第7話 とりあえず、装備を揃えたい

「クロ姉起きて〜!あ、起きた。おはよぉ!」

「むにゃ…?あ、お、おあようシロ」

やばいわ。早く起きるつもりだったのに寝過ごしてしまったわ…

そういえば私は朝にそんなに強くないんだった。

寝ぼけてるし呂律回ってないし。

既視感があると思ったら、あの頃もこんなことがあったっけ。


「クロ姉朝だよ!起~き~て~!今日はお父さんと病院に行く日でしょ~!」

「むにゃむにゃ…あ、おはようシロ。また私は寝坊していたのかしら?」

「昨日はダンジョンでいつもより頑張ってたみたいだからぐっすりだったよ!それはもうすやすやと……」

昨日は、確かに1時間かそこら長めに潜っていた気もする。

……というか急がないとお父さんの病院が!

「急いで支度するわ。シロは…もう準備万端みたいね…」

そんなこんなで大急ぎで支度して予定時間の28分前についたクロティルド一行であった。


今日は病院ではなく、新しい装備を買いに行く日だ。

「よし、準備できたわ。ナタリワいきましょう。フルールさん、行ってきます」

「クロ姉行こ~!それじゃあお母さん、行ってくるね!」

「はぁい。二人ともいってらっしゃい。良い装備買えるといいわねぇ。じゃあ、おやすみ~」

ふぁぁ、とフルールは顎が外れるんじゃないか、というぐらいに口を大きく開けて欠伸していた。

フルールさんも朝弱いのね、わかるわ……

最後の一声が朝に言う言葉でもないし。

「クロ姉~、まずは何から買いに行くの?武器から、それとも防具から?」

「そうねぇ、実際どっちから買いに行っても変わらないのだけど。ナタリワは逆にどっちからいきたいのかしら?」

「うーん、じゃあ武器かな!他にどんなロッドがあるのか見てみたいし!」

「じゃあ最初に向かう場所は、プレコール鍛冶屋にでもしましょうか。

あそこならそこまで値が張らないお手頃な価格で色んな種類の武器が見れるわ」

「目的地も決まったことだし、しゅっぱ~~つ!」

ナタリワの一声で二人はプレコール鍛冶屋へと向かった。

ナタリワ家から徒歩にておよそ15分にある、

青く澄み切った空へ雲が湧き出る様に煙がもくもくと出ている武器屋に到着した。

「あい、いらっしゃい。二人はパーティ、いやペアかね?まあ気楽に見て行ってくれ、気に入ったもんがありゃあ少しはまけてやるよ」

そう言ったのはこの店の店主兼鍛冶師のヴァレンティンである。

見た目は少し、いやだいぶ強面ではあるが人は見かけによらずとはこのことだ。

少々言い方は強気だが客に優しく接していること、店の広さ、客の数から見るに

店主ヴァレンティンとこの店は人気なのだろう。

「クロ姉見て!このロッドこの大きさなのに軽いの。

綺麗な青み掛かってて所々に赤色があるの!

おしゃれだし、私このロッドにしようかな~」

早速ナタリワは自分の持ち武器を決めたようだ。

今使っているロッドは深緑色だったので、昔と変わらず青系統色が好きな様である。

「いいわね。貴方に似合ってるわ。

それにしても本当にこの大きさでこれだけ軽いのね。

剣だとこうも軽くはならないもの」

えへへ、と何故かナタリワはさも自分自身が褒められたかの様に笑っていた。

私も自分の剣を決めなければ。

今の剣は昔の私にはぴったりなものだったが、弱くなってしまったこの身では扱うことは難しいだろう。

となると、幾らか筋肉量が落ちた私でも扱えるような、それこそナタリワと同系の軽め且つ切れ味が良い物を選ぶべきか。

だとするとこちらの刃渡り65センチ程の、今の剣よりも少し幅が細くなった物にしようか。

ただ柄の部分の色の種類が他の武器よりも幾分か多い気がする。

ここは妹を頼るべきかもしれないわ。

「ねぇナタリワ、私はどの色のがいいかしら。」

「う~ん、クロ姉は髪の毛の色が真っ赤だから、ここは統一してこの赤とかどう?これならそこまで目立つ訳でもないし、いいアクセントになると思うんだ~」

ナタリワの言った通り、私は生まれた頃から純粋な赤毛である。

母は赤とは少し違う朱色の髪で、父は黒色の髪だった。

そういえばシロの髪色は私と同じ赤に少し黒み掛かった色だったけど、ナタリワは純白なのね。

「じゃあこの赤色の剣にするわ。選んでくれてありがとね~」

ナタリワは自分が選んだ物に決まったのが嬉しいようで、

シロと話していたあの頃の笑顔と重なって少し目が潤っていた。

ヴァレンティンに自分達が決めた得物を持っていくと、

値札に書いてあった値段よりも2割程安くしてくれた。

(因みに、ナタリワが買った青いロッドは【フィアンマトォーノ】という名前で、

私が買った赤い剣は【ヴェルメリュフトヒェン】という名前だった。)

顔は怖いけど本当にいい人だ。やはり人は見かけによらないのだ。

ナタリワもそう思ったみたいで目が合った。






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