第2話 マエストロと機械人形(2)

「マエストロ!!」


立ちはだかった機械人形に阻まれ、一宮は絵描狩りの元へ辿り着けずにいた。


「いやはや、かの有名な八月朔日統香様にこうも容易くお会い出来るとは。僥倖にございます」


「うっさい!小脇に抱えるな!私はサイドバックじゃねぇんだぞ!!」


統香の文句を無視した絵描狩りは、機械人形に囲まれた一宮を指差して続ける。


「貴女のことも存じておりますよ。一宮様。

戦闘技術が極めて高く、射撃の腕もかなりのもの。

しかし筋力は並以下♪多勢に無勢コンボでちゃんちゃん♪」


そう言い終わると、一宮へ差した指を下へと向けた。

機械人形を操るサインと気付いた一宮が自身を囲む機械人形の隙間を縫って回避を試みるも、すんでのところでメイド服のスカートを捕まれてしまい、地面へ激しく押し倒された。


「うぁっ!!」


「一宮!!」


「八月朔日統香、人間国宝であった八月朔日統悟の一人娘。絵の才覚こそ類を見ないものの、それ以外は並以下のヒキニート♪」


「ふざけんな!作品収入あるわ!!」


「マエストロ…!」


一宮を押し潰す機械人形は五機。そしてその周囲を囲むようにさらに五機の機械人形が待機していた。

一宮の脱出は絶望的であった。


「お前!一宮は関係ないだろ!そのポンコツをどけろ!!」


絵描狩りを強く睨みつけながら、統香はそう訴えた。


「別に構いませんよ?こちらもあまり派手にモメたくはないですから。ただその代わり…ね?」


相手は絵描狩り。続きは言われずとも十分すぎるほどに理解していた。


「なに、簡単なお仕事ですよ」


「マエストロ駄目です!そいつの言う通りにしてはっ、あぁっ!!」


二人の会話を聞いていた一宮は、機械人形の山から抜け出そうともがいていた。しかし筋力のない華奢な身体では当然抜け出すことなど出来ず、機械人形に覆われて押し潰されてしまった。


「一宮っ!!」


一宮の身を案じ叫ぶ統香のこめかみに、絵描狩りは銃口をゴリッと強く押付けた。


「お静かに願います。今から一つ、お願いを申し上げるのですから」


「…いや、わかるよ。絵描いて欲しいとかっしょ?それも風景画か、風景画の模写」


先程までとは打って変わった落ち着いた態度に、絵描狩りはわずかに動揺し、そして無意識に、押し付けていた銃口を離していた。


「…よくわかりましたね」


「攫われた人の特徴考えたらわかるよ。みんな風景画が得意だし、元春菊とかモロじゃん。

あの人何気に何でも出来るし…変装してたってことはもう攫ってんでしょ?」


「ええ。なかなかに手古摺りましたが、どうしてももう一度目にしたい作品がありましてね…。当然、貴女の力も必要なんですよ。

 しかしそれなら話は早いです。如何なさいますか?」


もはや選択肢などない。

この女は一宮を守るため、自ら私のもとへ来るしかない。


絵描狩りはそう確信すると、了承の返答の前に相変わらずの下卑た笑みを浮かべていた。

統香は機械人形に押し潰されて姿の見えなくなった一宮と、空を仰いでニタニタと笑っている絵描狩りをそれぞれ一瞥してから口を開いた。


「んー…いいかな」


イエスを確信していた絵描狩り。

しかしいざ来た返答は、了承とも拒否とも取れる曖昧なものであった。


「…は?…ハハ、ハハハハハハッ!!」


絵描狩りはこれを拒否と受け取った。

当然統香の意思は断固拒否であるのだが、統香のこの発言は、絵描狩りからの誘いに対する返答ではなかった。

それに気付いていない絵描狩りは、一宮を押し潰す自身の機械人形に”完全破壊”の指示を出そうと引き金にかけていた指を伸ばす。


「では、一宮様は有用なパーツとして頂戴するとしましょ…う…」


そうして彼は異変に気付いた。

抱えていた統香も銃も、無意識に地面へ落としてしまうほど、その光景に釘付けになっていた。


「痛っ!…ちょ、淑女を降ろす時はもっとゆっくり…

あ、気づいた?そういうこと」


いつの間に…?どうやって…?!


