとは何ですか?」

メーアは、昨日スカイとマヤの話していたのことが気になりスカイに尋ねていた。

「ん? あー、のことね! 実は昨日──」

 そう言うと、スカイはについて話し出した。



「えっ? マッサージ……ですか?」

「そうそう! マッサージ! でも今回はオイルマッサージだけどね。いつもお肉食べたら、マヤとお互いにマッサージしあいっこしてるんだ~!」

(……か、可愛い)

 無邪気で嬉しそうな顔をして話すスカイの姿を見たメーアは不覚にも頬を赤らめ意識してしまった。

「ん? メーア、顔を背けてどうしたの?」

 スカイはメーアの気持ちなどお構いなしにズカズカと顔を覗き込む。

「な、何でもないっ!」

「え〜、それ絶対何かあるやつ〜!」

「ほんとに何でもないからっ!」

「そ〜お〜?」

 訝しげな視線を送りながらも、スカイは頬を紅く染める可愛いメイドから離れた。

「みんな〜、餌の時間だよ〜っ!」

 スカイは牧場にいる牛たちに大きな声で呼び掛け始める。

(いつもあんな感じならいいのに)

「よしよし、みんな仲良く食べるんだよ」

 牧草がたくさん積まれた山に集まる牛たちを見ながら、スカイはみんなの健康チェックを行う。

「よしっ、異常なしっ! みんな〜、食べ終わったら遊んで来ていいよ〜」

 その声を聞いた牛たちは食べ終わったものから、再度牧場に散り散りになった。

「スカイ“様”いつも牧場のお世話をされているのですか?」

「メーア、ここに来てからずっと思ってたんだけど、そのスカイ様っていうの止めてくれないかな」

「えっ?」

「その様付けする呼び方、私嫌いなんだ」

「し、しかし、奥方様が……」

「もー、ダメだよ〜メーア? メイドは主の言う事をちゃんと聞かなきゃ。それが例え、お母さんの言い付けだとし・て・も」

 その瞬間、メーアの口元にふわっと柔らかい感触が襲った。

「ねっ?」

「〜〜〜〜〜!!!!」

 スカイはメーアに有無を言わさずに、いきなり接吻したのだ。しかも、堂々と唇に。

「えっ……えっ……えっ?」

 一体何が起きたのか理解が追い付いていないメーアの耳元でスカイは色っぽく告げる。

「もし、このことをお母さんに告げ口しなかったら、もっと愉しいこと教えてあ・げ・る♡」

「ほぁっ……!」

 そうして、スカイはメーアの耳を甘噛して、せっせと家へ戻って行った。

 暴力を振るわれ、メイドにされ、あまつさえファーストキスまで奪われた憐れな少女を牧場にただ一人残して……。



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