第10話

「ちなみに、トゥア、アンタは何者なんだ?」

俺はコーヒーを口にしながら、彼女に問いかけた。

「ヘックス、貴方には段階ってものがないのかしら?」

トゥアは眉間にしわを寄せながら言った。

「たしかに段階ってものがないかもしれんが、この仕事に関係あるのならば、なりふり構ってはいられないからな」

俺はたばこを手にし、トゥアに言った。

「いさぎいいのかわからないわね」

彼女はあきらめたように言った。

「こういうところがヘックスのいいところなんだよ」

ウィンストンが研究材料を持ちながら言った。

「彼は?」

トゥアはウィンストンを見ていった。

「僕の名前はウィンストン。よろしくね」

彼はトゥアに手を差し出し、にこやかに言った。

「僕はオルガニを研究してますよ。 トゥアさんは?」

ウィンストンはいつも女性に対しては紳士的な態度で接している。

「私は貴方と同じといった方がいいかしら」

トゥアははにかみながら言った。

「まさか、オルガニを研究しているのかい?」

「まぁ、そういったほうがいいかしら」

「なんということだ」

ウィンストンは研究材料を置き叫んだ。

「うれしいな。研究をしている人に出会えるなんて」

ウィンストンはトゥアの手をつかむと、目を輝かせながら言った。

「しかも一緒に働けるなんて夢みたいだ」

彼はトゥアの手を離すと部屋の奥へと消えた。

俺とトゥアはぽかんとしながら彼をみていた。

「いつもあんな感じなの?」

「いや今日は特別かもしれな」

俺はたばこに火をつけながら、部屋の奥の方を見ていた。

「あいつはオルガニの研究しか興味がないからな。話しが合いそうで、嬉しいんじゃないのか」

俺は煙を口から吐き出す。

「で、アンタはさっき、ウィンストンに同じような人間だといったな。 どういう意味だ?」

トゥアに俺は視線を向けると彼女は目を一度閉じ息を短く吐くと口を開いた。

「別に意味はそのまま。 研究者といったらいいのかしら」

「オルガニの?」

「そう。 私はオルガニの研究者の一人として、国立のオルガニの機関にいた」

俺はたばこを落としそうになった。

「じゃあ、アンタは政府の人間なのか?」

「だったたが正しいわ」

トゥアはそこは間違えないでという形で俺をにらむ。

よほど何かがあったのだろうか。

俺は気にせず彼女に質問した。

「じゃあ、やめたのか?」

彼女に問いかけると彼女は首を振った。

「やめたんじゃない。 逃げ出した方がただしいかもね」

その横顔が、何かを訴えていたが、俺はあえて触れないことにした。

「なるほどね。まぁ、事情はなんとなく分かったよ。で、ここからが仕事の話だ」

俺はコーヒーを口に入れ、トゥアに言った。

彼女はさらに引き締まった顔をした。

「アンタがあのオルガニのことを知っているみたいだが、何なんだ?」

俺が彼女に問いかけるとトゥアは言った。

「いまは簡単に言えない」

「そうかい。じゃあ、アンタはわけもわからないものを追っていたのか?」

「いえ、行動は分かってる」

トゥアはまっすぐ遠くを強く見据えながら言った。

その目は完全に何かを逃がさない狩人のような目つきをしていた。

「ということは行動範囲、などがわかるのか?」

「街に出ている時点で、範囲はどこまで拡大してるのかは予測はつかない。ただ行動予測と生態は分かる」

どこかすべてを知っていますと言わんばかりの口調だ。

俺はどこかそこが引っ掛かるものの、あえて気にしないふりをする。

「ならアンタに、予測を付けてもらって倒しに行くとするか」

俺はたばこを口にくわえ、煙を吸った。

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