「さすがにまだまだ余裕でしたよ。マエストロ」


先程まで一宮を押し潰していたはずだ…

何故だ…何故私の機械人形は…!!


「タバコのお礼だよ。んじゃ、よろしくね」


「お任せください」


統香は花壇の傍に腰を下ろすと、ピースを開封して火を点けた。


「お花にもたまにはヤニ吸わせてやんないとね~」


未だに状況が飲み込めない絵描狩りは、精一杯といった様子で震えながら言葉を絞り出す。


「一宮お前…私の機械人形はどうした…?

じゅっ、十機はいたはずだ!」


「あァ、有用なパーツとして頂戴しました」


そう言った彼女の両手には、先程までは無かった二丁の拳銃が握られていた。


「頂戴…した…?全部…?」


「いえ、これに必要な分だけ。

余りはまぁ…週末にでも」


ハッ!そうか!そうか!これが一宮のアトリビュート…『再構築』か…!

対象を思うままに分解し、任意の形状に作り変える能力…!


「ク…クククッ…!クハハハハッ!

舐めるなァ!!」


絵描狩りが目の前に指を差すと、五機の機械人形が空から勢い良く降ってきた。


「…産廃増やさないでくれませんか。誰が処分すると思ってるんです」


この手のタイプは手数に弱い!圧倒的母数の差で捻り潰す!!


「生憎ですが、産業廃棄物になるのはあなたの方ですよ」


その言葉と共に、さらに五機の機械人形が絵描狩りを囲むように降り立った。


「う~ん?」


統香は空を見上げた。しかしそこに飛行機の類はなかった。


なるほど。こいつの機械人形は飛行型か。装甲のタイプから…四体かな。他の機械人形は持ち上げたのか他にカラクリがあるのか…なんにせよ完璧に景色に溶け込む迷彩もあるとなると、かなり優秀そうじゃん。


「一宮~そいつらん内の何機かは空飛ぶから、派手に頼むよ~」


「承知しました」


一宮は自身の胸の前で銃をクロスさせて構えると、疾風のように駆け出した。


「こちらこそ派手に殺して差し上げますよ!

 行けっ!!」


絵描狩りはまるでオーケストラの指揮者のように腕を振って機械人形を繰り出した。

二機を自身の護衛に残し、飛行型と地上型それぞれ四機ずつを器用に操って一宮を前後左右で囲み、常に多対一になるように立ち回らせながら攻撃を繰り出す。そうして統率の取れた動きで彼女を追い詰めようと、怒涛の責めを繰り出す。

対する一宮は、両手に携えた銃を巧みに扱って攻撃を捌いていく。時には跳躍し、重なる機械人形の腕の隙間を、股の下を、身を捻りながら通り抜けて躱していく。

加えて彼女はそうした動きの中でも、機械人形の装甲の隙間を的確に撃ち抜いていた。内部はさほど頑丈ではないため、撃ち抜かれ破損した箇所からは煙があがる。しかし、機械人形は頭部の核を破壊されない限り、四肢をもがれようと動き続ける上に、肝心の頭部は分厚い装甲によって守られていた。

機械人形の攻撃は一宮の服の裾すら捉えられず、また一宮の攻撃も決め手に欠けている。膠着状態を打開すべく、ヒットアンドアウェイに徹していた一宮はここで攻勢に出た。

正面の機械人形が繰り出す大振りをしゃがんで躱し、懐に潜り込んだ一宮は、機械人形の腹部に背を押し付けた。それを支えにして頭部の下から装甲に銃口を押し付けると、一宮はマガジン内の全ての弾をそこへ撃ち込んだ。

