17 第十七話
「アルバート!」
「わかってる!」
レインがこちらへと誘導した魔物を残さず叩き斬っていく。
「ふぅ……流石は魔王城だな。とにかく数が多い」
俺たちは女神様の言葉を信じ、魔王を倒すために魔王城へと赴いている。
地下洞窟の中は薄暗く、魔王の持つ魔力によるものなのか倒しても倒しても魔物がどんどん現れる。
「ああ。このままだとジリ貧になるかもしれん」
「けど、こんなところで足踏みはしてられないよ。二人が魔王の下にいるのは確実なんだ……」
俺たちのパーティメンバーの二人……魔術師のメリアと僧侶のカレンもこの世界に来ている。女神さまはそう言っていた。
どうやらその言葉は正しかったようだが、彼女たちのいる場所が問題だった。
「魔王軍に異常な強さを持つ二人の少女がいる……だったか。状況的には二人である可能性は高いだろうな」
レインが現れた時も同じだったんだ。きっと今回だってそう。
彼女たちもレインと同じように自我を失っているに違いない。
「速く助け出してやらないと……」
「その気持ちはわかる。俺だって二人が心配だ。だが、だからと言って俺たちが必要以上に焦るのはかえって危険だろう。まずは落ち着け」
「あ、ああ……そうだな」
レインにそう言われ、ハっと我に返った。危ない。完全に焦燥と不安に飲み込まれるところだった。
流石はレインだ。こんな時でも冷静に考えて行動できる。
俺一人だったらこのまま特攻していたかもしれない。
「ほう、どうやら精神に働きかける魔法がこの魔王城全体にかかっているようだな」
近くの魔物を狩り終えたディアスは俺たちの元に戻って来るなりそう言った。
「魔法……?」
「今までの貴様ならこんなに短絡的な思考や行動はしないはずだ。だが微かに感じる魔法……それが貴様をそうさせているのだろう」
そうなのか。自分には全くわからなかった。
「魔物だけでは無く魔法まで……一筋縄では行かないということか」
「レインは平気そうだな」
俺がこんな状態になっているにも関わらず、レインは割と平気そうだった。
「俺にもよくわからないんだが、こちらに来てから妙に魔法耐性が高くなっていてな」
「……ステータスの影響か」
レインは元々俺たちの中では魔法耐性が高かった。
それでも並みの冒険者よりも少ない程度ではあったが。
だがその耐性の差が、こちらのシステムでは大きく影響を及ぼすのだろう。
「まあ何だ。何はともあれレインがいてくれて助かるよ」
「それはお互い様だ。俺たちは全員で助け合う。それで今まで生き延びてきたんだ。そのためにも速く二人を助けよう」
「ああ、また四人で……いや、ディアスも一緒に五人で冒険をしよう」
俺たちは魔物を蹴散らしながら、二人の元へ急いだ。
「……何かがいるぞ」
ディアスが何かの気配を察したのか俺たちを止めた。
「何かってのは魔物か?」
「いや、これは人間のそれだな」
「となると……ッ!? 不味い、避けろ!!」
地下洞窟を抜け廊下を進んでいた俺たちに向けて、何かが飛んできた。
「くっ……!?」
レインの声のおかげで間一髪避けられた。
この世界において俺は魔法攻撃への耐性が一応高くなっている。しかし当たらないに越したことは無い。
俺たち全員が避けることに成功したため、飛んできた何かはそのまま通り過ぎ後方で爆発を起こした。
「今のは火属性の魔法攻撃か。それも相当な威力だな」
「……考えたくは無いけど、受け入れないといけないか」
覚悟を決めて前方を見る。
すると予想通り、そこにはレインの時と同じように生気の無い表情をしたメリアとカレンの二人が立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます