02 嘘
あるところに、子供のばけものがいました。
その子供のばけものは、普通の子供より体が大きくて頑丈だったため、人間の子供達から仲間はずれにされていました。
だから、そのばけものの友達は、たった一匹だけ。言葉を話す蛇しかいません。
でも、そのばけものはそれでも満足でした。
なぜなら蛇はとっても物知りでお話し上手で、一緒にいてとても楽しかったからです。
「君と一緒にいられるから、他の友達なんていなくても平気だよ」
そう言えるくらいです。
「今日は何を話してくれるの? 虹ができる理由? それともシャボン玉を作る方法?」
ばけものと蛇は、何年も一緒に遊んでいたので、親友のように思っていました。
しかしある時、蛇が嘘をつきました。
それはとても寒い冬の事です。
ばけものの子供に、「とってもあたたかくなる方法をおしえてあげる」と言って、嘘をつきました。
「本当? うちの家は隙間風がひどくて困ってたんだ。その方法があれば、お父さんやお母さんも喜ぶよ!」
喜ぶばけものに、蛇はにっこりと笑いながら教えます。
家の中の、燃えている暖炉に油をかければ、もっとあたたかくなれるよ。
と。
危なくない方法だから大丈夫。
と。
たくさんの油をかけたら、下手に何かをせずに放っておくといいよ。
とも。
「分かった。教えてくれてありがとう!」
ばけものは、その言葉を信じました。
蛇は今まで、嘘をついた事がありません。
ずっとばけものに、本当の事だけを話してきました。
だから、今回も本当だと、思ったのです。
ばけものの子供は、家に帰ってから、さっそくその方法を試してみました。
時刻は夜遅く。
激しい吹雪の日。
もう少しで、ばけもののお父さんとお母さんが帰ってきます。
ばけものでも、愛情を持って育ててくれる、とっても素敵な人間の両親が。
ばけものは、家をあたたかくしておけば喜んでもらえると思って、胸をはずませながら油の入った缶を手に取りました。
燃える家を見て、蛇は大喜び。
「馬鹿だなあ、火に油を注ぐとどうなるのか知らないのかい? まあ、教えてないからしょうがないけど」
家はごうごうと、すごい勢いで燃えていきます。
あまりの勢いに誰も近づけません。誰もその火事を、消し去る事はできません。
「たくさんの油なんて注いだら、火が燃え広がるにきまってるだろ?」
その蛇は本当は悪い蛇でした。
ばけものと仲良くなっていい蛇のふりをしていたけれど、人が困る様子を見るのが好きなのです。
ごうごうと燃える家を見て蛇は大笑い。
燃えている家に入っていく二人の大人を見送って、最後まで見ることなくその場を去っていきました。
蛇はもう、今までの遊んでいたばけもののことを忘れてしまいます。
もうすでに、
「どこかで一人ぼっちになっているかわいそうな子供はいないかな」
と、次のターゲットのことを考えていました。
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