既製品より遥かに高威力の弾丸を撃ち込まれた機械人形は、装甲の隙間から電気を漏らすと、破壊された箇所から煙を噴き出した。

しかし核の破壊には至っておらず、この隙に一宮は周囲を囲まれてしまった。

この窮地、一宮は一斉に掴みかかって来る地上型の機械人形を、高く跳躍することよって回避した。


が、絵描狩りの狙いはここであった。


戦闘が始まってから常に空いていた空中。いざという時の回避先として一宮が最も好んでいた空中。

一宮の両足が地面から離れたその瞬間、地上型の機械人形は銃の機構が内蔵されている指先を構え、飛行型は彼女の先を行くように大きく飛び上がった。

絵描狩りの使役する機械人形は全て銃撃が可能であるのだが、この瞬間の為にこれまでの攻撃手段はその全てを打撃のみに絞っていた。


身動きの取れない空中での、機械人形による一斉射撃。それこそが小さく素早い一宮を確実に仕留められる唯一の方法だ。

こいつの選択肢に銃撃は含まれていない。奴が最高到達点に達した直後、上から下からの集中砲火でお陀仏です!


勝利を確信した絵描狩りは、それまで指示に充てていた両手を握りしめると達成感に満ち溢れた絶頂顔で空を仰ぐ。

大きく深呼吸をし、いよいよ統香を攫うため彼女へ身体を向けた。


「ふぅ、これで終わr」


「学習しないな。お前」


その言葉にハッとし振り返る。

こちらに目もくれず、煙を吐いていたその横顔の先。


黒い…球体?!


絵描狩りは自身の機械人形がその球体に向かって攻撃を続ける様子から、それが一宮、もしくは一宮にまつわる”何か”であるということがかろうじてわかった。


一宮に向けて放たれた全ての弾丸が…あの球体に飲み込まれている…?

…いや、溶かされている・・・・・・・…!?


「ちゃんと見てなよ。キレイだから」


一宮が指を鳴らすとその液体は無数の巨大な針を生やし、機械人形の頭部の核も何も彼もが関係ないほど圧倒的な物量で全身を隈なく貫いた。


「…は?」


一瞬の出来事だった。

主の護衛に回っていた二機だけを残して、絵描狩りの機械人形は殲滅されたのだった。


「まぁ、こんなものですよね」


「た~まや~!」


絵描狩りは膝から崩れ落ちた。


「…終わった…」


十八機投じても歯が立たなかったこの化け物に、残りの二機で一体何ができると言うのか。


絵描狩りが自身の敗北を悟ったその時、護衛に回っていた機械人形が突然目の前に飛び込んできた。

間髪入れずに轟音が響く。

吹き出す煙の隙間から現れた、貫手の形をした白い手が一宮のものとわかると、彼は悲鳴よりも先にある疑問が口をついて出た。


「一宮…筋力は並以下のはずだ…」


「…私の知り合いに、手刀一振りで山を均せる機械人形がいます。

水切りに投げた小石がシロナガスクジラの胴を貫通したり、敵を踏み抜いた勢いで地盤沈下を引き起こしたりする機械人形も。

私にはそんな芸当とても出来ません。

非力な私には、この程度のことしか」


一宮がそう言って腕を振り上げると、機械人形の頭部は裂け、核が完全に破壊された。

頭部の中心にある赤い瞳の光が消える。それは機械人形の行動停止を意味する。

それを確認した彼女は、流れるように絵描狩りの両膝を撃ち抜いた。


「あ"あ"っ!!!アッ!!ハァアッ!!」


「ナイッショ〜」


統香は煙と共に歓声を送る。

絵描狩りにはもう先程のような余裕はなく、激痛に耐えることで精一杯なのか、怯え切った表情で一宮の顔を見つめ、どくどくと噴き出す血を必死に抑えながら呻くばかりであった。


