第5話 裏取引 ②

 そんなこと聞かれたってわかんねぇよ──────。」


 直前までの会話全てをぶった斬り、その場に一瞬の沈黙が流れる。

 出羽の向こうからそんなことを言われて予想外にバッサリの切り捨てられてしまってからしばしの沈黙を挟んだ後リンは「はぁ─」とため息をつくと呆れ返るように話し始める。


「なんとなくだ。なんとなくそんな気自体はしていたのだが、まぁそのなんだ要するに君が糧なのはもしや───」


「悪いが多分そいつは

[運]とアイツ

 それ以外には何もねぇよ。」


 アギトのやつがすげぇ申し訳なさそうな顔をしてる。さっきまでにかにかと悪びれもなさそうだったが意外にも負けたことを引きずってていたらしい。


「おい───。」


 ドスの効いたパンチのある声がアイの耳に届く。


「どうかしたか?」


「その阿呆に伝えとけ、ちょっと席外しとけって」


 そう言われて仕方なくアギトの方を振り返ると、もうすでにの影も形も残っておらず駆け出していく音のみが耳に届いた。

 ハッとする。アギトにまんまと逃げられてしまった。とっさにオレも追いかけようと立ち上がると、リンが呆れたように


「安心しろ。あいつバカだから多分逃げることよりも走り切ることの方しか頭にねぇだろうから戻ってくるよ」


「んなわけあるかよ」


「はぁ〜。今までのやりとりをあいつとやってきた感想をどうぞ」


 飯と姉のことしか喋ってねぇなあいつ。


「わかった」


「よろしい」


「まぁなんだ。あいつの方はほっぽいといて、いい加減こっちの話も聞いてくれねぇかリンさん」


「あぁ。もちろん構わないのだがなぁ」(しらねぇよでぶった斬った君が言うか)」


 そんなリンの思いも欠片もかけらも察しずにアイは話し始める。


「まずこっちから聞きたいことが山ほどあるんだ。まずはそいつらをどうにかしたい」


「構わん。ウチに分かることならば答えてやる」


「まず。あんたらは何者なんだ?さっきアギトのやつは自分達を[壊し屋]と言っていたが一体?」


 するとリンは宣言通り対して渋る様子もなく語り出す。


「端的に言うとウチらは仮面専門の殺し屋やってんのよ。まぁ、仮面を破壊して回ってっから壊し屋って事で通して行ってはいるがな」


 とりあえず壊し屋の意味はわかった。まて─────え?


「おい?!こんな代物《かめん》が他にもいっぱいあるってのか?!」


 するとリンは少し間を置くと突然と笑い出す。


「はっはっはっはっ!!。そうかまずはそっからなのかおまえは」

「本当に何にも知らないんだな!こりゃ傑作だ構わん聞いてやるよ」


 何かよぉはわからんがどうやらオレは気に入られた様子である。


「まずそいつ。仮面はそれなりの数があるんだよまっ。それでも貴重な品だから一つ何百万って桁で取引されてるがな。ちなみにそいつについてはこっちも今言ったことと[つけると体が異形の姿に変わる]くらいしか解っちゃいねぇから対して答えられないがな」


 どうやらあっちからしてもこいつは結構な謎なものらしい。


「とりあえず仮面についてはそんくらいでいい。多分これが最後だが、まず言っとくとオレは別に何か悪いことや、でかいことを成し遂げたわけでもないのにどうしてこんな懸賞金なんかが掛けられてしまっているだ?わかる事ならなんでもいい!教えてくれ!」


 リンは一息つくとゆっくりと語り出す。


「まず。そいつに関してはまずウチらがなんであんたを殺しにきたのから話さなくちゃならない」


「さっきも言ったがまず仮面。こいつは基本的に表には出されず基本こう言う力を欲しがるようなバカな奴らのところにいくんだ。で、金持ってる奴らのところにはこう言ったのがそれなりの数揃ってるってわけ。ツーワケでそれをどうにかしてぶっ壊したい金のねぇ連中ってのがいるわけよ」


「ほう」


「と、なるとそれの仮面ひとつの値段の3分の1くらいの価格設定で壊してやるよ〜って売り込んで実際に破壊するのがウチらってわけ」


「要するにヤーさん相手に便利屋やってるって事か?あんたら?」


「そう言う事。ツーワケでうちらは要するにそう言ったのと否が応でも仲良しになっちゃってんのよ。」


「イかれてんなぁ。つまりなんだ仲ののよろしい人たちからオレをぶっ殺せと言われたと、、、、、。」


「おぉ〜!話が早いね!大体その考えであってるんだよねぇ〜。おまけに君は現在生け取りで三億円・・・あっ、違う!上がってる今5億だ!すっご。流石にこの金額は見た事ないわぁ〜」


「えぇい!殺しの平均金額なぞ知らんがそんなものに感心するな!」


「そんなこと言ったって通常の100倍だよ!100倍!流石にやばいよこれは!」


 ちぃっ。こいつはよ話を進めんかぁ!


