18 第十八話
「メリア……カレン……」
久々に出会った二人は何の反応も示さない。
「……いや、こうなるのはわかっていた。待ってろ、今助けてやるからな!」
「アルバート、手はあるのか?」
「レインを助けた時と同じように回復魔法をぶち込む。そのためにまずは近づかないといけないが……うぉっっと」
本格的に俺たちを敵と認識したのかメリアは魔法攻撃を激化させた。
「なら俺が気を引く。その隙に頼んだぞ」
そう言ってレインは飛び出していった。
「メリア! こっちだ!」
メリアの魔法攻撃を避けながらレインが彼女を誘導している。
今ならいける……!
「待て、アルバート!」
「ぐっ!?」
ディアスがそう叫んだと当時に俺は動きを止めた。
その瞬間、目の前に炎の壁が現れた。
「どうやら最初から貴様を動かす気は無いらしいな」
「クソッ……」
どうすれば良い。
レインがメリアの気を引いていてもなお彼女は俺の方に魔法攻撃を行う余裕がある。
恐らくメリアの魔法力はこの世界では凄まじいものになっている。
まともに受けて無事でいられる保証は無い。
「くっ……想定外だな、アルバート」
レインは俺が動けずにいることに気付いたのか戻って来たようだ。
「ああ、思ったよりも難しそうだ。この世界のシステムだと魔力切れも狙えないしな」
「なら余が行こう」
「何か策でもあるのか?」
「確かにあの者の使う魔法は相当な威力を持っている。だが、所詮は下級魔法だ」
ディアスは不敵な笑みを浮かべながら前へ出る。
「おい、無防備に魔法を受けるつもりか!?」
「案ずるな。まあ見ていろ」
俺たちと時と同じように、メリアはディアスに向かって攻撃を行った。
放たれた巨大な火球はディアスに命中し……消えた。
「……何だ、何をしたんだ?」
「貴様と契約したことで手に入れたスキル『下級魔法無効』を使ったまでだ」
「いつの間にそんなものを……」
「貴様の持つ魔力のおかげだ。誇るがよい」
どういう理屈かはわからないが、これでメリアの魔法をどうにかする手段は出来た。
後はこのままディアスを盾にしながら前へ進めば二人に近づけるはず。
「アルバートよ、もっと近づけ。いくら魔法を無効化できると言えど、それはあくまで余に接触した場合のみだ」
「それはわかってるが……」
ここに来てディアスの恰好が仇になった。
今ディアスは出会った時と同じような露出の多い装備となっている。
一度ディアスを女の子を認識してしまった後に、その体に密着するのは気が引けた。
「待て、メリアの様子がおかしい」
レインのその言葉に現実に俺の心は引き戻された。
「……攻撃を止めた?」
先程まで飛んできていたはずの攻撃がいつの間にか止んでいた。
攻撃をしても意味が無いと気づいたのか?
「ぁっぐぁっ……」
「ディアス……? おい、どうした!?」
すると今度は突然ディアスが苦しみ始めた。
「大丈夫……だ……。この程度の魔法……」
「魔法……?」
「まさか、カレンか……!」
レインはそう言ってカレンの方を見た。俺も続いて彼女の方を見る。
レインの言った通り、カレンは魔法を発動させていた。
「対魔魔法か……。確かにカレンは使えたな」
「だがそれは魔力消費が……いや、この世界では魔力消費は関係無いようなものだったな」
カレンは僧侶であり魔族への特攻魔法を使えた。
だがそれは膨大な魔力を消費するために、普段の冒険でそう簡単に使えるようなものでは無い。
しかしここでは違う。彼女の魔力量も膨大なものになっているんだ。
「不味いな。ディアスにはかなり効果が高いはずだ」
「余の事は……心配いらぬ」
「どう見ても平気じゃないだろ……!」
「……いや、ここは速く進むべきだ」
「……わかった」
レインはこのまま進むことを選んだ。
そうだ。このまま戻ったところで進展は無い。
なら少しでも早く二人に近づき、元に戻す。それが一番いい判断だ。
「もう少しだ。耐えてくれ」
「ふっ、余はこの程度で……音を上げるような魔族では無いわ……!」
無理やりにでも進むことを選んだことに少し驚いているのか二人は動きを止めていた。
しかしその後すぐに攻撃に転じて来た。
「よし、ここまで来れば届く! グランドキュアァァ!!」
二人へ向けて全力で回復魔法を放つ。
次の瞬間、二人はその場に力なく崩れ落ちたのだった。
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