「二発とも膝のお皿にど真ん中ですね。 どうですか、私の射撃の腕は」


「ひぃ…!!ひぃいい…!」


絵描狩りは地べたを這った。機械人形の破壊によってもうもうと立つ煙の奥に立ち、二つの瞳を光らせる一宮からの逃走を試みていたのだ。


「おーい、聞かれてんぞ~」


「ひっっ!!」


しかしその先には既に統香が立ちはだかっており、前後を挟まれた彼は完全に退路を断たれてしまった。


「穴、足りないですかね」


「ひゃっ、すっ、凄いです…凄いですぅぅううう」


もはや喉に上手く力が入らず、声を張り上げる事も叶わないほどに怯え切った絵描狩りの、哀れな叫びであった。


「こいつ死ぬ程情けなくなってね?」


「大方、荒事は全て兵隊に任せていたのでしょう。アトリビュートのない量産型とはいえ、二十機もいればまぁまず負けませんからね」


「引き連れてる兵隊が多い奴は雑魚って、相場決まってんの?」


「飛行型とか使い方によってはかなり厄介なのに、主が無能だとこんなにもあっけないんですね」


「あ、そうなの?」


「アトリビュート持ちを仕留めた例もいくつかあるくらいですよ」


「マジ?こいつやばくね?」


「元春菊様の演技はお上手でしたし、役者になられた方がよろしいかもしれませんね」


あまりに好き放題言われ、僅かばかり残っていたプライドが彼の眉間に深い皺を作った。

強い憎しみと怒りに満ちた眼光を向けられた統香は、わざとらしく煽り続ける。


「アッハハ!確かにぃ。

…あれ、君眉間の皺凄いね?もしかして図星?役者志望?」


プライドを踏み躙られた絵描狩りから、バキン。と、何かが割れる音がした。

それが怒りのあまり強く噛み締めた彼の奥歯が砕けた音だと気付くと、統香も釣られるように怒りを露にした。


「は?何キレてんの?

こっちは別に眼球焼いてやってもいいんだぞ」


文字通り”目の前”に煙草の先端を突き付けられ、背中には銃口を押し付けられた時、絵描狩りは悟った。

この二人は本当にやる。と。


抵抗する気力は完全に無くなった。


「って、いやまぁ、こんだけ煽られたら普通キレるか。ごめんよ絵描狩りさん。

私たちねぇボコんなった君が見てみたくて、ちょっと芝居打っちゃった」


統香は満面の笑みで言った。

そしてその言葉に絵描狩りは耳を疑った。

意味がわからなかったからだ。


全て芝居…?全て演技…?元春菊は…?