「おっと。すまないすまない。流石に興奮しすぎてしまった。失敬失敬」


「んで?結局オレのその破格の金額設定の理由はなんなんだよ?」


「わからんよ」


「は?」


「悪いが君の金額はそれだけ君のことを「特別な目で見ている人」が設定してるだけなんだよねコレ。」


 怒る気も失せ、オレは静かに「そうか」とだけ呟く。

「悪いがこっちだって早くここから出なきゃ行けないんだ、悪いが切るぞ」


 と電話を切ろうとする。すると電話から


「うわぁ!!!待った!待った!謝るから!まだ話の続きがあるんだよ!」


 嫌だったが。今のオレにとってカケラほどの価値しかないものでも貴重な要素だ。悔しいが、聞くが吉だ。


「話の続きとはなんだ?」


 そうするとモジモジとしたような口調でリンは話し始める


「いやぁじつ言うとさ、うちの弟が君に負けちゃったわけじゃない。て、なるとまぁ仮面わぁ・・・」


「悪いが木っ端微塵に砕け散ってたぞ」


 ウチの浅い希望も仮面と一緒に粉砕してきやがった。


「とまぁそんなわけでこっちとしては大事な商売道具がお釈迦になっちまってんのよ?」


「ん?かけらを集めればそれらしい形にできるんじゃないのか?」


 するとリンはまたため息をつくと「そっかそこも知らないのか」と呟く。

「言っとくと一度でも砕かれた仮面は直すことはできるのよ。でも!そいつを着けてもそこからまた変身したりすごい力を使ったりはできないただのになっちまうのよ。わかった!」


「お、おう。それでオレに何が言いたいんだよ?弁償でもしろってのか?悪いがそっちが仕掛けてきた喧嘩だぜ。もうとうそんな気はないね。」


「アホか。そうじゃないのよ。話の続きだけどあんたさっきどっかに行きたいって言ってたわよね?」


「あぁ。それがどうした?でも、別にあんたには関係ないだろ?」


「ノン!ノン!ノン!そうじゃないわよ!ウチはあんたの腕を買おうって言いたいのよ!」


「はぁ?」


「まずね。あんたこの先なんの山も他にもなく東京まで行けると思ってんの?五億よ!五億!日本中のヤバい奴らがあんたのことを付け狙うに決まってる!それに!こっちだってウチの商売の要の仮面とアギトが現状手元にない上に仕事に失敗したとあった何があるかたまったもんじゃない!そんなだからこっちも結構ギリギリなのよ!」


「で?要するに何が言いたいんだよ?」


「あんたを雇ってやるのよ」


 また変なことを言い出しやがったよコイツ


「まず!あんた東京に行きたいってんでしょう。だからそこまでの護衛をしてあげる。ついでに賞金が切れるまでの間もサポートしてやるよ」


「正気って切れるものなか?」


「アホか。賞金出してから十数年後なんかにそいつの首取ってきてもらったって嬉しくないでしょう。あんたのは・・・・半年かぁ意外と平均的だなぁ」


「半年かぁ」


 おそらくオレに賞金がかかったのはここ数日。どこかで隠れる・・・・。いや。隠れてるのもありだが、どこか遠くに、手元の金は数万ちょっと、口座のはいや、雀の涙か。となると海外逃亡は現実的ではない。かと言って長距離を移動し、どこかで隠れ潜むのも現実的には難しい。となると、、、、あえて攻めて東京に行ってみるのも無謀かもしれんが、他と比べれば不確定要素が多い分不安もあるがこの問題が解決する可能性は大いにある。


「わかった。アンタのその申し出飲むよ。しかし一つ聞きたい」


「なんでそんなにこっちを捕まえたがる?まさか雇ったとこにに売るつもりじゃ。ないだろうな?」


 正直それが一番ありえる、正直に答えるとは思えんが一様探りくらいわ、、、。


「不都合5%。好奇心95%」


 随分と反応に困る短絡的な回答


「純粋にこっちだってアンタみたいなどんぐりレベルで量産されてる人間がどうしてこんなになってんのかってのは単純に面白そうだし、それに!こっちもこっちでアンタが他のに殺されたりしたら色々と不都合なのよ!」


 まぁ、嘘はついていないようだし、利用価値はかなり高いとみる。この提案乗るのはアリだな。


「のった。」


「本当か?!」


「ただし!」


「雇うのはこっちだ!」


「え?」


「アンタらを400万で雇うよ」


「は?」


「そんな金なんぞお前みたいなパンピーが用意できるはずがないって顔だな?」


 うぐぅ、なんかコイツに見透かされたような発言されるのなんかやだ。

「出せる理由は二つ!

 一つ別に就活って時期でもないのに大学生のオレがまぁさっきのでボロボロだか真っ黒なスーツを着ている

 二つ長期休暇でもないのに朝イチの始発で地元へ

 なんとなく読めたかよ?」


「なるほど、そう言う事」


「何よりアンタの出した条件なら、アンタがこっちに対して上に立っていつでもオレのこと売れるように手元に置いとけんだろ?」


 ポットでの思いつき作戦は素人目から見てもどうやらガタガタの手抜き工事だったようだ。


「まぁこっちもアギト居ないしで立場弱いしなぁ・・・・・・はぁ。

 いいよ。アンタ下院アイ」


「おぉ。よろしくなさ逆威リン」


 数十分後

 玄関先でしっかりと走ってきたのか息切れを起こしながら膝に手をついたアギトにリンとの会話の内容を話す。


「ぜぇ、ぜぇ、ねぇ、ちゃぁ、、んがあ」


「息整えろ」


 アギトは軽く深呼吸を何故かラジオ体操の動きをしながら整えると頭を軽くかきながら


「まぁ、わしは構わんよ。雇われんのは慣れてっしな」


「そうかよ。意外と素直と言うかなんと言うか」


「ワシもここからどうしょうも無いしなぁ。運の尽きって事でついてくぜ。」


「まぁいいか。頼むぜボディーガード!」


 こうして数奇な運命を辿る3人が出会った。これからの旅をまだ誰も知らない

「しかしダンナ。東京までのどっかで姉ちゃんと合流するのはわかったが、東京までの道。ルートはどんなんで行くつもりで?」


「うーん。とりあえずここからならだな。」











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