03 ルナと月



 とある小さな村に、ばけものの女の子がいました。


 名前はルナ。


 その女の子ルナは、人と違って月色の瞳をしています。


 他の人はそんな瞳の色ではありません。


 黒や茶色などばかりです。


 そのため、月色の瞳の女の子は仲間はずれにされていました。


 周りの人はこう思います。人と違う瞳の色だから、人ではない。


 だからルナはいつもばけものとして、腫物のような扱いをされています。


 けれどルナはそれを受け入れていました。


 みんなが自分に近づかないのは、当然のことだと。


 なぜならルナは、その星の人間ではないからです。


 空に浮かぶ球体。


 夜になると淡い光を放って世界を照らしてくれている「月」から、落ちてきたものでしたから。


 月に住む者たちはみんな、月色の瞳をしています。


 だから居場所がないルナは、月へ戻ろうと考えました。


 月に戻ることができれば、自分と違う瞳の色をしたものはいません。


 みんな優しくルナのことを、受け入れてくれると思っていました。






 月に帰る事を決めたルナは、その日からは一生懸命、頑張ります。


 帰るための方法を考えて、必要なものを探したり、揃えたり。


 空を飛ぶ船を作るために、いろいろな物を作ったりしていきます。


 しかしそれは簡単にはいきません。


 その星に住む人たちは、誰もそんな船を作り上げたことがないからです。


 けれど、誰も作ったことがないものでも、ルナは頑張り続けました。


 一生懸命やれば、いつかきっと完成させることができるはず、と、そう思いながら。


 軽い素材で作った船を飛ばそうとしたり、ふわふわの羽を背中につけて飛ばしてみようとしたり、試行錯誤を続けます。







 そんな苦労のかいあって、ルナはその星で初めて空を飛ぶ船を作り上げました。


 とても丈夫にできたその船なら、誰でも月まで行くことができるでしょう。


 たくさんの人たちに見送られて、星を飛び立ったルナは無事に月へ到着します。


 そこには予想通り、ルナと同じ瞳色をした者たちがいました。


 けれど、ルナはまた、今まで住んでいた星へ戻っていきます。


 その時のルナは、もう月へ帰ろうとは思わなくなっていました。


 なぜなら、月色の瞳をしているものを、皆が受け入れてくれるようになったからです。


 ルナの事をばけだと思うものは誰もいませんでした。






 ルナは今まで、船を作るために生えすぎた森の伐採をしたり、


 羽を研究するために伝書鳩の飼育をこなしたり、


 新しい魔法の開発に悩む魔法使いの手伝いをしたりしていました。


 そうすることで人々は、自分たちが触れ合った女の子が瞳の色以外で変わったところがないのだと、分かるようになりました。






 だから、ルナにはもう居場所があります。


 自分の居ていい所を求めて、月へは行かなくていいようになったのです。



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