何もかもが理解出来ず、辛うじて一言絞り出すのが限界であった。


「…い、いつから…」


「んー答えてほしいならまずさ、ごめんなさいしよっか?」


もはや言われるがままの絵描狩りは、血が流れ続ける両膝に鞭を打って居住まいを正すと、頭と両手を強かに地面へ打ち付け、喉が張り裂けんばかりのつもり叫んだ。


「すっ、すみませんでしたっっ」


結局喉に力が入りきらず、先程同様に微妙に力の抜けたような、情けない叫びとなった。



どれぐらい土下座をしていただろうか。沈黙に耐えかねた絵描狩りは様子を伺おうとチラリと視線を上げた。

するとそこには一宮作、自身の兵隊であった機械人形製の拳銃の銃口が、そのライフリングをハッキリと確認出来るほどの距離に構えられていた。


「ッッ!!?」


驚きのあまり頭を上げると、ヤンキー座りをした一宮が眼前で銃を構えており、煙草の煙を吐き出すと呆れたような声音で発した。


「許されるわけがないでしょう…?」


「え…ひぇ…」


表情は変わらない。真顔のまま続ける。


「マエストロに手ぇ出したのに、脳天ブチ抜いて楽に殺して差し上げるんですから。喜んでください」


「アッハッハッ!やっちゃえ〜!」


絵描狩りの背後から野次が飛ぶと、


「ひぇっ、はぁぁ!ぁぁぁぁぁぁ!」


彼の情けない断末魔、そして数発の銃声がこだました。



* * *



「ふぅ、とりあえず引き渡しお願いね。元春菊」


後ろ手に縛られ両膝から血を流し、白目を剥いた絵描狩りの無惨な姿がそこにはあった。


やりすぎだろう、こいつら…。


「よろしくお願いします」


元春菊は大きなため息を吐くと、頭を掻き毟りながら言う。


「はあ…お前らなぁ、もう少し穏便にならんかったんか」


「いやぁまぁ一宮の判断だから…。

それに元春菊の影武者作戦もハマってさ、誘き出せたんだからいいじゃん…?」


元春菊はこれでもかと目を泳がせる統香から、一宮へと視線を移す。すると彼女は悪びれもせず真顔で返答した。


「マエストロに触れたので。それに、マエストロも"やっちゃえ〜"と」


「ちょっ!」


「ほう…?」


「あっ、きょ、興が乗っちゃって…へへ…」


こいつらには何を言ってもダメだな…。


へらへらと笑いながら後頭部を掻く仕草をとる統香を見てそう察した元春菊は、再度大きなため息を吐いた。


「はあ…まぁ幸い、膝以外に目立った外傷は無いからまだいいものの、近距離で四肢の皮一枚に銃を乱射してはな、トラウマんなって記憶に障害が残りかねんぞ」


「でもこいつが捕まって元春菊も一安心じゃない?」


「それはそれだ!

ったく…協会への言い訳を考えんといかん俺の身にもなれってんだ…」


「えへへ」


和やかな解決ムードの中、突如一宮が爆発した。


「あ…ヤバ…」


もうもうと立ち昇るその煙の中から、等身が赤ん坊のようになった一宮(よんさい)が姿を現した。

一歩、また一歩、てちてちと音を鳴らす。

そうして統香の膝にしがみついた。


「そんなことよりまえすとろ、きょうのじゅぎょうはどうされますか」


「そんなことだと?」


自身の苦労を"そんなこと"と目の前で一蹴された元春菊は服の裾から電子タバコを取り出すと、怒りを飲み込むように深く吸った。


「ぶはぁ~…」


「今日はもう疲れちゃったから…また明日?」


おあずけを食らってしまった一宮はむっと大きく頬を膨らませると、地団駄を踏みながら声を張り上げ、統香のスカートを強く引っ張りごね始めた。


「まえすとろとくになにもしてないじゃないですか!

じゅぎょお!ねぇじゅぎょお〜!」


「元春菊…これ、いい加減なんとかなんないの?」


「 それがこいつの対価だからな…。

いつものように約束さえしてしまえば元に戻るんだし、そもそもこれのおかげであんな無茶苦茶な事が出来るんだ。いい加減我慢しろ」


一宮と元春菊を交互に見つめる。

足元にはむーっとした顔でスカートを引く一宮、正面には諦めろと言うかのように頷く元春菊。


「はぁ…じゃあちょっとだけね」


選択肢はなかった。


「ありがとうございます」


一宮は再度爆発。晴れた煙の向こうにはいつもの一宮(二十歳)がいた。


「統香…そう睨むな。こればっかりは運だ」


選択肢などハナからないことに変わりは無いのだが、統香は元春菊を睨む他なかった。


アトリビュート…能力と対価。か…はあ…。


「あ、その前に昼食を食べましょう。お腹が空きました」


一宮のその一言に反応した統香は、ストレス発散の意を込めて提案する。


「じゃあ寿司取ろうぜ!元春菊の金で!」


「は?!」


案の定驚く元春菊に、統香は絵描狩り顔負けの下卑た笑みを浮かべながら彼の肩に手を置いた。


「いやいや元春菊、どうせ出前の美味しい店知ってんでしょ?

いや~ごちんなるわ~」


「ご馳走様です。元春菊様」


便乗してきた一宮にも頼まれ、見た目同様器も広い男、元春菊はこの日一番の大きなため息を吐きながら頭を掻き毟った。

悩み、悩んで、悩んだ果てに、やむなく了承した。


「お前らなぁ…はあ…わかったよクソ。

経費で落ちっかな…」

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