第3話 努力が必ずしも実るとは限らない

家族が居なくなって孤独になった。

クロティルドはもう昔みたいに弱くは無い。

皆からも最強戦士、この世界で1番強いと称えた。

「だって私、もう二十一歳なのよね」

あの事件から約四年の年月が経ち、あの日の絶望は誓いによって、願いによって、消えつつあった。



どうして、父とシロと一緒に私も居なくならなかったんだろう。そうしたら、また家族皆で集まれたかもしれないのに。

届かぬ願いを胸に今日から頑張って行こうと十七歳のクロティルドは心に決めた。

十九歳を過ぎ、またいつもの様にダンジョンへと潜りひたすらに、ただひたすらに剣を振り

幼き頃に見た母の背中に憧憬を当てて、モンスターと対峙した。

「はっ!!せいっ!!」

いつの日か話にも出てきたグバラシオスのボス巨体だ。

グバラシオスの素早い攻撃を軽やかな足取りで躱し、すぐさま反撃の斬撃を打ち込んだ。

「流石はボス、といった所ですね、」

「私の速さには!付いてこられないみたいだけ、ど!耐久力が高いわね…」

戦いながらそんな独り言を言っていた。

「それじゃあ本気で行きます!ファイアル!」

炎属性の魔法を剣に打ち、その赤く光った斬撃をグバラシオスに放ち、灰へと葬った。

「最近身に付けた魔法が役に立ったみたいね。これなら普段使いも出来そうだわ」

そんなクロは換金所に寄った後、グバラシオスと戦ったからか、自然と足は肉屋へと向かっていた。

(ふふっ、あのモンスターを見るとボア肉のストーが食べたくなるのよね。我ながら単純だわ。シロ、父さん、元気にしてるかなあ。もちろんこの世には居ないけどね…)

懐かしい、この味。あの時のシロが私の話を聞く時の楽しそうな顔、それを見て微笑んでいた父、全てがこれを食べることで思い出されていく。悲しいことではあるが、同時に嬉しいことでもある。今でも家族を感じられるのだから。

ここから毎日毎日ダンジョンへ潜り鍛錬を続けた。

二十二歳になった数日後、ダンジョン内にドラゴンが出たと特別クエストが出た。クエストとはダンジョン内でのアイテム収集やモンスター討伐等を熟すことで、資金を得たり出来る物のことである。

ドラゴンとは滅多に出ることの無いモンスターであり、200,300年に1度出るか出ないかと言われている。

だが異常なのはこれだけではない。実はドラゴンは十三年前にも出現していたのだ。

その時にドラゴンと相打ちになったのが、クロティルドの母だった。

まだ年が十にも満たないクロティルドが最後に母親を見たのがその日である。

そんな、あの母でも相打ちになったドラゴンが、また出たとされた。

ドラゴンは下の階層に留まっている為上階層には影響は出なく、未だ低級冒険者はゴブリンやスムリンと戦っていた。

上級冒険者となっていたクロティルドはドラゴンと戦う為いつにも増して鍛錬を激しくなっていた。

そして、ドラゴン討伐の特別クエストを"ソロ"で受注した。

今の時点でもクロティルドに並ぶ程の冒険者は余り居らず、周りの皆はその知らせを聞きざわざわとしていた。

「これが、ドラゴン…十三年前あの母と相打ちになったと、言われる」

ドラゴンは戦いを始める合図なのか、地の割れる様な、どこか懐かしげを感じている様な咆哮をあげた。

「望む、ところだっ!!」

ドラゴンの爪、牙、尾、火のブレス、

色々な猛攻がクロへと雨の如く襲いかかる。

「ウォルフリ!」

水氷属性の魔法を剣に打ち込み激しく斬撃の舞を踊る。

お互いの血が、咆哮が、火が氷が、牙が鎧が、

昔の家族団欒の会話の様に飛び交う。

両者共々体力がすり減ったその時、火に慣れているハズのドラゴンへと眩い熱が降り注ぎ、

灰と化した。

クロティルドは何が起きたのか理解出来ないまま、当たりを見回した。

そこには黒き魔道士が悠然と立っていた。

「貴様がクロティルド=スカラフィヌか」

低く重い声でそう話し掛けられた。

「私がクロティルド=スカラフィヌです」

その瞬間最強の戦士の、いや、だったクロもドラゴンと同じ形になった。

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