セーフハウスのキッチンにて


Fox/Mike/Rock/Jack/Tatara/Cyan/Nanashi/Giga




-場所:エニグラドール/セーフハウスのキッチン

-記録:ヒューマノイド各機およびフォックスが調理した際の成果物と、成果物に対するコメントについて

-備考:味覚に興味を示したホノメによって計画された。普段は調理を担当しないメンバーも記録に参加し、8日間に渡って記録された。撮影者はホノメであり、記録動画には彼女によるインタビューや相槌が含まれている。



-フォックス

-豆の缶詰と1cm角に切ったプラントミートに塩を加え、短時間煮たスープ。やや薄味。特に参考にしたレシピはない。フォックスは手慣れた様子で、15分ほどで調理を済ませた。ヒューマノイドらが長期不在の時は、この料理ばかり作って繰り返し食べているらしく、食事にあまり頓着しない様子が窺える。

J:「まずくはない。まずくはないんだよな」

C:「この感じはアレや、アレ……宇宙食?」


-ミケ

-三段重ねの基本的なホットケーキ。頂上に植物性油脂の小さなブロックが乗っている。丸型を使わず、フライパンの上に生地を落として焼いた薄めのもの。一段目の表面は焦げ気味でまだら模様になっているが、二段目、三段目は滑らかに焼けている。周囲はギガの手助けを勧めたが、ミケは自力でやってみたいという意思を表明。危なっかしさはあるものの最後まで作って見せた。

N:「うまい!最高!天才!ありがとう!」

G:「最初にミケと作った日を思い出した。なんだか泣いちまいそうだ」


-ロック・ジャック

-大量のゼリー・パンチ。キッチンにある中で最も大きなボウルになみなみと入っている。市販の安いゼリー菓子を荒く砕いたものが目一杯入れられ、それらは陽気なピンク色の清涼飲料水に浸っている。彼らが行きつけの青果店で買った、マリネリス産のフルーツが少しだけ入っている。彼らが調理を行ったあとのキッチンは、まるで嵐が通りすぎたかのように散らかっていた。

T:「僕も……ああなりたい……」※清涼飲料水を豪快に注ぐ双子に対して

M:「おいしいなのです、きらきらなのです」


-タタラ

-基本的なフィッシュ・アンド・チップス。保存用に半乾燥させた白身魚を用いている。ゼウスの福祉関連の部署が公開しているレシピを参考にした様子。タタラはスケールや温度計を用いて、材料の量や油の温度を厳密に測定しながら作業を行った。想定される所要時間は20分程度だが、彼は作業に約1時間を要した。キッチンからは何度か「"ひとつまみ"って何グラム!?」と叫ぶ声が聞こえた。

J:「まじめ。ふつうにうまい」

F:「化学の実験をしているのかと思ったよ」


-シアン

-シンプルなビスケット。5センチほどの厚みをもつスコーンに近いタイプで、掌ほどの大きさがある。生焼け気味。"3種の材料でできる簡単ビスケット"というレシピを参考に作られた。作業の間はキッチンから「うわー!」「あっ」「ここで隠し味」といった声が聞こえ、試食担当者を怯えさせた。

T:「絶妙に渋くてしょっぱい。どうして……」

G:「レシピに従え! アレンジするんじゃねえ!」


-ナナシ

-安価なプラントミートのパティをラードで焼いたもの、市販のグレイビー風ソース、不明なハーブなどを挟んだ簡易的なサンドウィッチ。プラントミート以外の野菜は一切含まれておらず、大きさは一人前の約1.7倍ある。ナナシの放り投げるような作り方により、見映えは非常に悪い。

F:「うん、うん、悪くない…………ん? フフ……何だこれは……んふふふふ………」

C:「大麻かなんか入れた?」


-ギガ

-事前に蒸しておいた白身魚と玉ねぎをソテーし、こんがりと焼き目をつけたもの。乾燥野菜を干し肉のブイヨンで煮たスープ。代用澱粉マッシュポテトと全粒粉をこねて作ったパスタに、チーズ風調味料とミルクのソース。試食予定者はナナシとロックだったが、その場にいた全員がテーブルを取り囲んだ。

N:「コックが本業、傭兵は副業」

R:「なんだァ!? またクリスマスやるのカ!?」



-インタビュアー・ホノメのコメント

「あまりにも多種多様で、何が正解なのか分からなくなってしまったわ。けれど、味覚とはそういうものなのかもしれない……と思いましたの。私が視覚や聴覚を駆使して、絵画や音楽を嗜むのと同じように」

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